第三十二話 みんなで造る橋
翌朝
街道には朝日が差し込んでいた
浩平は崩れた橋の前で
静かに川を眺めていた
「まずは橋脚の確認だ」
工具箱を開く
その瞬間
【依頼受注】
橋梁構造を解析します
頭の中へ知識が流れ込む
石橋の構造
荷重の分散
仮設橋の組み方
「そういうことか」
浩平は橋脚を軽く叩く
崩れていたのは橋の中央部分だけ
両岸の橋脚は
十分な強度を保っていた
「これなら造れます」
旅人たちの表情が明るくなる
「本当か!」
浩平は頷いた
「ただし」
「皆さんの力を貸してください」
その一言で
旅人たちは一斉に動き始めた
――――
商人たちは荷馬車から木材を降ろす
冒険者は近くの森へ入り
必要な丸太を切り出す
職人は木材を削り始める
巡礼者たちは食事の準備をする
誰も命令されたわけではない
自分にできることを
自然と始めていた
浩平は工具箱を開く
中には見慣れない工具が並んでいた
大型のこぎり
木組み用の墨つぼ
水平器
「今回は橋大工の仕事だな」
苦笑しながら
一本ずつ木材を加工していく
――――
昼過ぎ
橋の骨組みが姿を現した
「思ったより早いな」
浩平が呟く
商人が笑う
「便利屋さん一人じゃないからな」
その言葉に
浩平も笑顔になる
「そうですね」
「皆さんのおかげです」
――――
夕方
橋はまだ完成していない
だが
川の上には
しっかりとした骨組みが伸びていた
「今日はここまでにしましょう」
浩平がそう言うと
誰も反対しなかった
無理をすれば
事故につながる
それは全員が分かっていた
「明日には渡れますか?」
商人が尋ねる
浩平は橋を見上げ
静かに頷いた
「はい」
「明日にはきっと」
夕日に照らされた橋は
あと少しで完成する
旅人たちは焚き火を囲みながら
完成を楽しみに語り合っていた
浩平もまた
工具箱をそっと閉じ
静かな夜空を見上げるのだった




