第1話 第一村人発見っ!
平凡な生活。代り映えしない日々。
今日も特に楽しいことは無かった。淡々と授業を受け、適当に友人と戯れ、放課後は漫然と過ごし、気づいたらその日が終わる。
「……っ」
ひんやりとした風が頬を撫でる。日もかなり短くなった。そろそろ手袋をしないと生きていけないかもしれない。
なぜだろう、大して忙しくはなかったのにどこか気怠さが混じる。
「さっさと帰ろう」
そう思った矢先、ふとズボンのポケットが軽いことに気づく。
触ってみるが堅い感触が無い。
「これは……、やっちまったか」
そう、携帯しているはずのスマホが見当たらない。確かに学校では使ったから単純に忘れてきたのだと思う。
「……引き返すかあ」
こんな代わり映えは求めていなかった。
彼――駿河奏斗は焦りも見せないまま、渋々と来た道を引き返した。
* * *
校舎に着いた。
町立朝凪高等学校。この町――夜月町に設立されている町立の高等学校だ。通称、凪高という。
凪高は普通科・スポーツ科・特別進学科の三つのコースに分別されている。
クラス分けは、一~三組が普通科、四組が特別進学科、五組がスポーツ科である。まさに文武両道の体現を掲げている高校だ。
進学率も良く、スポーツも全国レベルを誇っていた。
しかし少し前にとある不祥事が起きて話題に上がっていたが、今は名誉挽回に努めているらしい。
ちなみに俺は凪高の二年生。一組である。将来は適当に進学できればいいと思っている。
繰り返しにはなるが、この町は夜月町と言って、海に面した小さな町だ。
事実その海は、かなりの絶景スポットと名を馳せており、観光客もひっきりなしだ。それもあってか、町としての経営も潤っているらしい。
そして、その中でも本校は海から一番近い場所に設立されている。それ故に、校舎からの見晴らしが良い。生徒の中では、特に屋上からの展望はひときわ壮観で人気である。俺はもう慣れてしまったが……。
「ここからが遠いんだよな……」
既に放課後も過ぎ去り、生徒たちは皆帰宅した模様。校門を抜け校舎に入ろうと――。
「……ん?」
――したその時、視界の端に何か蠢くものを捕らえた。
そちらに目を向ける。対象は左手――校庭の方角だ。
校庭に何か小さな人影らしきものが窺える。何かさまよっているような動きをしていて――。
「え、まさか幽霊とかじゃないよな……」
俺は心霊が苦手である。お化け屋敷は無理だし、テレビとかで特集している心霊番組もだめである。
特に霊感も持っていないしこういう経験には縁がなかったが、どうしても体が強張ってしまう。
あれこれ危惧していたその時、影はいきなり動作を止めたかと思えば、こちらに向かって一気に迫ってきた。
「は!? 何でこっちにくるんだよ!」
俺は一目散に逃げようとするも、よくある流れの通り、足がもつれて転んでしまった。
「……っ!」
(くそ! 確かに焦ってる時はほんとにこけるわ! しかも、足に力が入らなくて上手く立ち上がれない……! くっ! これしかっ!)
俺はダメ元で手にしていた鞄を投げつける。投球力もエイム力も無いが体が動いていた。
ところが、宙を舞った鞄は意外にも影に吸い込まれるように当た――。
「……!?」
否、すり抜けた。そして影は俺を捉え――。
「第一村人発見っ!」
――影、小さな女の子は、思いっきり指を突きつけ、溌剌に声を響かせた。
お読みいただきありがとうございます!
プロローグにはなんとなく後書きを入れたくなかったのでここにしました。
家族とか友情系のお話が好きなので、自分でも形にしてみようと思い、ここに至ります。
長めのお話にはなりますが、よろしくお願いします。




