第十七話 古い水車
朝
浩平は市場を歩いていた
「便利屋さん!」
聞き覚えのある声がする
振り向くと
鍛冶屋のガインが手を振っていた
「ちょっと付き合え」
「依頼ですか?」
「ああ」
ガインは町の外れを指差した
「あそこの水車小屋だ」
――――
川沿いには
大きな水車が建っていた
だが
水車は止まったまま動かない
粉挽き小屋の主人が肩を落としていた
「困ったよ」
「粉が挽けなきゃパン屋も困る」
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 水車の修理
依頼人 粉挽き職人 オルド
報酬 銀貨十五枚
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
浩平は水車へ近付いた
ゆっくりと全体を見る
羽根は壊れていない
軸も折れていない
「……原因は中か」
工具箱を開く
見慣れない工具が増えていた
大型レンチ
木槌
軸受けを外すための専用工具
「今回は大きな機械だな」
――――
水車を分解する
歯車を一枚ずつ確認する
やがて
一つの軸受けが割れていることに気付いた
「これですね」
ガインが覗き込む
「よく見つけたな」
「音が違いました」
浩平は笑った
割れた部品を交換し
歯車を組み直す
最後に
ゆっくり水門を開けた
ゴト……
ゴトゴト……
ギィ……
止まっていた水車が
ゆっくり回り始める
やがて勢いを増し
力強く回転した
「動いた!」
職人たちから歓声が上がる
オルドは何度も頭を下げた
「助かった」
「これで町のみんなが困らずに済む」
浩平は照れくさそうに笑う
「便利屋ですから」
――――
帰ろうとした時
工具箱が淡く光る
新しく増えたのは
小さな金属製の歯車だった
「工具じゃない?」
浩平は首を傾げる
触れようとした瞬間
歯車は工具箱の奥へ吸い込まれた
【加工素材を収納しました】
表示は一瞬で消える
「また新しい機能か」
工具箱を閉じる
その様子を
少し離れた橋の上から
ローブ姿の老人が静かに見つめていた
老人は小さく微笑む
「まだ気付いておらんか」
その声は
風に消えていった




