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下級兵塩川の日常  作者: 塩ソルト塩
2章 『女王アリ』と『ゲウム第七部隊』
27/68

25話 こんなに面白い戦場

──────



────────────


「っ、繋がったぞ!回線が復活した!!」


「なんだと!?」


「やったぁ!!やったねシアねーちゃん!」


「ん。・・・でもどうして」


〔やぁやぁグロキシニア第四部隊の諸君。僕の顔ちゃんと映ってるかなー?〕


「ブランせんせー!!・・・、なぁに?その恰好。」


〔あぁこれ?いい質問だねぇペチュニア君。これはねー『本日の脇役たすき』と『付け髭ぐるぐるメガネ』だよ。いいでしょ、このメガネ度が入ってないから今なーんにも見えないけどね。〕


「ふ、ふーん・・・?あ、違う!そんなことよりきんきゅーじたい!!女王アリさんいなくなっちゃったの!!」


〔な、なんだって!?君たちが向かった巣に、女王個体は不在だったのかい!?〕


「ああそうなんだブラン教官。それで私たちを引き付けた隙に、擬態した女王が最前線に向かっている可能性があるんだが、妨害電波によって今の今まで本部と連絡が取れなかった。・・・中央都市に、被害が出るかもしれないんだ・・・。」


〔それは・・・!ふっ、それは大変、・・・ふ、ククッ!!・・・じゃあ君たちには、とりあえずこの映像を見てもらおうかな・・・!!〕



「っ、これは・・・!湖のほとりで、少年一人が蟻たちと戦っている・・・!?っ──彼、よく見るとこの前の少年じゃないか!?ほら、シアが拾ってきたゲウムの!」


「・・・!!」


〔そ、彼はゲウム第七の塩川君で、これは最終防衛地点の無線カメラ映像。緊急信号をキャッチしたから繋いでみたらこんなになっててさ、僕仰天して八つ橋落っことしちゃったよ。・・・あ、食べたけどね、床綺麗だし。〕



「うわわ・・・ぴょんぴょん跳んでアリさん達やっつけてる・・・!」


「なっ、この滅茶苦茶な実力でゲウムだと!?」



「・・・驚いたよね!?銃も使わず近接武器でアント型を蹂躙してる彼がゲウムだなんて吃驚だ!!でもね、それだけじゃないんだよ・・・彼の後ろの方をよーく見てくれるかい。」


「・・・黒くておっきい、・・・はへん?」


「・・・っ!!」


「クククッ」


「・・・教官殿!?これはどういう───」


「──なっはははははははは!!気づいたかな!?これ、女王個体の死骸☆」


「おい冗談だろ!?少年がやったのか!?」


「傑作だろ!?おおとりに彼を配置して正解だった!!擬態して包囲網を抜けた女王個体は最終防衛地点を突破することなく木端みじん、挙句の果てには自分の死骸を武器として振り回されて部下も全滅だ!!・・・ゲウムの、少年相手にだよ?───やばいよね、シアちゃん。」


「・・・。」


「シア?・・・どうした?」


「シアねーちゃん、お外いくの?」


「ん・・・。女王が倒されたなら、子アリを倒しに行ってくる。」



「・・・シアねーちゃん行っちゃった。ってことは!にーも行っていい!?」


「吾輩も行くぞ!・・・いざ、推して参る!!」



──────



(なんだ・・・?さっきから取りこぼしの気配がないが・・・。)


「おい、これはどうしたんだ。前方で大規模な臨時指揮でも行ってるのか?叫び声のようなものも聞こえてくるが。」


(気に食わんな。慣れない統率重視の迎撃姿勢に叱責を交えて、それでも上手く士気を上げられない俺への当てつけみたいだ。どんな巧妙な手段で集団をまとめているのかは知らないが、俺だって力量さえあればそうしたいさ、くそ!!)


「隊長、それがよぉ・・・。」




「───が、ん、ば、れえええええええっ!!」


「「「うおおおおおおおっ!!」」」


「いけ!負けるなあああああああ!!」


「「「うおおおおおおおっ!!」」」


「頑張れーーー!!」


「「「うおおおおおおおっ!!」」」




「・・・。」


「・・・。」


「・・・なあ。」


「・・・どうした。」


「私・・・いや、すまない。最近俺ちょっと、威張りすぎたな。隊をまとめたくて必死になってたはずが、かえって統率を崩していたみたいだ。・・・悪かった。」


「っ、アンタ・・・!!けっ、変に気張るから空回りするんだよ、俺たちずっとそのままのアンタを信頼してんだ、誰より臆病で慎重なアンタをな。・・・、俺こそ悪かった。あんたが天狗になったもんだとばかり思い込んでたよ。・・・今度こそついてくから、指示をくれ、隊長。」


「ああ。・・・デルタのみんな聞いてくれ!!まず前提に、最近俺の八つ当たりに付き合わせてすまなかった!!許してくれ!!」


「隊長・・・!!」


「そして本題だが、通信機器の使えない今、前方の一般兵たちが心配だ!!今は気合で持ちこたえてくれているが、小回りの利く俺たちでサポートしてやりたい。ついてきてくれるか!」


「もちろんだ、隊長!!」


「よし、じゃあ作戦は・・・各々が好きなように!行くぞ!!」


「「「了解ッ!!!」」」



──────



「ひるまず撃て、押してるぞ!!補充も早くて助かる、ストックを残したまま戦えると安定感が違うな。」


「あ、ありがとうございます!!・・・俺たちってこんなに頑張れたんだな。さっきから弾補充する腕がウツボみたいに動くし、銃の反動も余裕で堪えられる。」


「はたから見れば何をやってるのかって感じなんだろうけどね。・・・それでも今は、あの応援の声が僕らを動かしてる。」


「クサいこと言ってくれるじゃないか。けど本当だ、この特別大きな声の子の応援なんか、聞くだけで力があふれてくるのが分かるぞ。」


「僕、帰ったらオペレーター名簿確認しようかな・・・。」


「おいお前ら、作戦中に気が早いぞ!ちなみに私は奥で響く凛々しい声の持ち主が好きだ、プロポーズしたいから邪魔しないでくれよ。」


「「気が早い・・・。」」



──────



「いっけぇぇえ、頑張れーーーー!!」


(・・・ほんと、どうしてこんなことに・・・!?戦場の仕事が応援って、やっぱり場違いで恥ずかしいのって思うのに・・・なんかみんなの勢い増してるし、アリ押しちゃってるし!嬉しいけど!!やっぱ恥ずかしいよ・・・いつまでやるのこれ!!)


「負けるな、撃てええええ!!・・・ふぅ、流石に恥ずかしいなこれ。」


「先輩もなんですか!?」


(凛々しくてかっこいいのに・・・。)


「当たり前だ。にしても君、可愛い顔してえげつない声量だな。そんな才能があったなんて知らなかったぞ」


「そ、そうですか?えへへ、照れる・・・!」


「まったく侮れない新米オペレーターだよ、君は。・・・さて、もうひと踏ん張りするか。」


「はい!!・・・みんな、頑張れえええええっ!!」



──────



「なっはははははは!!何やってんだこの人たち!っはっはっはっはっは!ひーっひっひっひっひ!!腹がよじれる!!」


「あなたが仕向けたことでしょうに、相変わらずブラン教官はお人が悪いな。学習型妨害電波『ファルツ221』はあなたが即興で作った自壊コードを学習させてとっくに消し去ったと、素直に知らせてやればいいのに。」


「そうはいってもねぇツナミ君!こんなに面白い戦場をなーんも面白くないマニュアル戦場に戻すなんて、僕には到底!!・・・・・・僕は嬉しいのさ。彼らが殻を破っていくのが。思い通りにならないものを通してしか、僕たちは成長できないんだ思うよ。」


「シアを焚きつけたのも、それが理由ですか?」


「・・・かもね。中学二年生の塩川君を拾ってからかな、僕はどうにも余計なお節介を焼いてしまうようになった。・・・それに退屈な事は全部、彼が解決してくれるんじゃないかとも思うようになったよ。」


「シアがあんなに感情を出して物を言ったのは、私たちの前では初めてですよ。」


「だとすると、甲斐はあったのかもね。」



「ええ。もしかするとあの少年は、シアを変えてくれるかもしれない。・・・もっとわがままで子供っぽい、幸せな女の子に。」

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