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魔王ちゃん、恋に恋する5秒前っ! 〜最強魔王の秘密ごと、恋愛レベル・ゼロから始める勇者くんとの恋事情〜  作者: 朝比奈 架音


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第23話『魔王ちゃん、プレゼント・フォー・ユー その1』

 玉座の間に、重たい声が響く。


「はぁ~~~~~~~~~……」


 アタシの魂の底から絞り出された、ため息だ。

 石造りの高い天井に反響して、なんだか余計に虚しく聞こえる。


「どうしたのですか、アイラ様?」


 隣のバルギウスが、少し首を傾げてアタシを見た。


「今日は、いつもより雰囲気が暗いですよ?」


 アタシはゆっくりと顔を上げる。

 そして、じろりと思いっきり睨みつけた。


「……悪いの?」

「え?」

「魔王が陰キャで何が悪いーっ!!」


 バンッ!

 と、玉座の肘掛を強く叩く。


「そもそもね、魔王っていうのは闇に生きる者たちの王なの! 日向でキャッキャするような陽キャなわけないでしょ!!」

「はあ……」

「明るく前向きな陽キャ魔王? そんなの、アタシに言わせれば、自覚の足りないただの偽物よ!!」

「……それ、いつものご自分に喧嘩売っておられます?」


 バルギウスは、やれやれというように肩をすくめた。


「それで、今日はいったいどうされたのですか?」

「……できないんだもん」

「できない? 何がです?」

「勇者へのプレゼント……色々作ってみたけど、ぜんぜん上手くいかないんだもん!」


 勇者へのプレゼント。

 それは、アタシのアイドルライブ・イベントで勇者がゲットしたプレゼント権。

 あのときの彼の嬉しそうな顔は、今でも瞳に焼き付いている。


 だからこそ、最高のプレゼントを贈りたいのにぃぃぃ!!


「アイラ様……」


 バルギウスがアタシの肩に優しく手を置いた。


「大丈夫ですよ。その気持ちが大切なのです。自分のことを想って作ってくれたものを嫌がる者などおりません。もし、そんな(やから)がいるのであれば――」


 細められたその目が冷たく光る。


「私がオシオキして差し上げます」

「バルギウス~~~!」


 アタシは思わず涙目になった。

 普段は毒舌キャラなのに、こういうときはとても頼りになる。


「それで、アイラ様は何をお作りになられたのです?」

「えへへー、よくぞ聞いてくれました♪」


 アタシはテーブルの下から箱を取り出すと、どん! とその上に置いた。

 中から取り出すは……。


「ほう? 目玉の垂れたゾンビな獣のヌイグルミですか。頭から飛び出た綿の脳ミソがリアルでいいですね」

「……可愛いネコちゃんのつもりなんだけど」

「えーと……」


 バルギウスは頬をかく。


「あ、アイラ様、他には?」

「あるよ!」


 続いて制作第二弾をテーブルの上に置く。


「これー!」

「おお、良いじゃありませんか、生首コレクション! 戦いに勝利した証として、相手の首を腰から下げられるようにしたのですね! この苦悶に歪んだ表情、最高です!」

「……満面の笑みを浮かべた、アタシと勇者の顔のキーホルダーなんですけど」

「あ……こ、こちらなんて最高じゃないですか!」


 バルギウスは、慌てたように別の物を取り出した。


「この可愛らしいバッグは素晴らしい! とてもコンパクトなのに……底が抜けてるから無限に物が入りますね」

「ううぅ……!」

「で、では、こちら!」


 最後の物を持ち上げる。


「こ、この毒々しい半固形の茶色い物体! こういう謎の物の方が、使い手の想像力を掻き立てるというものです!」

「それ、手作りチョコレートなんですけど……」


『ウメェェェェェ、ウメェェェェェェ』


「チョコレートが鳴いておられますが……」

「美味しくなぁれって気持ちを込めたら、魂が宿りました」


 ……沈黙。

 ……長い沈黙。


「アイラ様、申し訳ありません。私、たった今からオシオキされる側に回ります」

「こ、この、裏切者ーっ!!」


 涙目のアタシを前にバルギウスは、

 ふぅ……。

 と、深いため息をついた。


「仕方ありません、今回は私がお手伝いいたします」




 それから10分後。

 場所は変わって、ここは魔王城厨房(キッチン)

 数々の材料の前にバルギウス、そしてエプロン姿のアタシが立っていた。


「では、勇者への贈り物は、チョコレートケーキにしましょうか」

「チョコケーキ!!」


 甘い幸せを運ぶ黒いケーキ!

 それ、絶対喜ばれるやつー!


「まずはスポンジを作ります。卵黄と溶かしたチョコレートを混ぜ――」

「任せて!」


 卵を手に取り、親指に力を籠めた——。

 ——瞬間!


 ぼんっ!


 卵が爆発した。


「ぎゃっ!?」

「……アイラ様、力を入れすぎです」

「うぅ……」

「では、次にメレンゲを泡立てるのですが……」

「今度こそ、任せて!」


 名誉挽回!

 置いてあった泡だて器を強く握りしめる。


「泡だて器を持ち上げたとき、メレンゲの先が角のように立つくらいまで、掻き混ぜてくださいね」

「わかった!」


 ツノが立つくらいに、ぐるぐるぐるぐる~~~~。


「アイラ様、アイラ様! ストップです! 角ではなく竜巻が立っております!!」

「くうぅ!」

「……では、この後は出来上がったスポンジ生地をオーブンで焼くのですが……」

「ねぇっ! アタシの必殺技、〈一夜の灼熱断罪破ワンナイトラヴ・ノーサンキュー〉を使ったら、時短でできないかな?」


 天に向かって渦巻く炎は、闇を昇る煉獄(れんごく)(ほむら)

 スポンジなんて瞬時に……。


「じろっ!」

「……消し炭だよね」



 そんなこんなで悪戦苦闘すること数時間。

 チョコホイップを乗せて、お好みフルーツを添えて……。


「……できたー!」


 テーブルの上に置かれた立派なチョコレートケーキに、アタシは拍手を送る。


「なんとか完成しましたね」

「うん! ありがとう、バルギウス!」

「いえいえ。それでは仕上げに……ゴニョゴニョゴニョ」


 え!?

 バルギウス、呪文を唱えた!?


「何をしたの?」

「いえ」


 バルギウスはアタシに向き直ると微笑んだ。


「ただの、美味しくなる〝おまじない〟ですよ」

「おまじない?」

「アイラ様も、勇者が食べる直前に両手でハートを作って、美味しくなぁれ♡ って言ってくださいね」

「えええええええ!?」


 ケーキをリボンのついた小箱に入れると、バルギウスが変身の指輪シェイプチェンジ・リングを手渡してくれた。

 もう何度も使用しているこの指輪。

 使い方はバッチリ!


「アイラ様、勇者はマリーダの酒場にいるようですよ」


 水晶球を覗き込みながらバルギウスは言う。

 こちらもおなじみ魔道具(マジックアイテム)、遠見の水晶球だ。


「行ってくる!」

「くれぐれも悪目立ちしないように」

「わかってる」

「今夜はオムライスですからね。ちゃんと夕飯までには帰ってくるのですよ? アイラ様は制御を失った熱気球みたいに、すぐにどこかに飛んで行っちゃいますから」

「そ、そんな子じゃないもん!」


 バルギウスに反論しつつ、アタシは窓を開く。

 空は、今日も気持ち良いくらいの快晴だった。


「アイラ様、こちらもお持ちになってください」


 飛び出そうとするアタシに、彼が封筒を差し出してきた。


「ん~? 何これ?」

「こちらは取説になります」

「とりせつ~?」

「困ったことがあったら読んでくださいね」


 う~ん?

 よくわからないけれど、とりあえずポケットに入れておこう。


「それじゃ、行ってきます!」


 アタシは背中に翼を生やすと、窓から飛び出した。


「勇者、楽しみに待っててね!」


 どこまでも青く澄んだ世界に、アタシの声が響き渡っていった。




~その後のバルギウス&チョコレート~


「さてと……アイラ様が派手に散らかしたものを片付けますか」

『ウメェェェェ』

「……この〝魂が宿ったチョコレート〟はどうしたものか」

『ウメェ、ウメェェ』

「半固形だから、活動範囲も限られてきますね」

『ウメ……』

「ふふ、良いことを思いつきましたよ」

『ウメェ?』

「これをこうして、ここに入れて……できました。〝ゾンビ猫ヌイグルミ〟in〝魂のチョコレート〟。これで自由に動けますね」

『ウメェ、ウメェェェ♪』

「ふふふ、お前も気に入ってくれましたか。良かったら、この〝底が抜けた無限バッグ〟を住処にしてください。底は、〝二人の顔のキーホルダー〟で塞げば……ほらっ」

『ウメッ!』

「アイラ様も、お作りになったプレゼントが活用されて喜ぶことでしょう、ふふふ」



 最後までお読み頂きまして、ありがとうございます!


「面白い」

「続きが読みたい」

「更新が楽しみ」

「アイラ可愛い!」


 と、少しでも思って頂けましたら、

 ブックマークや、下にある☆☆☆☆☆から作品の応援を頂けたら嬉しいです。


 これからもどうぞよろしくお願いします!

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