第四十八話 地下水路
浩平は石造りの階段をゆっくりと下りていく
地下水路はひんやりとしていて
湿った空気が漂っていた
後ろには
エリオットとグラント
さらに護衛として王城の衛兵が二人続く
「足元に気を付けてください」
浩平の声が静かに響く
松明の明かりだけが
暗い通路を照らしていた
――――
地下水路は思っていた以上に広かった
水路は王都中へ張り巡らされ
絶えず水が流れている
「これほど大きいとは……」
浩平は思わず周囲を見渡す
エリオットが頷く
「王都が栄えているのも
この水路のおかげです。」
「定期的に点検はしていますが
最近は異常ありませんでした」
浩平は静かに水へ手を入れる
冷たい
しかし
流れが弱い
「やはり」
「どこかで詰まっています」
――――
工具箱を開く
中には
点検用ランタン
探査棒
小型ハンマー
見慣れない工具が並んでいた
浩平は探査棒を水路へ入れる
ゆっくり進みながら
水の流れを確かめていく
しばらく歩いたその時だった
コツ……
コツ……
暗闇の奥から
何かを叩くような音が聞こえた
衛兵たちが剣へ手を掛ける
「来ます」
浩平は小さく呟いた
次の瞬間
黒い影が水の中から飛び出す
「魔物!」
衛兵が叫ぶ
現れたのは
犬ほどの大きさの魔物だった
全身は泥に覆われ
鋭い前足で飛び掛かってくる
「ウォーターモールか!」
エリオットが声を上げる
浩平は一歩前へ出た
魔物の動きを静かに見つめる
飛び掛かる瞬間
ほんの少しだけ体をずらす
魔物は勢いのまま
石壁へ激突した
その隙に
浩平は首の後ろを軽く叩く
ドサッ
魔物は気を失い
その場へ倒れ込んだ
衛兵たちは目を見開く
「今の……」
「倒した?」
浩平は倒れた魔物を見下ろす
「気絶しているだけです」
「縄はありますか?」
衛兵は慌てて縄を差し出す
浩平は手際よく魔物を縛った
「命まで奪う必要はありません」
「原因を調べましょう」
――――
さらに奥へ進む
すると
水路いっぱいに木の枝や土砂が詰まり
水の流れを塞いでいた
その周囲には
同じ魔物の足跡が残っている
グラントが周囲を見回す
「巣……か」
浩平は静かに頷いた
「この子たちは」
「ここを住みかにしていたようです」
誰も言葉を発さない
ただ魔物を倒せば終わりではない
そんな空気が
地下水路を包んでいた
浩平は工具箱へ手を添える
「まずは」
「水が流れるようにしましょう」
地下水路の奥には
まだ暗闇が続いていた




