第二十九話 灯台の明かり
嵐が過ぎ去って二日
港町レヴァンには
いつもの活気が戻っていた
浩平が宿で朝食を食べていると
女将が声を掛ける
「便利屋さん」
「港の管理人さんが探していたよ」
「港の管理人?」
「急ぎみたいだったよ」
浩平は頷き
そのまま港へ向かった
――――
港の管理人は
灯台の前で腕を組んでいた
「来てくれたか」
「話は聞いています」
「何かあったんですか?」
管理人は灯台を見上げる
「嵐のあとから
明かりが点かなくなった」
「夜の船が港へ入れない」
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 灯台の修理
依頼人 港町レヴァン
報酬 銀貨三十五枚
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
――――
浩平は灯台の中へ入る
螺旋階段を登り
明かりの装置を確認する
工具箱を開く
中には
ガラス切り
精密レンチ
芯を調整する専用工具が並んでいた
「今回は灯台か」
装置を一つずつ点検する
原因はすぐに分かった
嵐で飛んできた砂が
歯車の隙間へ入り込んでいたのだ
「これなら直せます」
砂を取り除き
歯車を磨き
油を差す
最後にゆっくりレバーを動かす
カチッ
次の瞬間
大きなレンズへ光が灯る
「点いた……!」
管理人が思わず声を上げる
ゆっくり回る灯りが
昼間の海を照らしていく
「これで夜も安心だ」
管理人は深く頭を下げた
「ありがとう」
「この灯りは
港のみんなの命なんだ」
浩平は静かに頷いた
「間に合って良かったです」
――――
その時だった
灯台の外から
助けを呼ぶ声が聞こえた
「船が!」
沖を見ると
小さな漁船が波に流されている
嵐の影響で
舵が利かなくなったらしい
「まずい!」
管理人が顔色を変える
浩平は迷わず灯台を飛び出した
工具箱を肩に掛け
岸壁から大きく跳ぶ
「あっ!」
管理人が声を上げる
浩平は軽々と船へ飛び移る
舵を確認し
ロープを一本結ぶ
「引いてください!」
港の漁師たちが一斉にロープを引く
船はゆっくり港へ戻ってきた
「助かった!」
漁師たちが安堵の息をつく
浩平は何事もなかったように船から降りた
「怪我はありませんか?」
その一言に
漁師たちは思わず笑った
「まずそこを聞くのか」
「大丈夫です」
「それなら良かった」
――――
夕暮れ
灯台の明かりが海を照らす
港では船が静かに帰ってくる
管理人はその光景を眺めながら呟いた
「やっぱり……」
「便利屋さんが来てくれて良かった」
浩平は照れくさそうに笑い
灯台をあとにした
港町の夜は
今日も穏やかに更けていく




