第三十八話 道をつなぐ
峠道には
まだ緊張した空気が残っていた
落石は止まったものの
街道は大きな岩で塞がれている
「これじゃ馬車は通れないな」
旅人の一人が肩を落とす
浩平は岩を見渡した
崖はもう落ち着いている
危険はない
「通れるようにしましょう」
その瞬間
【依頼更新】
依頼内容 峠道を安全に通行できるよう復旧してください
依頼人 街道を行く人々
報酬 銀貨九十枚
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
――――
浩平は工具箱を開いた
中には
石工用ハンマー
大型くさび
鉄製バールが並んでいる
「運べる大きさまで割ります」
旅人たちは顔を見合わせた
「この岩を?」
「全部は無理です」
「でも」
「通れる道は作れます」
浩平は岩の表面へ手を当てた
しばらく観察し
一本の線を指でなぞる
「ここです」
大型くさびを打ち込む
コン……
コン……
乾いた音が山へ響く
最後に
ハンマーを振り下ろした
ガンッ!
鈍い音とともに
巨大な岩へ一本の亀裂が走る
「割れた!」
旅人たちが驚きの声を上げる
浩平は笑う
「岩にも割れやすい場所があります」
「力任せじゃありません」
――――
割れた岩を
旅人たちと力を合わせて運び出す
冒険者は岩を動かし
商人は荷車で運び
御者は道を整える
気付けば
誰もが汗を流していた
「あと少し!」
浩平の声に
最後の岩が道の脇へ転がる
街道が再び姿を現した
「通れるぞ!」
歓声が峠へ響く
馬車が一台
ゆっくりと前へ進む
無事に通り抜けると
自然と拍手が起こった
――――
その様子を
少し離れた木陰から
一人の青年が見つめていた
立派な剣を腰に差し
青い外套を羽織っている
「……なるほど」
青年は小さく笑う
「ただ強いだけじゃない」
「人を動かす力もある」
隣にいた部下が尋ねる
「お知り合いですか?」
青年は首を横に振る
「いや」
「だが」
「王都へ来れば
また会うことになりそうだ」
そう言い残し
二人は静かに馬を走らせた
――――
夕暮れ
浩平は峠の頂上から
遠くを見つめていた
地平線の向こうに
かすかに大きな城壁が見える
「あれが……」
王都
まだ小さくしか見えないその姿に
浩平は少しだけ胸を躍らせた
「もう少しだな」
そう呟き
再び街道を歩き始めた




