第二十五話 港町の噂
港を襲った魔物を倒した翌日
港町レヴァンは
朝から騒がしかった
「あの魔物を一撃だったらしい」
「冒険者でも苦戦してたんだぞ」
「倒したのは便利屋だって」
町のあちこちで
そんな話が聞こえてくる
――――
その頃
浩平は港で木箱を運んでいた
「便利屋さん」
漁師バルトが笑いながら近付いてくる
「昨日は助かった」
「おかげで船も無事だった」
「いえ」
「依頼でしたから」
浩平はいつものように答える
「それより」
「この桟橋
少し傷んでますね」
バルトは思わず笑った
「普通そこを見るか?」
「気になりまして」
浩平は苦笑する
――――
港の隅では
昨日の冒険者たちが話し込んでいた
「見たか?」
「ああ」
「あんな動き見たことがない」
若い冒険者が首を振る
「なのに本人は普通なんだよ」
「化け物か?」
年配の冒険者が小さく笑う
「違う」
「あれは達人だ」
――――
昼過ぎ
一人の男が港へ現れた
胸には冒険者ギルドの紋章
周囲の冒険者たちが姿勢を正す
「ギルドマスター」
男は静かに港を見回す
倒された魔物
傷付いた桟橋
修理をしている浩平
その姿を黙って見つめる
「……あれか」
近くの冒険者が頷く
「はい」
「昨日
魔物を倒した便利屋です」
ギルドマスターは少しだけ目を細めた
「面白い」
「だが」
「今はまだ話し掛けるな」
「どうしてです?」
若い冒険者が尋ねる
「ああいう人間は」
「仕事の最中に邪魔をされるのを嫌う」
「まずは最後まで見届ける」
そう言って
ギルドマスターは港を後にした
――――
夕暮れ
浩平は最後の板を打ち終えた
「これで大丈夫かな」
工具を片付ける
その時
工具箱が静かに光った
【依頼完了】
報酬を受け取りました
浩平は工具箱を閉じる
「さて」
夕日に染まる港を見渡す
船が出港し
子どもたちが笑い
市場には活気が戻っていた
「これなら安心だ」
そう呟き
宿への道を歩き始める
その背中を
誰かが静かに見つめていたことには
最後まで気付かなかった




