第十二話 工房の救出
リックの後を追い
浩平は工房へ駆け込んだ
中には数人の男たちが集まっている
「駄目だ!」
「柱が邪魔で動かせない!」
「無理に引けば屋根が落ちるぞ!」
怒号が飛び交う
浩平は工房の中を見渡した
天井を支える柱が折れ
太い梁が職人の足を押さえている
職人は苦しそうに息をしていた
「父さん!」
リックが駆け寄ろうとする
「待って」
浩平が肩へ手を置く
「今近付くと危ない」
その瞬間
【依頼受注】
救出方法を解析します
頭の中へ知識が流れ込む
建物の構造
荷重のかかり方
支柱の組み方
「そういうことか」
浩平は工具箱を開いた
見慣れない道具が増えている
伸縮式の支柱
木製ジャッキ
固定用クランプ
「まず屋根を支える」
男たちは首を傾げる
「そんなことしてる暇があるのか!」
「あります」
浩平は静かに答えた
「今動かしたら
本当に潰れます」
その声には
不思議と説得力があった
男たちは黙って従う
――――
支柱を立てる
ジャッキで梁を少しずつ持ち上げる
固定する
ゆっくり
ほんの少しずつ
「今です」
梁が浮く
男たちが職人を引き出した
「助かった!」
工房に歓声が響く
リックは父親へ飛び付いた
「父さん!」
職人は笑いながら頭を撫でる
「心配かけたな」
浩平は支柱を確認する
崩れる心配はもうない
「これで大丈夫です」
工房の主人が深く頭を下げた
「ありがとう」
「命の恩人だ」
浩平は照れくさそうに笑う
「便利屋ですから」
その言葉に
工房中が笑いに包まれた
――――
帰ろうとした時
工具箱が静かに光る
中には一本の新しい道具
折りたたみ式の木製ジャッキ
浩平は苦笑した
「仕事が終わるたびに増えるな」
工具をしまい
工房を出ようとしたその時
工房の主人が浩平を呼び止めた
「便利屋さん」
「うちの恩人を
紹介したい人がいる」
「紹介したい人?」
主人は笑う
「あんたなら
きっと話が合う」
浩平は首を傾げながら頷いた
その出会いが
交易都市アルトでの新たな仕事の始まりになるとは
まだ知らなかった




