13話 俺も人のこと言えないんだけど
〔エネミーゾーン接近を確認。全部隊、後方へ三歩後退してください。〕
「「「了解。」」」
〔ローテーションスイッチ五秒前、後方の敵影確認次第所定の位置へ。〕
「「「了解。」」」
「すみません、十数匹逃がしました!」
「心配するな!こちら第三十九部隊、アント型十数匹のボーダーライン突破を許しました。別動隊の申請お願いします。」
〔了解しました、隊長は後方確認、各隊員は落ち着いて、前方の敵兵に集中してください。〕
「「「了解!」」」
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まあそんなこんなでフロリスの兵士たちが奮闘する一方で、俺はというとだね。宝探しだよ。物色ともいうかな。
「ふぁああっと、このビル何もなくて欠伸が出るぜ。それにまだ午前九時二十三分、どおりで。」
日差しは横から柔らかく、まだ朝の余韻を残しながら差し込んでいる。地面には散らばった書類数枚と寂しいコンクリートが照らされて、その上では埃が光に入ってくるか、あるいは出ていくかしながら舞っているだけだ。そんなのを欠伸交じりに眺めている俺は、要するに暇を持て余していた。大体アリ相手ならこんな高層に隠れて待ち伏せする必要もないしな。暑いから建物に入って、景色が良さそうだから登ってみただけだ。
「・・・『山間部の土地権の侵害その条件』ね。まあ寂しいタイトルだな、外の景色でも眺めてた方が楽しくて良さそうだ。」
土地権を古代兵器に主張して返してもらえるんなら世話ないぜ。四角くてノーマルなビルで宝探しなんかするもんじゃないな。なんとなく日の光に照らされていた書類の表紙を繰ってみたが、俺はすぐ立ち上がって踵を返す。風を辿って窓付近に戻り外を眺めると、ちょうど道路の奥に停まっているトラックに目が留まった。
「ありゃ結構最近の型だな。布が被せてあるけど、なんか中に入ってそうだ。・・・っし、見に行くか!暇だし!!」
乾ききった食料ならはずれ、銃火器なら大当たりだ。ご存じの天変地異の後に運ばれていた貨物だから、なんにせよこの時代にとって有用なものがしまってあるとは思うんだよな。フロリスに引き渡せば、手柄として少しは金が出る。真夏のゲウム寮にエアコンがあるかどうか、こいつは死活問題なんだ。近代化の進んだこのご時世にエアコン設置しないってのは、ある程度企業戦略が絡んだフロリスの方針なんだろうが、だからこそ俺はあのお高~い『ポータブル空調』を自腹で買って、ゲウム第七の部屋だけにこっそり設置してやるという夢があるのだ。俺は足早に、十七階から十六階に続く階段を下りた。
「やっぱエレベーターないと面倒・・・ああ、エレベーターね。」
一方通行だったら行けるのか。ふとそう思って、とりあえず窓から飛び降りてみた。
「よ・・・っと!!おお、こう見るとマジで高ぇなここ。」
真下、直下を見て口笛を鳴らす。植物のつるが頑丈で良かった。洒落にならないぐらい高いし、落ちたらただじゃ済まないな。風で身体が押される感覚も、心臓が直接訴えてくるみたいだ。
「でも思った通りっ・・・階段より楽だ。」
飛び降りて次のつるに掴まる。ちょこっとだけ背中の荷物が心配だが、あとは何ら差し支えないエレベーターだ。百八十度広がる景色も、ああ悪くない。
「にしてもすげぇ街並み」
地盤も劣化してるとはいえ、あの塔みたいのに関しては傾きすぎである。今にも倒れそうで見てるこっちがヒヤヒヤするぜ。まぶっちゃけ、俺も人のこと言えないんだけど。と、気を抜くとブラン教官の口癖がうつってしまっている。
「集中してさっさと降りよう、さっさと。」
そんでさっさとおりてみれば、六車線の道路は目の前だ。置き去りにされた道路、車も人も通らないから余計にだだっ広く感じるな。しかしまあガードレールを跨いでみて思ったのが、地面の状態が思ったよりひどい。なんだか分からない植物の根がコンクリを突き破ったり隆起したりで楽しくやってるし、地面のひびが想像以上に深刻だ。俺が通ってきた横道はそうでもなかったのに、この道路だけ大変な惨状になっている。
「もう交通には使えねぇな、可哀想に。」
ちょっとした戦闘か、大型古代兵器の通行でもあったんだろう。儚いな、こんなところでマニュアル通り車を走らせてみろ、即横転だ。それでも走り抜けたいってんなら、車輪をまっすぐに転がすのはあきらめた方が良い。要するに、滞りなく進めるほど整った道路じゃないんだ。こいつは。上から見たトラックの場所につくまでに、つまずきそうな石ころを七回は蹴とばした。
「うし、このトラックだ。」
コンテナに近づいたが腐臭もしないし、車体も重そうに沈んでいる。ちょっと高いボンネット、それにかなり大げさな身のこなしでに飛び乗ってみればもう気分は上々だ。あるいは最初からかも知れないが、知らん。
「うっひょー、わくわくで舞い上がりそうだぜ。・・・まぁ、舞い上がんねーんだけど。」
そうしてまたブラン教官じみた独り言を吐き、俺は小者感丸出しで上開きコンテナの布を掴んだ。
「さーて、中身は・・・?」───




