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下級兵塩川の日常  作者: 塩ソルト塩
2章 『女王アリ』と『ゲウム第七部隊』
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16話 蟻社会の『グロキシニア』ってとこ

「ツナミちゃん、あそこあそこ!!ありさんがいっぱい出てきてるよ!!ほらほら、突っ込めゴーゴー!」


「いい気迫だ!!が、待つんだペチュニア殿。ヘリから降りるのは、『女王アリ』の位置を特定した後だぞ。そうしないと、蟻をいくら倒してもキリがないのだ。」


「さもありなん。私たちの任務は女王個体の撃破、つまり蟻たちの『発生源』の駆除だからね。・・・だが安心してくれ、そろそろこの端末を通して、本部から正確な索敵データが送られてくるはず・・・、なんだがな。」


「ん。どうしたの、ツナミ。」



「───おかしい・・・何処にもないんだ。その、『女王アリ』のフォトン反応が。」



「えぇー、それって『ばぐ』じゃないのー?」


「可能性はあるが、フォトン検知器はフロリスが研究してきた科学技術の集大成だ。そんなものが不具合を起こした暁には、私たちの暮らしはそれこそ大惨事になるだろう。」


「となると、考えられるのは通信機器の電波障害ではないか?この規模の巣なら、通信妨害機構くらい備えていてもおかしくはないであろう?」


「・・・女王アリの反応だけ消す、妨害電波。」


「ふむ。確かにそう言われるとしっくりこない気がしてくるぞ。小癪な蟻共め」


「ありさん関係ないよね?」


「ともかく、少し困ったな。こういう時、あの子の『力』が頼りになるんだが・・・。いや、いかんな。嘆いてもしょうがない。今は女王の反応がないという事実と向き合わなければね。・・・データの誤りは考えにくく、あれだけの行列を背に自分だけ逃げるはずもない。だとしたら、ヤツは何処にいるんだ・・・?」



「ん・・・普通のに擬態して、群れに紛れてるかも。」



「そうか、それだよシア!そういう芸当ができる古代兵器のデータは、過去の文献で見たことがある・・・となると、今巣の周りにいる蟻共はダミーか。やられたな、ただの蟻だと見くびっていたのが災いした。今回の女王、思ったより大物だぞ・・・!!」


「ありさん、弱くないの?」


「おいおい、万事休すか!?主戦力の我々を最後方までおびき出したヤツは今、予想以上に大物の女王アリは今───」



「──蟻の行列の、最前線にいる・・・!!」


「今から私たちが折り返したとして、最低でも五時間はかかるぞ!一刻も早く本部に連絡せねば、女王個体は防衛区の網を突破して東区域を壊滅させる!運転手殿、至急本部に応援要請を!!」


「・・・その、先程から何度も発信しているのですが・・・」



────────────



「こちら遊撃部隊デルタ、少し残党の数が多いが、前線は無事か?」


〔・・・・・・〕


「応答せよ、こちら遊撃部隊デルタ、応答せよ。なんだ、通信機の故障か?」


「こっちも繋がらない。向こうで金属を含んだ砂塵でも上がってるんじゃないか?」


「・・・あの遠くにいるの、取りこぼしか?・・・おい、70の方角に妙な動きをしてる奴らがいるぞ!!」


「隊長。だいぶ向こうに数匹はぐれてる、こっちが安定したら向かっていいか。」


「放っておけ。少し距離がある分こちらの迎撃に支障が出る。二兎負うものは一兎も得ず、戦場の鉄則だ。」


「了解。・・・クッ、狩り損ねたか。明日から訓練の量増やさないとな。」


「たかが数匹だ、気にしてもしょうがないものを気にする奴が戦場でポカをするんだよ。・・・ほらそこ、後方確認!!戦場では油断した奴から死ぬって教えただろ!!・・・お前もこんなところで不貞腐れてないで、左翼の掃討に回れ。」


「っ・・・、了解。・・・なんかアンタ、隊長になってから変わったな。慎重さを買って隊長に立てたのに、今じゃ傲慢で不用心な持論魔じゃないか。アンタの口から『たかが数匹』なんて聞きたくなかったぜ。っくそ!!」



────────────



「あわわわわ、どうしよどうしよ・・・なんか大変なことになっちゃってる・・・!!」


「全部隊に告ぐ。たった今通信機器の性能低下を確認、無線通信による作戦指揮は間もなく一時停止する!各隊は復旧まで隊長の個人指揮に従ってローテーション戦術を続行せよ!繰り返す、各隊は焦ることなく、隊長の個人指揮でローテーション戦術を続行せよ!!」



「電子ソナー、受信できません!!」



「なんだって!?今の放送も聞こえてなかったのか!」


「ダメです!第二迎撃区周辺に原因不明のファルツ波が停滞しています!」


「な・・・ファルツ221、波長適応型妨害電波だと!?」


(ファルツ221って、通信機の発信を学習して適応することで妨害性能が上がっていくっていう・・・ひぇぇ、なんでこんなことに・・・!!)


「っ・・・カランコエ諸君、今すぐ解析を止めてくれ!!相手は『意思を持つ電波』だ、不用意に抵抗しようとするとかえって対策困難になるぞ!!」



(全部の通信が途絶して通信解析もできないなんて、こんなの私には荷が重いよ・・・かみさまぁ・・・!!)



〔───あはー、なーんか大変なことになっちゃってるねーカランコエのみんな。〕


(・・・へ?)


「ブラン=ジーナ教官!!」


〔はーいどうも、みんな大好きブランジーナ教官でちゅよー。暇でしょうがないからそっちの回線を覗き見してたんだけど、急に切れるもんだからバレたのかと!!焦ってお土産のちんすこう床に落としちゃったよーっはははは!!・・・まぁ食べたけどね、床綺麗だし。〕


「そ、そんなことより!どうして回線が繋がって・・・!!」


〔あーこれ?これねぇ要領は『時間条件付き最短経路問題』と同じようなものなんだけど・・・ま難しいよね。僕もよく分かんないから詰めは当て勘でやっちゃった☆・・・でも今回は相手が悪いから、残念だけどこの通信ももってあと一分なんだよね。ゆっくりお喋りしたいのは山々なんだけど、要点だけ手短に話すから掃除機くらいは止めてくれると嬉しいなっと、うるさいのはゲウム寮のおんぼろ掃除機だけか!なははは!!〕



「時間条件付き最短経路問題、だと・・・!?」



(何なの、ジーナ教官って何者・・・!!)


〔んで。その電波妨害なんだけど、『女王個体』の仕業と見て間違いないだろうね。〕



「女王個体、だと・・・!?」



〔そ、アリさんの女王さま。あんまり詳しく説明してる暇はないんだけど、『単独の大群』っていう異名だけ教えておこうかな。一匹であれこれいたずらして僕たちを困らせる、アント型古代兵器の女王個体とはそういうものなのさ。・・・しかも、今回のは特に厄介だね。ヤツの内部AIはいまや、一流軍師に匹敵するレベルの作戦能力を有しているよ。まぶっちゃけ、蟻社会の『グロキシニア』ってとこ!!〕



「蟻社会のグロキシニア、だと・・・!?」



(すごい、あの先輩が圧倒されすぎてずっと同じ反応しかできてない・・・。)


〔・・・だから、力を合わせて戦わないとね。君たちは戦場指揮に集中して。この妨害電波についてはま、なんとかなるから。〕


「しかし!この銃声の中、無線通信なしで細かい指示を行うのは困難では・・・!!」


〔のんのん、・・・指示出しなんかしなくたっていいんだ。たった四文字で士気を上げる方法、知ってるでしょ?〕


「それは・・・っ!」


〔なはははは!困惑してるね!?そりゃあするよね、オペレーターの仕事マニュアルには書いてないもんね!!───でもさ、カランコエのみんな。今その戦場には君たちの声が必要だと思うんだ。・・・頼むよ、カランコエの声は枯れないって評判なんだぜ?〕


「ッ・・・、了解!!・・・だそうだ、全員改良型拡声器を持て!妨害電波についてはジーナ教官に任せ、私たちは司令塔としての職務を・・・、職務を全うする!!」


「りょ、了解!!ほら、これ君の分!」



「え、ええぇぇぇ・・・!?」



・・・・・・・・・・・・



敵軍ノ防衛地点突破ヲ確認。個縮擬態ヲ解除。還元先、『女王』。標的『フロリス』ヘノ侵攻ヲ、再開シマス



──────



────────────

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