第五十一話 意味深な言葉
朝
王都の街は今日も活気に満ちていた
市場では商人たちの威勢のいい声が響き
露店には新鮮な野菜や果物が並んでいる
浩平は工具箱を肩に掛け
ゆっくりと大通りを歩いていた
「今日も忙しくなりそうだな」
その時だった
「便利屋さん!」
元気な声が聞こえる
振り向くと
以前、荷馬車を修理した商人エドガーが手を振っていた
「この前は助かったよ!」
「荷物も無事に納品できた」
「それは良かったです」
エドガーは笑顔で頷く
「おかげで仕事も増えた」
「今度、何かあったらまた頼むよ」
「ありがとうございます」
浩平は笑顔で頭を下げた
王都でも少しずつ
「便利屋」の名が広がり始めていた
――――
昼過ぎ
浩平は職人ギルドへ顔を出す
「こんにちは」
受付の女性が笑顔で迎える
「こんにちは、浩平さん」
「最近は評判ですよ」
「そうなんですか?」
「『何でも相談できる便利屋がいる』って」
浩平は照れくさそうに笑った
「そんな大したことは……」
その時
グラントが工房から姿を見せる
「浩平君」
「今日は依頼ではない」
「少し休んでいきなさい」
「ありがとうございます」
二人は工房の片隅で
温かいお茶を飲みながら話をする
何気ない時間だった
――――
夕方
職人ギルドを出た浩平は
王都の外れまで歩いてきていた
夕日に照らされた街並みを眺めながら
静かに息を吐く
「少し慣れてきたかな」
その時だった
「便利屋よ」
聞き覚えのある声
振り返ると
ローブ姿の老人が立っていた
「また会いましたね」
浩平は笑顔で頭を下げる
老人は優しく微笑む
「王都には慣れたか?」
「はい」
「皆さんのおかげです」
老人は満足そうに頷く
「それでよい」
少しの沈黙
やがて老人は空を見上げ
静かに口を開いた
「お主」
「最近、懐かしい夢を見なんだか?」
浩平は驚いた
「どうして、それを……」
老人は答えない
ただ穏やかに笑っている
「その夢は」
「忘れるでない」
「近いうちに必要になる」
浩平は首を傾げる
「どういう意味ですか?」
老人は背を向け
ゆっくり歩き始めた
「もうすぐじゃ」
「お主の本当の願いが」
その言葉だけ残し
夕暮れの街へ姿を消していく
浩平はしばらくその場に立ち尽くしていた
「本当の願い……」
工具箱へ目を向ける
何も表示されていない
それでも
胸の奥が少しだけざわついていた
王都の空には
ゆっくりと夜の帳が下り始めていた




