第4話 気炎burn嬢
「pluuuuuuuu!!」
「pilaaaaaaaa!!」
「ひゃああああああ!」
楽奈美と波夢子は、オニヤンとオニマーという、巨大なトンボを思わせるダンジョンの生物の群れに追いかけられていた。
オニヤンは体が赤色、オニマーは体が青色という違いはあれど、基本的に連携して獲物(今は楽奈美達)を狩る生き物だ。
「オニヤン深追いしなきゃよかったー!」
走りながら楽奈美は嘆いた。彼女が強魚に勝利したことで調子に乗り、オニヤンに不意打ちを仕掛けるも失敗し、あろうことか無理に深追いしたせいでオニヤンとオニマーの群れに返り討ちにあったのだ。
さらに間の悪いことに、道が凸凹しており地べたを走る人間は不利だ。
「やばいやばいやばいやばい」
そう言いながら必死に逃げる楽奈美達の横を、何かが横切った。
後ろを見ると、女性をかたどった外側が布の人形がふわふわと、しかし確実にオニヤンとオニマーの方へ向かっていく。
「「pyuliiiiiiiiiiiii!!」」
オニヤンとオニマーの1体ずつが、二振りの鎌を思わせる大あごを開き、その人形に、食い込ませる。
「Da bomb」
その瞬間、女性の声がした。
刹那、
ドッゴオオオオオオオ!
「「「「byuooooooooo!!!!」」」」
人形は爆発、炎上し、オニヤンとオニマーの群れを焼き払った。
「…オニヤンとオニマーは慎重な生き物だ。これだけ仲間が派手に焼ければ、しばらくはこっちに来ないボマーよ」
楽奈美と波夢子に、赤髪の美女がにこやかに近づいてくる。
「ありがとうございます!助かりました」
「ありがとうございます」
礼を言う楽奈美と波夢子に、美女は何でもないと言う風にひらひらと手を振る。
「大したことじゃないボマー。君ら初心者だろう?」
美女は緩むように微笑む。
「アタシも初心者の頃は、先達たちに助けられたもんボマーさ。君らも後輩に返してやりなボマーよ」
「はい!立派な冒険者になります!」
「あの、えっと、その語尾は一体……、いや、なんでもないですすみません」
「アタシは爆炎のヨシミン。よろしくボマーね」
「……波夢子です」
「楽奈美でっす!って、"爆炎の"ってもしかして……」
その時、オニヤンとオニマーの群れが楽奈美達の方へ向かってくる。
「あぁ、その通りボマー」
ヨシミンが指を鳴らすと、彼女の足元に人形がくたぁっと落ち、その後糸を引かれた凧のように群れに向かっていく。
「爆炎のヨシミン、熟練度は赤ボマーだ」
ドッゴオオオオオオオ!
「「「「biyoooooooooo!!!!」」」」
人形がまた爆発、炎上し、オニヤンとオニマーの群れを焼き払う。
「色持ちだぁぁ!すごい!」
「ふふ、赤でこんなに目を輝かせてくれるなんて、可愛いボマーね」
ヨシミンは目を細める。
「いやぁ、赤でもやりこみ凄いですよ。たしか熟練度赤って、上位2~3割とかですよね。さっきの爆発も凄かったですし!」
「素敵爆弾人形と言ってね、可燃性の布に可燃ガスと酸素を充満させ、中に難燃性の布でくるんだ種火をいくつか詰めて相手にぶつけるんボマー。相手が種火の布袋を破った瞬間、バックドラフトが発生し、可燃ガスによる大爆発が起きるボマー」
ヨシミンは二ッと笑う。
「これが、ガス使いのアタシの自慢の技ボマーさ」
「おぉーっ!」
「語尾が……すごいしかっこいいんだけど語尾が……」
目を輝かせる楽奈美、まだ語尾になれずぼそぼそ呟く波夢子。
「…………それにしても、オニヤンとオニマーは、なぜ私達に向かってきたんでしょうか?」
波夢子は冷静に気持ちを切り替えヨシミンに尋ねる。
「先ほどもヨシミンさんもおっしゃっていましたが、オニヤンとオニマーは比較的合理的な生き物です。目の前で群れ仲間が爆破されたのに向かってきたのは、何か事情があるんでしょうか?」
「パックの卵がタイムセールで安かったんじゃない?」
「寝言は後で聞くから起きててね」
「グッモーニング!パックの卵がタイムセールで安かったんじゃない?」
「起きててそれかよ」
「そうボマーね……オニヤンとオニマーが合理的な判断ができなくなるような、何か特別な事情があったと考えるのが自然ボマー。一番考えられるのが、ダンジョンプレデターから逃げてきた、ということボマーね」
ダンジョンプレデターとは、このダンジョンの頂点捕食者だ。
ダンジョンごとに生態系があり、生態系の数だけ、捕食被捕食の関係がある。その中で、どこにも天敵がおらずほかの生物を襲い繁栄するもの、それがダンジョンプレデターだ。
ダンジョンの中では、「基本的に」ダンジョンプレデターが最強であるため、その攻略が最優先事項になる場合が「多い」。
「このダンジョンが界圧7だから、ダンジョンプレデターもそこまで強いとは思えないボマーね。だけど、もしかしたらダンジョンの中で急成長した可能性があるボマーね……」
ヨシミンは顎に手を当て思案する。
「楽奈美ちゃん、波夢子ちゃん。2人は、ダンジョンプレデターには挑みに行く予定ボマー?」
「はい!」
「倒せるかはわからないですけど、挑んでみたいと思っています」
「そう……じゃあ、よかったら、私も同行していいボマーかな?」
ヨシミンは楽奈美たちに手を差し出す。
「いいんですか!?」
「わ、私たちは、ありがたいですけど……」
「あのオニヤンとオニマーのおびえようを見ると、やっぱり、ダンジョンプレデターが想定以上に強くなっている可能性があるボマー……だけど、」
ヨシミンはニカっと笑う。
「アタシが2人を守るボマーよ。かつてアタシがそうされたように」
「ありがとうございます!」
「た、助かります」
楽奈美と波夢子はヨシミンの手を握る。
「じゃあ、3人チームで、ダンジョンプレデター攻略するボマーよ!」
「「おーー!!」」
楽奈美と波夢子は、熟練度赤の強者、ヨシミンを仲間にし、ダンジョンプレデターの元へ歩きだした。
空を飛ぶ生物が、逆方向へとせわしなく飛んでいくのを構わずに。




