第四話 村の命綱
翌朝
浩平は宿を出ると大きく伸びをした
昨日まで見知らぬ場所だった村も
少しだけ慣れてきた気がする
「便利屋さん!」
後ろから声が飛んできた
振り向くと
昨日会った老人が手を振っている
「昨日話した井戸なんだが」
「見せてもらえますか」
老人は嬉しそうに頷いた
「助かるよ」
――――
井戸の前には何人もの村人が集まっていた
桶を下ろしても
汲み上げられる水はほんの少し
「最近ずっとこんな調子でね」
「料理も洗濯も大変なんだ」
困った顔が並ぶ
浩平は井戸を覗き込んだ
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 井戸の修理
依頼人 グラン村長
報酬 銀貨五枚
受注しますか?
YES/YES
「だからYESしかないんだな」
苦笑しながら触れる
頭の中へ知識が流れ込んできた
井戸の構造
滑車の仕組み
地下水の流れ
そして
工具箱を開いた浩平は思わず手を止めた
「……増えてる」
昨日まで無かった工具が並んでいる
長い柄の付いたレンチ
見たこともない形のパイプ工具
不思議なのは
初めて見るのに使い方が分かることだった
「昨日の仕事のせいか……?」
確信はない
だが考えている時間もない
浩平は井戸の周りを調べ始めた
ほどなく原因は見つかった
「井戸じゃない」
地面を指差す
「地下の配管が詰まっています」
村人たちは顔を見合わせた
「そんなことまで分かるのか?」
「たぶん」
浩平は笑った
「やってみます」
――――
地面を掘る
古い木の管が土に押され
一部が潰れていた
「これだ」
工具箱から新しい工具を取り出す
まるで昔から使っていたように手になじむ
詰まりを取り除き
傷んだ部分を補強する
最後に水を流す
ゴボッ
次の瞬間
勢いよく水が溢れ出した
「出た!」
子どもたちが歓声を上げる
女性たちは顔を見合わせて笑った
村長が深く頭を下げる
「ありがとう」
「これで村のみんなが助かる」
浩平は少し照れくさそうに笑った
「便利屋ですから」
その一言に
村人たちも笑った
――――
夕方
宿へ戻った浩平は
何気なく工具箱を開いた
また一つ
見覚えのない工具が増えていた
今度は細長い金属製の器具
触れた瞬間
頭の中へ言葉が流れる
水道用パイプレンチ
生活設備の修理に使用可能
浩平は工具を見つめたまま呟く
「仕事をすると……増えるのか」
工具箱は何も答えない
静かにそこにあるだけだ
だが
浩平は少しだけ嬉しくなった
仕事を覚えれば
できることも増えていく
それは
元の世界で働いていた頃と
どこか似ている気がした
工具箱を閉じる
その音は
便利屋として一歩前へ進んだ証のように
静かに部屋へ響いた




