第二十二話 海へ出られない船
漁師バルトに案内され
浩平は港へ向かった
桟橋には一隻の漁船が止まっている
何人もの漁師が困った顔で船を囲んでいた
「便利屋を連れてきたぞ!」
バルトが声を上げる
漁師たちの視線が浩平へ集まった
「本当に直せるのか?」
「見てみないと分かりません」
浩平は船へ乗り込んだ
――――
舵を動かしてみる
ギギッ……
途中で固くなり
それ以上動かない
「舵そのものじゃないな」
船尾へ回り込む
海へ身を乗り出し
舵板を確認する
その瞬間
【依頼受注】
原因を解析します
頭の中へ知識が流れ込む
船の構造
舵の仕組み
潮による劣化
「そういうことか」
浩平は工具箱を開いた
中には見慣れない工具が並んでいる
防錆用ブラシ
大型レンチ
耐水グリス
「今回は船の仕事だな」
――――
舵の軸には
海藻と貝がびっしり付着していた
「これじゃ動かない」
浩平は丁寧に汚れを落としていく
軸を磨き
油を差す
最後にゆっくり舵を回した
ギ……
スッ
「動いた」
もう一度回す
今度は軽く最後まで動く
「おお!」
漁師たちが歓声を上げた
バルトが勢いよく舵を握る
「これなら海へ出られる!」
「助かった!」
浩平は笑って頷く
「でも」
「帰ってきたら一度しっかり整備してください」
「海は思ったより道具を傷めます」
「分かった!」
バルトは力強く頷いた
――――
翌朝
港には活気が戻っていた
修理した漁船が沖へ向かっていく
「行ってくるぞ!」
甲板から手を振るバルト
浩平も手を振り返す
その時
工具箱が静かに光る
中には一本の新しい工具が増えていた
船底を掃除するための細長いスクレーパーだった
「また仕事が増えそうだな」
浩平は工具箱を閉じる
その様子を
港の倉庫の屋根から
一羽の白いカモメが見つめていた
浩平が見上げると
カモメは大きく羽ばたき
海の向こうへ飛び去っていく
「……歓迎してくれたのかな」
潮風を受けながら
浩平は次の依頼を待つのだった。




