第四十三話 職人の誇り
王都へ来て四日
浩平は職人ギルドを訪れていた
「おはようございます」
受付の女性が笑顔で迎える
「おはようございます、浩平さん」
「ギルド長がお待ちですよ」
浩平は軽く頭を下げ
工房の奥へ向かった
――――
「来てくれたか」
グラントは少し困った表情をしていた
「実は修理の依頼ではない」
「少し厄介な相談だ」
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 職人を助けてください
依頼人 職人ギルド
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
浩平は頷いた
「何があったんですか?」
――――
案内された工房では
若い家具職人が頭を抱えていた
工房の中央には
大きな木製の食卓
しかし
天板には一本の大きな亀裂が入っている
「納品は明日なんです……」
青年は肩を落とす
「乾燥が足りなかったのか」
「最後の仕上げで割れてしまって」
「作り直す時間もありません」
グラントが浩平を見る
「修理できるだろうか」
浩平は黙って机を調べる
木目を確認し
裏側も見る
そして小さく頷いた
「直せます」
青年が顔を上げた
「本当ですか!」
「ただ」
浩平は微笑む
「私一人では直しません」
「え?」
「これはあなたの作品です」
「最後まで、一緒に仕上げましょう」
青年は驚いたまま頷いた
「はい!」
――――
工具箱を開く
木工用クランプ
細工のみ
接着剤
見慣れた道具が並ぶ
浩平は一つひとつ説明しながら作業を始める。
「ここは力を入れすぎない」
「木は生きています」
「少しだけ余裕を持たせましょう」
青年は真剣な表情で頷く
「はい!」
作業は夕方まで続いた
最後に
浩平が静かにクランプを外す
亀裂は
ほとんど分からなくなっていた
青年は目を見開く
「直った……」
浩平は首を横に振る
「違います」
「一緒に直したんです」
青年は机へ手を添え
深く頭を下げた
「ありがとうございました」
――――
その様子を見ていたグラントが笑う
「やはり君は」
「物だけじゃない」
「人まで元気にしてしまうんだな」
浩平は少し照れ笑いを浮かべる
「そんな大したことじゃありません」
「困っている人がいただけです」
――――
工具箱が静かに光る
【依頼完了】
報酬を受け取りました
報酬
銀貨十二枚
『木工用細工のみ』を追加しました
浩平は工具箱を閉じる
その時
工房の扉が勢いよく開いた
「ギルド長!」
一人の職人が息を切らして駆け込んでくる
「大変です!」
「王城から至急の依頼が入りました!」
工房の空気が一変する
グラントは浩平へ視線を向けた
「浩平君」
「一緒に来てくれないか」
「君の意見も聞いてみたい」
浩平は静かに頷く
「分かりました」
工具箱を肩に掛け
グラントの後を歩き始める
王都で初めての
大きな依頼が
静かに幕を開けようとしていた




