第五十話 懐かしい夢
地下水路から戻ると
王都の中央広場には
再び勢いよく水が噴き上がっていた
「直った!」
「噴水だ!」
子どもたちが歓声を上げ
広場には笑顔が戻る
エリオットは噴水を見上げ
深く息を吐いた
「これで王都の日常も元通りです」
グラントも笑顔で頷く
「ありがとう、浩平君」
浩平は照れくさそうに笑う
「皆さんが手伝ってくれたおかげです」
――――
その時
工具箱が静かに光る
【依頼完了】
報酬を受け取りました
報酬
金貨一枚
『水路点検具』を追加しました
浩平は表示を確認し
静かに工具箱を閉じた
「また増えたな」
苦笑しながら肩へ掛ける
――――
その夜
宿へ戻った浩平は
夕食を済ませると
早めに床へ入った
王都へ来てから
慌ただしい日々が続いている
「今日はよく眠れそうだ」
目を閉じる
――――
気が付くと
懐かしい景色が広がっていた
見慣れた家
聞き慣れたテレビの音
食卓には
湯気の立つ料理が並んでいる
「浩平」
優しい声が聞こえた
「ご飯できたよ」
思わず振り返る
しかし
そこには誰もいない
景色だけが
ゆっくりと揺れている
「……」
浩平は何かを思い出そうとする
その瞬間
景色は白い光に包まれた
――――
「……夢か」
浩平は静かに目を開けた
窓の外では
朝日が昇り始めている
しばらく天井を見つめ
小さく息を吐く
「久しぶりに見たな……」
誰に言うでもなく
そう呟いた
ベッドの脇には
工具箱が静かに置かれている
その蓋が
ほんの一瞬だけ淡く光った
【条件を満たしました】
表示はそれだけだった
浩平は目を瞬かせる
「条件……?」
もう一度見ようとするが
表示は消えていた
「見間違いかな」
工具箱を閉じ
いつものように肩へ掛ける
王都の朝は
今日も静かに始まる
浩平はまだ知らない
その小さな表示が
これからの運命を大きく変えていくことを
ここまで『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』をお読みいただき、本当にありがとうございます。
気が付けば、今回で第五十話となりました。
ここまで続けてこられたのも、読んでくださる皆さまのおかげです。
王都へ舞台を移し、便利屋としての仕事も少しずつ大きくなってきましたが、浩平の「困っている人を助けたい」という気持ちはこれからも変わりません。
そして今回、物語の中で少しだけ新たな動きがありました。
この小さな変化が、これから先の物語へどのようにつながっていくのか、楽しみに見守っていただけると嬉しいです。
これからも『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』をよろしくお願いいたします。




