第二十話 新たな道へ
風車の修理から三日
交易都市アルトでは
「便利屋」の名が少しずつ広がっていた
市場を歩けば
「便利屋さん!」
と声を掛けられる
鍛冶屋のガインも
時計職人のベルクも
笑顔で手を振ってくれる
「少しは役に立てたかな」
浩平は照れくさそうに笑った
――――
宿へ戻ると
主人が一通の手紙を差し出した
「商人組合からだ」
封を開く
中には依頼書が入っていた
【依頼発生】
依頼内容 護送依頼
依頼人 商人組合
報酬 銀貨三十枚
受注しますか?
YES/YES
「今度はどこですか」
依頼書を見る
目的地は
港町レヴァン
アルトから五日ほど南にある町だった
「港町か」
少しだけ胸が高鳴る
――――
翌朝
アルトの門には
見送りに来た人たちが集まっていた
「また困ったら頼むぞ!」
「今度は泊まりに来てくれ!」
「気を付けてな!」
浩平は笑顔で手を振る
「また依頼があれば来ます」
その時だった
門の外れに
ローブ姿の老人が立っていた
「便利屋」
浩平が近付く
老人は小さな木片を差し出した
手のひらほどの大きさの木札だった
表には何も書かれていない
裏には
たった一言だけ刻まれていた
**『誠実』**
「これは?」
老人は静かに笑う
「今のお主には
その言葉で十分じゃ」
「また会えるんですか」
老人はゆっくり頷いた
「縁があればの」
そう言い残し
人混みの中へ消えていった
浩平は木札を工具箱へしまう
不思議なことに
今回は何も表示されなかった
「まあいいか」
工具箱を肩へ掛ける
振り返ると
交易都市アルトの人々が
まだ手を振っていた
浩平も大きく手を振り返す
「さて」
少しだけ空を見上げる
「次はどんな依頼だろうな」
その一言を残し
便利屋は
新しい町への街道を歩き始めた
第二章 交易都市アルト 完
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
第二章では、交易都市アルトを舞台に、便利屋として少しずつ信頼を得ていく浩平の姿を描きました。
そして、新たな出会いや、少しずつ明かされる工具箱の謎など、物語も少しずつ動き始めています。
次回からは第三章が始まります。
舞台は新たな町へ。
どんな依頼が待っているのか、ぜひ引き続きお楽しみください。
これからも **『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』** をよろしくお願いいたします。




