第四十九話 水の通り道
地下水路の奥
大量の木の枝や土砂が
水路を塞いでいた
その周りでは
数匹のウォーターモールが身を寄せ合っている
どの個体も
浩平たちを警戒していた
衛兵が剣を抜く
「排除しますか?」
浩平は静かに首を横へ振った
「待ってください」
「この子たちは」
「ここを守っているわけじゃありません」
「住む場所にしていただけです」
衛兵は少し驚いた表情を浮かべる
「ですが、このままでは……」
「ええ」
「だから、追い払います」
――――
浩平は工具箱を開いた
中には
折りたたみ式スコップ
木製ハンマー
丈夫なロープ
見慣れた道具が並んでいる
「まずは通り道を作りましょう」
浩平は土砂を崩し始める
衛兵たちも加わり
木の枝を運び出す
グラントとエリオットも
黙々と手伝っていた
しばらくすると
細い水の流れが生まれる
チョロチョロ……
「流れた」
浩平は静かに笑う
「あと少しです」
――――
その時だった
一匹のウォーターモールが
土砂の奥へ駆け込む
「まだ何かあるのか?」
エリオットが松明を向ける
そこには
小さな子どものウォーターモールが
身を寄せ合っていた
「子ども……」
衛兵たちも言葉を失う
浩平はゆっくりしゃがみ込んだ
「だから逃げなかったんですね」
親は
子どもを守るために
ここへ住み着いていたのだ
浩平は少し考え
工具箱からロープを取り出した
水路の奥に残っていた木の枝をどかし
別の流れへ続く道を作っていく
「向こうなら」
「人も来ません」
「安心して暮らせます」
親のウォーターモールは
浩平をじっと見つめていた
やがて
子どもたちを連れ
新しくできた水路へ歩いていく
最後に一度だけ振り返ると
静かに暗闇の中へ消えていった
――――
「……行きましたね」
エリオットが安堵の息をつく
浩平は頷いた
「これで心配ありません」
再び作業を始める
残っていた土砂を取り除くと
勢いよく水が流れ始めた
ゴォォッ――
地下水路いっぱいに
水の音が響く
「成功だ!」
グラントが笑顔を見せる
その直後
遠くから
勢いよく噴き上がる水の音が聞こえた
「広場の噴水だ!」
エリオットが嬉しそうに声を上げる
王都の日常が
再び動き始めた
浩平は工具箱を静かに閉じる
「良かった」
その一言だけを残し
地下水路を後にするのだった




