第三十九話 王都を望む丘
峠道を越えて二日
街道は緩やかな下り坂になっていた
旅人の数も
これまでとは比べものにならない
商人の馬車
貴族らしき一団
巡礼者
冒険者
誰もが同じ方角を目指して歩いている
「もう近いんですね」
浩平がそう呟くと
隣を歩く老人が笑った
「次の丘を越えれば見えるぞ」
「王都がな」
――――
しばらく歩くと
視界が開けた
浩平は思わず立ち止まる
「あれが……」
丘の向こうには
巨大な城壁
白く輝く町並み
空へ伸びる王城
遠くからでも分かるほど
王国最大の都だった
「すごい……」
その言葉しか出てこない
旅人たちも
足を止めて王都を眺めていた
「何度見ても圧倒されるな」
誰かが呟く
浩平も静かに頷いた
――――
その時だった
工具箱が淡く光る
【目的地が近付きました】
初めて見る表示だった
浩平は静かに蓋へ手を置く
「もう少しだ」
すると
画面がもう一度光る
【次の依頼まであと少しです】
「次の依頼?」
浩平が首を傾げる
工具箱は
それ以上何も表示しなかった
――――
王都を見下ろす丘には
一軒の茶屋があった
旅人たちはそこで休憩を取る
浩平も腰を下ろし
温かいお茶を受け取る
「はい」
店の老婆が微笑む
「王都へ行く人にはサービスだよ」
「ありがとうございます」
一口飲む
どこか懐かしい味がした
「そういえば」
老婆が浩平を見る
「最近、王都では
便利屋を探しているって話を聞いたよ」
「便利屋ですか?」
「ああ」
「何でも直せる変わった便利屋を
探しているらしい」
浩平は苦笑する
「私じゃないと思いますよ」
老婆は意味ありげに笑った
「どうだろうね」
――――
夕暮れ
丘の上から見える王都は
夕日に照らされ
黄金色に輝いていた
浩平は工具箱を肩に掛ける
「行こう」
王都まで
あと一日
新たな出会いも
新たな依頼も
すべては
あの城壁の向こうで待っている
浩平はゆっくりと
王都への坂道を歩き始めた




