第二十四話 港を襲う魔物
港町レヴァンへ来て数日
浩平は市場で買い物をしていた
その時だった
ゴォォォッ!
港の方から大きな悲鳴が響く
「魔物だ!」
「港へ魔物が現れたぞ!」
人々が一斉に逃げ始める
浩平も港へ向かって走った
――――
岸壁には
巨大な魔物が立っていた
四本の脚
灰色の甲羅
岩のような体
漁師たちが必死に応戦している
だが
武器がほとんど通らない
「船を守れ!」
「近付くな!」
怒号が飛び交う
浩平は周囲を見渡した
子どもたちは避難している
漁師も船から離れ始めている
だが
一人だけ
桟橋に取り残された少女がいた
「おじいちゃん!」
倒れた老人のそばで泣いている
「まずい……」
冒険者たちも気付く
だが
魔物が間にいる
誰も近付けない
――――
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 人命を最優先で救助してください
依頼人 港町レヴァン
報酬 ――――
受注しますか?
YES/YES
浩平は迷わず触れた
「助けます」
工具箱を静かに置く
「少しだけ」
そう呟くと
一歩踏み出した
次の瞬間
姿が消えたように見えた
「え……?」
冒険者の一人が目を見開く
浩平はすでに魔物の目の前にいた
魔物が巨大な腕を振り下ろす
浩平は半歩だけ身体をずらす
ドォンッ!
地面が揺れる
そのまま
魔物の懐へ入り込む
右手を軽く突き出した
ゴンッ!
鈍い音が響く
それだけだった
巨大な魔物の動きが止まる
ゆっくりと膝をつき
そのまま倒れ込んだ
ドォォン……
港が静まり返る
「……終わった?」
誰かが呟く
浩平は振り返る
少女を抱き上げ
倒れていた老人も安全な場所まで運ぶ
「怪我はありませんか?」
老人は驚いた顔で頷いた
「あ……ああ」
「良かった」
浩平はほっと息をついた
――――
冒険者たちは
倒れた魔物と浩平を何度も見比べている
「今……何をした?」
「分かりません」
誰一人説明できなかった
浩平は魔物を見下ろす
「急所に衝撃を入れただけなんだけどな」
誰にも聞こえないくらい小さく呟いた
そして
港を見回す
壊れた木箱を起こし
倒れた荷車を直し始める
「船は大丈夫かな」
浩平にとって
魔物を倒すことは終わりではない
依頼が終わるのは
町の人たちが安心して笑えるようになった時だった
潮風が静かに吹き抜ける
その様子を
港の屋根の上から
あの老人が見つめていた
「やはり……」
老人は静かに微笑む
「力を振るうのではなく
人を守るために使うか」
その言葉は
誰にも届くことなく
海風に溶けて消えていった




