警察からの電話
朝食が終わる頃、電話が鳴った。
「10時頃に、女の子を引き取りに伺います。
迷子・行方不明の届けはまだ出ていません」
博と亜希は顔を見合わせた。
(……本当に、どこから来たんだ?)
10時。
警察官2名と、児童相談所の女性職員が来た。
女の子は、彼らの姿を見るなり、博の服をつかんで叫んだ。
「ここ!ここがいい!!」
抱きかかえられると、全身で抵抗し、手を伸ばして博を見つめる。
——その目は、
助けを求めるというより、
“確認するような目”だった。
(……俺を、知っている?)
ぞくりとした感覚が背筋を走る。
なんとかパトカーに乗せられ、女の子は連れて行かれた。
玄関が静かになると、夫婦はしばらく言葉を失った。
「……なんだったんだろうね、あの子」
「迷い猫のときも大変だったけど、今回は……規模が違うわ」
博が苦笑する。
「男二人だったから、娘が欲しかったのは事実だけどな」
「あなた、絶対“くさい”とか“パンツと一緒に洗わないで”って言われて落ち込むタイプよ」
「ひどいなぁ。女子アナのはるかちゃんは、昨日テレビからウインクしてくれたのに」
「それ、中年男性の典型的な幻覚よ」
いつもの夫婦漫才が戻ってくる。
だが、ふと亜希が真顔になる。
「……でも、気になるのよね。なんで“うち”なの?」
「うちは捨て猫ボランティアでも、赤ちゃんポストでもないぞ」
笑いながらも、胸の奥に小さな不安が残った。
博はハローワークへ行く準備を始めた。
「……なんか、体が軽い気がするな」
「私も。更年期の汗、今日は出てないし」




