第十話 次の依頼
森の異変が収まってから数日
村にはいつもの穏やかな時間が戻っていた
井戸には水が流れ
橋を荷車が渡る
畑では村人たちが笑いながら収穫をしている
浩平は宿の前で伸びをした
「ようやく落ち着いたかな」
その時
一台の馬車が村へ入ってきた
荷台には大きな木箱が積まれている
御者の男は村長を見るなり大きく手を振った
「久しぶりだな!」
「待っとったぞ」
村長も笑顔で迎える
荷物を降ろし終えた男は
浩平へ視線を向けた
「その人が噂の便利屋か?」
「噂?」
浩平が首を傾げる
「荷車を直し
井戸を直し
橋まで直したそうじゃないか」
「隣町まで話が届いてるぞ」
浩平は少し照れくさそうに頭をかいた
「そんな大したことじゃ……」
「いや」
男は笑った
「困ってる人を助けるのは
大したことなんだ」
その言葉に
浩平は少しだけ照れた
――――
男は荷台から一本の筒を取り出した
「依頼書だ」
浩平が受け取る
その瞬間
【依頼発生】
依頼内容 荷物の護送
依頼人 行商組合
報酬 銀貨十五枚
受注しますか?
YES/YES
「やっぱりそれしかないのか」
思わず笑う
依頼書を開く
目的地は
交易都市アルト
村から三日ほど離れた町だった
「どうする?」
村長が尋ねる
浩平は少しだけ村を見渡した
猫と遊ぶ子どもたち
井戸で笑う女性たち
元気に走り回る荷車
来たばかりの頃とは
まるで違う景色だった
「……行きます」
便利屋だから
依頼があるなら行く
それだけだ
――――
翌朝
村人たちが見送りに集まっていた
「ありがとう」
「また来てくれよ」
「今度は泊まりじゃなくて遊びに来い」
浩平は照れ笑いを浮かべる
「依頼があれば」
その言葉に
みんなが笑った
白い狼の姿はなかった
だが
森の奥から
一度だけ遠吠えが響く
浩平は森へ向かって軽く手を振った
「またな」
荷馬車がゆっくり動き出す
村が少しずつ遠ざかっていく
浩平は前を向いた
工具箱を肩へ掛ける
「さて」
「次はどんな依頼だろうな」
便利屋の旅は
まだ始まったばかりだった
第一章 始まりの村 完
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
無事に第一章を終えることができました。
次回からは第二章「交易都市アルト」が始まります。
村を飛び出した便利屋・浩平を待つのは、新たな町、新たな依頼、そして新たな出会い。
これから少しずつ世界が広がっていきます。
引き続き、『異世界便利屋~魔王討伐から小さな依頼まで承ります~』をよろしくお願いいたします。




