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異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~  作者: 椿綺
第二章 交易都市アルト
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第十五話 初めての指名依頼

翌朝


浩平は宿で朝食を食べていた


すると


宿の主人が一人の女性を連れてくる


「この人です」


「便利屋さんはこちらですよ」


女性は浩平を見るなり深く頭を下げた


「突然すみません」


「相沢浩平さんで間違いありませんか」


「はい」


「便利屋をしています」


女性は安心したように息をついた


「ようやく見つけました」


「え?」


「鍛冶屋のガインさんと


時計職人のベルクさんから聞いたんです」


「困ったら


便利屋へ頼めって」


浩平は少し照れくさそうに笑った


「そんなに有名じゃないですよ」


「私には十分です」


女性はそう言って微笑んだ


その瞬間


【依頼発生】


依頼内容 宿の雨漏り修理


依頼人 宿屋の女将 エマ


報酬 銀貨十五枚


受注しますか?


YES/YES


「お受けします」


――――


宿は町外れにあった


天井には大きな染み


床には雨水を受ける桶が並んでいる


「昨日の雨でひどくなってしまって」


エマは困ったように見上げる


浩平も屋根を見上げた


「原因は一か所ですね」


工具箱を開く


新しい道具が増えていた


屋根用ハンマー


瓦を固定する金具


防水補修材


「今回は屋根か」


屋根へ上がり


傷んだ板を交換する


浮いていた瓦を直し


隙間を丁寧に塞いでいく


作業は半日で終わった


夕方


空が暗くなる


再び雨が降り始めた


女将は不安そうに天井を見つめる


一滴


二滴


待っても


雨漏りはしない


「止まった……」


女将の目に涙が浮かぶ


「これで安心してお客さんを迎えられます」


浩平は笑って頷いた


「長く使ってください」


――――


宿へ戻る途中


工具箱が静かに光る


中には新しい道具が増えていた


折りたたみ式の屋根ばしご


「仕事の幅が


また少し広がったな」


工具箱を閉じる


その時


通りの向こうから


誰かが浩平を見つめていた


長いローブをまとった老人


目が合うと


老人は静かに背を向け


人混みの中へ消えていく


「……知り合いじゃないよな」


少し気になったものの


浩平は深く考えなかった


まだ


その老人との出会いが


便利屋の運命を大きく変えることになるとは


思いもしなかった


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