第四十二話 止まった時間
翌朝
浩平は宿で朝食を済ませると
王都の大通りを歩いていた
「やっぱり王都は広いな」
昨日修理した荷馬車は
もう跡形もなく走り去っている
いつもの日常が戻っていた
その時だった
「便利屋さん」
後ろから声が掛かる
振り向くと
昨日、広場で見かけた男性が立っていた
「初めまして」
「私は王都職人ギルドのギルド長、グラントと申します」
浩平は軽く頭を下げる
「相沢浩平です」
「昨日の仕事を見させてもらいました」
「少し、お時間をいただけますか?」
――――
職人ギルドは
王都でも有数の大きな建物だった
鍛冶師
大工
石工
時計職人
様々な職人が忙しそうに働いている
「すごい……」
浩平は思わず見回した
「ここが職人ギルドです」
グラントは笑う
「修理が得意だと聞きました」
「一つ、お願いがあります」
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 懐中時計を修理してください
依頼人 職人ギルド
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
――――
グラントが差し出したのは
古びた銀色の懐中時計だった
「これは?」
「先代ギルド長の形見です」
「王都一番の時計職人でも直せませんでした」
浩平は時計を受け取る
手に持った瞬間
どこか違和感を覚えた
「壊れている……?」
工具箱を開く
精密ドライバー
ピンセット
ルーペ
慎重に分解していく
歯車は壊れていない
ゼンマイも問題ない
「原因は……これか」
小さな部品が
ほんのわずかに曲がっていた
「落とした衝撃ですね」
浩平は工具で丁寧に修正する
組み直し
静かにゼンマイを巻く
カチ……
カチ……
静かな音が部屋へ響いた
「動いた!」
周囲の職人たちが思わず立ち上がる
「信じられん……」
時計職人の一人が目を丸くした
「そこが原因だったのか」
浩平は時計をグラントへ返す
「大切になさってください」
グラントは時計を見つめ
静かに微笑んだ
「ありがとうございます」
「これで、また時間が動き出します」
――――
工具箱が静かに光る
【依頼完了】
報酬を受け取りました
報酬
銀貨十五枚
新たな工具を追加しました
『精密測定器』
浩平は工具箱の中を覗き込む
「精密測定器?」
初めて見る工具だった
その時
グラントが浩平へ一枚の木札を差し出す
「これは?」
「職人ギルド特別入館証です」
「困ったことがあれば、いつでも来てください」
浩平は少し驚いたあと
笑顔で受け取った
「ありがとうございます」
グラントは深く頷く
「こちらこそ」
「王都にも、あなたのような便利屋が必要です」
浩平は木札を工具箱へしまう
王都での新たな縁が
また一つ生まれたのだった




