第六十六話 王都へ戻る
浩平は古代の工房を後にした
振り返ると
遺跡は静かに佇んでいる
何も変わっていない
まるで
最初から誰もいなかったかのようだった
「また来ます」
小さく頭を下げ
山道を歩き始める
――――
王都へ戻る頃には
空は夕焼けに染まり始めていた
北門の門番が笑顔で手を振る
「おかえり」
「何事もなかったか」
「はい」
「少し長旅になりました」
門番は安心したように頷く
「無事なら何よりだ」
浩平も笑顔で頭を下げた
――――
職人ギルドへ顔を出すと
中は慌ただしかった
職人たちが大きな地図を囲み
何かを話し合っている
「どうしたんですか」
浩平が尋ねると
グラントが振り返った
「ちょうど良かった」
「浩平君」
「頼みたいことがある」
その時
工具箱が静かに光る
【依頼発生】
依頼内容
山間の村への街道を復旧してください
依頼人
王都職人ギルド
報酬
金貨三枚
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
浩平は迷わず頷いた
――――
グラントが地図を広げる
「先日の大雨で山肌が崩れた」
「街道が完全に塞がれてしまった」
「村へ物資が届かん」
エリオットも口を開く
「衛兵だけでは人手が足りません」
「王都からも応援を出します」
浩平は地図を見つめる
一本道ではない
崩落は数か所に及んでいた
「これは」
「皆さんの力を借りないと終わりませんね」
グラントが笑う
「最初からそのつもりだ」
――――
翌朝
王都の門には多くの人が集まっていた
職人
衛兵
商人
荷馬車の御者
以前助けた家具職人もいる
パン屋の主人が
大きな籠を抱えて笑う
「腹が減ったら食え」
商人エドガーは親指を立てる
「荷物運びは任せろ」
門番も笑顔で送り出す
「帰りを待ってるぞ」
浩平は周囲を見渡した
これほど多くの人が
自分と一緒に歩いてくれる
そんな日が来るとは思ってもいなかった
「皆さん」
浩平は深く頭を下げる
「よろしくお願いします」
力強い返事が響く
「おう!」
王都を出発した一行は
朝日に照らされながら
山間の村へ向けて歩き始めた




