第十三話 鍛冶屋の親父
工房を出ようとした浩平を
主人が呼び止めた
「こっちだ」
案内された先は
町外れの鍛冶屋だった
カン
カン
カン
金属を打つ音が響く
店の奥では
大柄な男が真っ赤な鉄を打っていた
「親父!」
工房の主人が声を掛ける
男は金槌を置き
ゆっくり振り返った
「何だ」
「命の恩人を連れてきた」
鍛冶屋の男は浩平を見る
頭の先から足元まで
じっと見つめる
「お前が便利屋か」
「はい」
「工具箱を見せろ」
突然の言葉だった
「え?」
「いいから」
浩平は少し戸惑いながら
工具箱を差し出した
鍛冶屋は工具箱を持ち上げる
「軽い……」
蓋を開こうとする
だが
開かない
「開かない?」
浩平が受け取る
何事もなかったように蓋を開く
鍛冶屋は目を見開いた
「……そういうことか」
それ以上は何も言わなかった
――――
「お前」
「その工具
全部使えるのか?」
「たぶん」
「必要になると
使い方が分かるんです」
鍛冶屋は腕を組む
「面白い」
「なら試してみろ」
そう言って
折れたノミを差し出した
「直せるか?」
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 鍛冶道具の修理
依頼人 鍛冶屋 ガイン
報酬 銀貨三枚
受注しますか?
YES/YES
「もちろん」
浩平は笑った
工具箱を開く
今まで見たことのない
細いヤスリと研磨具が増えている
「これか」
折れた部分を整え
新しい柄を作る
刃先を研ぎ
最後に軽く磨き上げる
ガインは黙って見ていた
やがて
完成したノミを手に取る
「……悪くない」
そう言いながら
口元だけ少し笑った
「合格だ」
――――
ガインは工房の奥から
一枚の木札を取り出した
そこには
『ガイン鍛冶工房 出入り自由』
と書かれていた
「困ったら来い」
「道具の相談くらいなら乗ってやる」
浩平は木札を受け取り
静かに頭を下げた
「ありがとうございます」
町へ来て
初めてできた
仕事仲間だった




