第十九話 古びた地図
翌朝
浩平は宿の食堂で朝食を食べていた
「便利屋さん」
宿の主人が一枚の封筒を差し出す
「朝早くに老人が置いていったよ」
「老人?」
見覚えのある字はない
封を開けると
中には古びた地図が一枚入っていた
「地図か」
町の北にある丘へ
赤い印が付いている
裏には短く一文だけ書かれていた
**『困っている者が待っておる』**
「またあの人かな」
浩平は地図を畳み
町の北へ向かった
――――
丘へ着くと
古い風車が建っていた
羽根は途中で止まり
風が吹いても動かない
その下では
一人の老人が困った顔で座り込んでいる
「どうしました?」
老人は顔を上げた
「粉を町へ届ける目印なんじゃ」
「風車が止まってから
旅人が道を間違えるようになってしまっての」
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 風車の修理
依頼人 風車番 トーマス
報酬 銀貨十八枚
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
浩平は風車を見上げた
羽根は無事
軸も折れていない
「中ですね」
工具箱を開く
新しい工具が並んでいた
長柄レンチ
大型プーリー
軸受け調整具
「今回も仕事に合わせて増えるんだな」
――――
風車の中へ入る
歯車を点検する
やがて一本の固定ピンが折れていることに気付いた
「原因はこれです」
新しいピンを作り
軸へ固定する
ゆっくり羽根を押す
ギィ……
風を受け
羽根が回り始める
やがて
ゴォン……ゴォン……
風車は力強く動き出した
「動いた!」
風車番は何度も頭を下げる
「これで旅人も迷わず済む」
浩平は笑って頷いた
「良かったです」
――――
帰ろうとした時
工具箱が静かに光る
中には
小さな真鍮製の歯車が収まっていた
「また素材か」
触れようとすると
歯車は工具箱の奥へ吸い込まれる
【加工素材を収納しました】
「少しずつ増えてるな」
浩平は工具箱を閉じた
丘を下りる途中
昨日の老人が木陰に立っていた
「良い仕事じゃった」
「ありがとうございます」
「じゃが」
老人は静かに微笑む
「その工具箱が選んだ理由を
まだ知らぬようじゃな」
そう言い残し
風とともに姿を消した
「選んだ……?」
浩平は首を傾げる
答えは分からない
だが
工具箱を持つ手だけは
なぜか少し温かかった




