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異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~  作者: 椿綺
第二章 交易都市アルト
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第十八話 不思議な老人

水車の修理を終えた帰り道


浩平は川沿いを歩いていた


「やっと一息つけるな」


そう呟いた時だった


「便利屋」


突然


後ろから声を掛けられた


振り向くと


ローブ姿の老人が立っていた


市場で何度か見かけた人物だった


「やっと話し掛けてくれましたね」


浩平が笑う


老人は少し目を細めた


「お主を見ておった」


「俺をですか?」


「便利屋だからの」


浩平は苦笑する


「便利屋って


そんなに珍しいですか」


老人は答えない


代わりに


浩平の工具箱へ目を向けた


「その工具箱」


「大事にすることじゃ」


「え?」


「無くすでないぞ」


「もちろんです」


仕事道具だから当然だ


老人は静かに頷いた


「それで良い」


――――


その時


市場の方から大きな悲鳴が聞こえた


「火事だ!」


人々が一斉に走り出す


浩平も駆け出した


露店の一つから火が上がっている


「水を!」


「バケツを持ってこい!」


町中が騒ぎになる


その瞬間


【依頼発生】


依頼内容 火災の拡大を防ぐ


依頼人 交易都市アルト


報酬 銀貨二十枚


受注しますか?


YES/YES


「町全体が依頼人?」


浩平は驚きながらも


迷わずYESへ触れた


頭へ知識が流れ込む


初期消火


延焼を防ぐ方法


建物の構造


「火を消すんじゃない」


「広げない」


浩平は工具箱を開く


中には新しい道具が増えていた


耐熱シート


大型フック


切断用のおの


浩平は近くの男たちへ声を掛ける


「この建物との間を空けます!」


「燃え移らなければ止まります!」


男たちは頷く


みんなで屋台を移動させ


耐熱シートを掛ける


その間に


町の人たちが水を運び続ける


しばらくして


火は勢いを失った


「消えたぞ!」


歓声が上がる


誰一人大きな怪我はなかった


浩平は静かに息を吐く


「良かった」


――――


振り返ると


老人の姿はもう無かった


代わりに


足元には一枚の古びた紙が落ちていた


拾い上げる


そこには


短く一行だけ書かれていた


**『道具は人を助けるためにある』**


浩平は小さく笑う


「それは俺も同じ考えだ」


紙を工具箱へしまう


その瞬間


工具箱が静かに光った


だが


何も起きなかった


「……気のせいか」


浩平は肩へ工具箱を担ぎ


夕暮れの町を歩き始めた


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