第十四話 時計職人の依頼
翌朝
浩平はガインの鍛冶工房を訪れていた
「親父さん」
「昨日はありがとうございました」
ガインは振り返ることなく答える
「ちょうどいい」
「お前に頼みたい仕事がある」
「依頼ですか?」
「ああ」
ガインは店の外を指差した
「隣の時計屋だ」
――――
時計屋の工房は静かだった
棚には大小さまざまな時計が並んでいる
だが
どれも止まったままだった
奥から一人の老人が姿を現す
「ガインの紹介か」
「はい」
「便利屋の相沢浩平です」
老人は小さく頷いた
「わしは時計職人のベルクだ」
「頼みというのは?」
ベルクは一台の大きな柱時計を見つめた
「直せんのだ」
「部品を替えても動かん」
「長年使ってきた時計なんじゃ」
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 柱時計の修理
依頼人 時計職人ベルク
報酬 銀貨十枚
受注しますか?
YES/YES
「お受けします」
浩平は工具箱を開いた
中には小さな精密工具が並んでいる
細いドライバー
小さなヤスリ
歯車を固定する器具
「今回は細かい仕事だな」
――――
時計を分解する
歯車を一枚ずつ確認する
やがて
一つだけ欠けた歯車を見つけた
「原因はこれですね」
ベルクが驚く
「そこまで分かるのか」
浩平は頷く
欠けた部分を整え
噛み合うよう調整する
最後にゆっくりゼンマイを巻いた
コチ……
コチ……
静かだった工房に
時計の音が響き始める
ベルクは目を閉じた
「この音だ……」
長年聞き続けた音だった
「ありがとう」
「もう二度と聞けないと思っておった」
浩平は少し照れくさそうに笑う
「また何十年も動いてくれますよ」
ベルクは深く頭を下げた
――――
帰ろうとした時
工具箱が淡く光る
新しく増えていたのは
精密作業用のピンセットだった
「仕事が細かくなるほど」
「道具も細かくなるんだな」
工具箱を閉じる
その時
ベルクが一枚の封筒を差し出した
「この紹介状を持っていきなさい」
「わしの古い友人じゃ」
「きっとお前の力が必要になる」
浩平は封筒を受け取った
「ありがとうございます」
交易都市アルトでの縁は
少しずつ広がり始めていた




