第二十三話 破れた漁網
漁船の修理を終えた翌日
浩平は港を歩いていた
朝の港は今日も賑やかだ
漁船が戻り
市場には新鮮な魚が並ぶ
「便利屋さん!」
後ろから声が聞こえた
振り向くと
昨日会った漁師バルトだった
「ちょうど良かった!」
「また依頼ですか?」
「今度は俺じゃない」
バルトは港の隅を指差した
そこには一人の女性が立っていた
大きな漁網を抱え
困ったようにため息をついている
「妻のリーナだ」
「お願いできますか?」
女性は頭を下げた
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 漁網の修繕
依頼人 リーナ
報酬 銀貨八枚
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
浩平は漁網を広げた
思っていた以上に傷んでいる
「これは大変ですね」
「昨日
大きな魚が暴れてしまって」
リーナは苦笑した
浩平は工具箱を開く
中には見慣れない道具が並んでいた
網針
補修糸
網目を測る木製ゲージ
「今回は縫う仕事か」
――――
浩平は破れた部分を一つずつ確認する
力任せに縫うのではない
元の網目と同じ大きさになるよう
丁寧に編み直していく
隣で見ていたリーナが驚く
「そんな縫い方
初めて見ました」
「丈夫になりますよ」
浩平は笑った
昼過ぎ
最後の結び目を締める
「終わりました」
網を広げる
破れた跡はほとんど分からない
リーナは何度も頷いた
「これなら安心して海へ出られます」
――――
翌朝
修理した漁網で
大漁旗が揚がった
「大漁だ!」
港中が歓声に包まれる
バルトが魚を抱えて駆け寄ってきた
「便利屋さん!」
「お礼だ!」
大きな魚を一匹差し出す
「これは報酬とは別だ」
「みんなからの気持ちだよ」
浩平は少し困った顔をした
「そんな悪いですよ」
「遠慮するな!」
港のみんなが笑う
浩平も笑って受け取った
「ありがとうございます」
――――
宿へ戻ると
女将が魚を見て目を丸くした
「こんな立派な魚!」
「今日はごちそうですね」
浩平は照れくさそうに笑う
工具箱が静かに光る
中には新しい道具が増えていた
丈夫な麻糸と
網修理専用の網針
「また一つ
仕事が増えたな」
潮風が窓から吹き込む
港町での生活は
少しずつ浩平の日常になり始めていた




