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異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~  作者: 椿綺
第五章 王都エルディア
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第五十九話 受け継がれる想い

翌朝


浩平は北門の外へ向かっていた


目的は一つ


あの石碑だった


工具箱は何も示さない


それでも


足は自然とあの場所へ向かっていた


――――


石碑の前へ立つ


昨日と変わらない景色


風が草を揺らしている


「来ましたよ」


浩平は石碑へ向かって声を掛ける


返事はない


「今日は居ないのか」


そう呟いた時だった


カタ……


石碑が小さく震えた


工具箱が淡く光る


【記録を確認しています】


「記録……?」


浩平が石碑へ手を添える


その瞬間


頭の中へ景色が流れ込んできた


――――


遠い昔


同じ場所に立つ一人の男


肩には


浩平とよく似た工具箱が掛けられていた


男は村人たちと笑い合い


壊れた橋を直し


家を建て


畑を耕している


剣を振る姿はない


ただ


人々の暮らしを支えていた


景色は次々と変わる


やがて男は年老い


工具箱へ静かに手を添えた


「次は頼んだぞ」


その言葉を最後に


景色は白く消えていった


――――


浩平はゆっくり目を開ける


「今のは……」


工具箱は静かに光を失う


【記録の閲覧を終了しました】


表示はそれだけだった


「昔にも」


「便利屋がいたのか」


浩平は石碑を見つめる


答える者はいない


しかし


胸の奥には


不思議な温もりが残っていた


――――


「見えたようじゃな」


振り返ると


老人が穏やかに微笑んでいた


「あなたは知っていたんですね」


老人はゆっくり頷く


「便利屋とは」


「道具を直す者ではない」


「暮らしを守る者じゃ」


浩平は静かにその言葉を聞いていた


「お主も」


「少しずつその意味を知り始めたようじゃな」


浩平は小さく笑う


「まだまだですよ」


「直せないものもたくさんあります」


老人は優しく頷いた


「だからこそ」


「人は支え合うのじゃ」


そう言うと


老人は空を見上げる


「時は近い」


その一言を残し


風とともに姿を消した


――――


工具箱が静かに光る


【第三段階まで あと一つ】


浩平は表示を見つめ


小さく息を吐いた


「あと一つか」


その先に何が待っているのか


まだ誰にも分からなかった


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