表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
93/111

オレの生き様はこうだ!~サブミッション~

「ちょ、ちょっとみんな、足速くね……?」

先に走り出したセイシルたちの後をオレは息を切らしながら走ってついていった。

「エリー、弱音吐くの早すぎ」

伴走するようにファイも走っている。

こいつ、もっと早く走れる癖にオレに合わせてやってる感を出してきてムカつく。



ようやく闘技場が見えてきた。

入口に目をやると、先程の治安部隊の女隊長がやや足を引きずりながら場内に入っていくのが見えた。

あいつの姿を見ただけで背筋が凍る。

あいつらの目的は王位奪取に関することかよ。





オレたちも入口に到着し、アーリェ側の決闘場に続く通路を通る。

入場ゲートから明かりが差し込んできた。

もう少しで目の前だ。

「待て」

ファイが片手を広げ、オレの体を制止する。

「エリー、これ以上は奥に進むな」

「は?なんで……」

正面を見ると、そこには血塗れになったサッちゃんの姿があった。



「え……?サッちゃん……?」

「どうした、エリー」

ファイにサッちゃんは見えていない。別の理由でオレを制止したのだろう。

「違うよ、お兄ちゃん。あれは蝕の精霊」

剣のサファイアからサッちゃんの声が聞こえる。

「蝕の精霊……。怪我しているのか?」

「違うよ、あれは今までの国王に浴びせられてきた血だよ」

サッちゃんの姿をした蝕の精霊は殺気を帯びた目でオレを見ている。

「お前は血を差し出すのか」

「決闘のことか?」

「我は王家でない者がこの国を治めるなど認めない。だが一方的に蛮族の血を祭壇に注がれ、命を握らされた。それが何十年何百年と……。我の王家を守る気高き力が、今となっては蛮族を蝕む力に変わってしまった。そしてその力が堪らなく愛おしい」

蝕の精霊は高揚して手を震えさせながら問いかけた。

「お前は血を差し出すのか」



「ファイ、これ以上は奥に進むな」

「自分が今その台詞を言ったんだけど」

「ここは想像以上にヤバい」

何もないところを見つめているオレの様子を見て、ファイは状況を察したようだ。

「……自分は別件でそれを感じて、エリーに話したんだけどね。では、ここは一旦引こう。今この場はアーリェとセイシルたち近衛兵に任せて別の対応に回ろう」

踵を返し、オレとファイは来た道を戻った。

妹の顔であんな姿にされるなんて、オレも見ていられない。

「お前は血を差し出すのか」

蝕の精霊は追いかけてこないが、こちらを見てずっとその言葉を繰り返していた。










一度、入口に戻ってきたオレたちは今後の対応を考えた。

「危なかったぜ。蝕の精霊がいた。オレたちも決闘の申し出に加えられるところだったわ」

「自分たちは精霊の契約について詳しく把握してないからね。アーリェの方が対処出来るだろう」

「で、お前は何で引き返そうとした訳?」

「決闘場に治安部隊が一人いたんだ。見たことがない機械のようなものを持った男で、隙も全くなかった。あれは得体がしれないと思ってね」

ファイがそういうくらいなら、相当ヤバい男だったんだろうな。


「さっきの隊長も、見たところ風魔法を使い続ける魔力はないみたいだね。あの隊長が時間稼ぎをしてたから、先程の男が指揮官でそれ以上の実力者なんだと思う」

「なるほどな。じゃあ治安部隊はそいつ入れて3人か」

「おそらくね。大人数で他国に現れたら国レベルで問題になるし、他国でこれ以上武力行使するのも問題。それにしても奴らはどうやってここまで来たんだろうね。風魔法でサース王国から飛んでくるには距離があり過ぎる」

「普通なら馬車とかじゃねえの?」

「そうだね。サースの馬車だと目立つから隠れて留めたいけど、今日は馬車の数が多くてそんな場所がない。さらに今、避難している観客のうちには、競馬を諦めて安全のために帰るって人もいるだろうね。なかには治安部隊の存在を恐れて遠くへ逃げたいって人もいる」



こういう言い方をするってことは……?

馬や馬車の数が多くて、管理をするって名目で商売をやってる奴も出てきている。

そいつらは他の人に馬を勝手に売りつける可能性がある。

今度は売る馬がなくなって、管理していない人の馬を強奪するかもしれない。

サース王国の馬車を強奪させたら、治安部隊は帰る手段を無くしてしまう。



「正門で馬の商売やってる奴らにサース王国の馬車を奪わせて、他人に売らせるってことか」

ファイは両手を口元に当て、驚いた様子でオレを見つめた。

「やだ、すごい。サース王国の馬車を売り飛ばすなんて悪行までさせるとは」

「なんだよ、違うのかよ」

「いや、合ってるよ。売り飛ばすことまではさせなくて良いけど。サースの立派な馬車が奪われたら従者が治安部隊に報告するだろうね。そしたら馬車を取り返すためにクライルから引き上げざるを得ない。ただ馬車の管理をしているのは、あのサースの従者だ。あの輩じゃ頼りないよね」

「じゃあ、どうすんだ」

「エリーの演技の見せ所だ」








正門前まで引き返すと、案の定、バナナの叩き売りのごとく馬の叩き売りが行われていた。

「ハイハイハイ、今なら上等な馬が揃ってるよ!後から来たってもう遅い!今しかないよ!」

人ん家の馬を平気で勝手に売りさばいてやがる……。

「ねえ、あんたたちに馬車預けてたじゃない。どこにあるのよ」

自国へ帰ろうとしている女が輩を問い詰めた。

「もうねえよ。馬車がいるなら買い直しな」

あざ笑いながら輩たちは叩き売りを続けている。



馬や馬車は3人の輩たちに一か所に集められている。

となると、集められていないのが輩たちが手に入れられなかった馬車だ。

であれば、探すのは早い。



「クライル兵と間違えられると面倒だから、一度防具は外してね」

確かにそうか。

防具を外し、近くの建物の陰に目立たないよう隠した。

「エリーは治安部隊の馬車らしきものがないか探しておいて。自分はレイノルドに一言伝えておくよ。自分たちの姿が目に入ったら、心配して駆けつけてくるだろうし」

「分かった」

ファイがその場を去り、オレは辺りを見回した。


輩が奪えなかった馬車は、殆どが上等なものだった。

それもそうだろう、あんな輩に馬車を預ける訳がないし、上等ということは貴族や王族のものだと判断するからだ。

探す中で、治安部隊の腕章と同じものをつけた人がいた。

若い青年で華奢な体をしており、戦闘には向かないような体格だった。

おそらく、あれがそうだ。




「エリー、見つかったか」

「ああ。多分あの腕章つけた奴の馬車がそうだ」

戻ってきたファイにオレは説明した。

「レイノルドは納得したか」

「渋々ね。何かあった時は助けてもらうように頼んだ」

あの性格だ。今からすることに後で説教されるかもしれない。

「よし、じゃあ行こう」






オレとファイは輩に近づいた。

「ねえ、お兄さんたち。私たち馬車が欲しいんだけど」

オレはやや内股且つ上目遣いで話しかけた。

エリオットの全顔面美少女パワーとパーフェクトキュートボディをぶん回して誘惑している。

「へえぇ……」

輩たちは足元から顔まで嘗め回すようにオレを見ていた。すっげえ気持ち悪い。


「私も疲れてて、ちょっとドジして返り血浴びちゃったし。早く帰ってお風呂に入りたいのよね」

ファイが流し目をしながら返り血を浴びたジャケットを肩まで下して、シャツの首元を引っ張り肩が少し見えるようにした。

ドジして返り血って、何言ってんだお前。アサシンか。

しかし輩たちはそんな言葉は頭に入っていないようで、息を荒げている。



「馬車を売るのは別にいいけどよぉ。ちゃんと金あんのか、お姉ちゃんたち」

「あんまり持ってないの」

「じゃあ、どうすればいいか分かってるよなぁ?」

「どうするの?」

「いちいち説明しねえと分かんないのか?」

輩の一人がオレの足に手を伸ばそうとしてきた。

「教えてくれないなら、もういい!」

ぶりっ子のごとくオレはプイッと顔を反らし、輩たちに背を向けてその場を離れた。


「あーあ。あの子言い出したら聞かないんだから。私は別に貴方たちの相手しても良いんだけど、あの子が一緒じゃないと嫌なの。あの子もいれば二人で相手出来るんだけどね」

ファイがオレに手を伸ばしてきた輩の指先に、自分の指を少し絡める。

輩たちの想像力が掻き立てられ、一層気持ち悪い顔で話し合いをし始めている。

それにしても、ファイはどこであんな手法覚えてくるんだよ。

実はモテてて、そうやって女から言い寄られてきたとか?

あの性格でモテたら、この世界の倫理観は終わってるぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ