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葛藤
沈黙を破ったのは、電話の着信音だった。
「秀樹からだ」
博が出る前に、亜希が受話器を取った。
「もしもし?……ああ、秀樹。うん、元気よ。え?金曜日に帰ってくるの?」
その声はどこか上の空だった。
「どうしたの?お母さん、なんか変だよ」
その一言で、亜希は堰を切ったように話し始めた。
「実はね、かくかくしかじかで……」
博は横で聞きながら思った。
(説明が長い……)
電話の向こうで、秀樹が絶句する気配が伝わってくる。
「……そんなことある?
で、どうするの?里親になるの?」
「そんな簡単に決められるわけないでしょ!」
「まあ、決まったら教えてよ。
なんか……うちって猫も子どもも引き寄せるよね」
他人事のような声に、亜希は電話を切ったあと、
「こいつ……」と小さくつぶやいた。




