第三十三話 再び歩き出す
朝日が街道を照らす
浩平は誰よりも早く橋の前へ立っていた
「あと少しだ」
工具箱を開く
昨日組み上げた骨組みを確認する
緩みはない
歪みもない
「これなら大丈夫」
旅人たちも次々と集まってきた
「何をすればいい?」
商人が声を掛ける
「橋板を並べましょう」
「固定は私がやります」
「分かった!」
昨日と同じように
誰もが自然と動き始める
木材を運ぶ者
橋板を並べる者
道具を手渡す者
橋は少しずつ完成へ近付いていった
――――
昼前
最後の一本を固定する
浩平は橋全体を見渡し
静かに頷いた
「完成です」
その言葉に
大きな歓声が上がる
「やった!」
「これで先へ進める!」
商人が恐る恐る荷馬車を進める
ギシ……
橋はわずかに音を立てる
しかし
揺れることはない
荷馬車はゆっくり向こう岸へ渡り切った
「渡れた!」
拍手が沸き起こる
続いて
旅人たちも次々と橋を渡っていく
誰もが笑顔だった
――――
その時
工具箱が静かに光る
【依頼完了】
報酬を受け取りました
新たな工具を追加しました
浩平が中を覗くと
一本の折りたたみ式測量尺が収まっていた
「測量尺?」
思わず苦笑する
「また仕事の幅が広がるな」
工具箱を閉じる
――――
出発の準備をしていると
昨日の商人が近付いてきた
「便利屋さん」
「王都へ行ったら
この橋の話をさせてもらう」
「困っている人は
王都にもたくさんいる」
浩平は少し照れながら笑う
「それなら」
「また依頼が来るかもしれませんね」
商人も笑った
「きっと来るさ」
――――
街道を歩き始めてしばらくすると
遠くから一台の馬車が近付いてきた
豪華な造りの馬車だった
すれ違う瞬間
窓のカーテンが少しだけ開く
中にいた一人の女性が
静かに浩平へ視線を向けた
ほんの一瞬
それだけだった
馬車はそのまま王都の方角へ走り去っていく
「知り合い……じゃないよな」
浩平は首を傾げる
だが
どこか胸騒ぎがした
その出会いが
王都で再び訪れることを
まだ浩平は知らない
街道には
爽やかな風が吹いていた
浩平は工具箱を肩へ掛け
再び王都への道を歩き始めるのだった




