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オレの生き様はこうだ!~勝手な相棒~

言葉が出なかった。

オレまで頭が真っ白になった。

どうすんだよ、どうすんだよ、どうすんだよ。

ミッションは?リカーラが裏切った?アーリェがここから離脱するのか?

状況が理解できない。




「何よ、どうなってるの?嘘よ、噓でしょ。だってリカーラは今、関係者別室で控えてて。え、今から決闘?」

笑っているのか泣きそうになっているのか、混乱して表情がぐちゃぐちゃなアーリェが頭を抱えている。



「しっかりしろアーリェ」

ファイがアーリェの両肩を掴んで向き合った。

「王のお前が取り乱してどうする。呼吸を整えて気持ちを落ち着かせろ」

「そ、そんな状態じゃ」

「ゼインなら、俺と同じことを言ったと思う」

「ゼイン……」

アーリェはゆっくりと深呼吸した。

「王であるアーリェが最優先にすべきことは何だ」

「王位奪取の決闘を受けること」

「今、お前の代わりに玉座に座っているのは誰だ」

「……アリリ」

「他の人間にはアリリがアーリェに見えている。リカーラが本当に決闘を申し込んだなら、相手が子供のアリリだと分かっている。戦闘に慣れてないリカーラでも勝てる」

「アリリが!アリリが危ない」

「今すぐお前は闘技場に迎え。アリリを守るんだ」

「分かった……でもこの計画も大事。あたしがいないと計画が進まない」

「それはエリーと自分で何とかするよ。ね、エリー」



完全に放心状態で二人の様子を見ていたので、急に振られてリアクションが取れなかった。

「エリオット?」

「んあっ!?え!?」

不安そうにオレを見つめるアーリェ。

そうだ、そうだよな。こんな状況で一番訳分かんなくなってるのはアーリェだもんな。

オレが余計に助長させてはいけない。

対等に勇気づけるんだ。

「おうよ!任せろ。ファイをうまいこと顎で使って計画を成功させてみせるぜ。それよかアーリェはアリリを迎えに行けよ。あの子、気持ちをうまく伝えるのが多分苦手なんだよ。本当は今も心は泣き出したくて、逃げ出したくて堪らないと思う。アリリを安心させてやってくれ」

オレはアーリェに拳を突き出した。

情けないが、拳は少し震えている。

「アーリェ、これはインフォーマル握手というらしい。頭がおかしい頃のエリーが名付けた」

「空気読めバカちょっと黙ってろ」

キョトンとしていたアーリェが、しっかりとオレの目を見て拳を合わせた。

「任せたよ、エリー」






「で、どうするんですか宰相サマ」

アーリェを見送り、セイシルたちの方を見ながら問いかけた。

先程の拡声器の案内後、観客たちの一部は闘技場に向かおうと動き出し、人が雪崩のようになっている。

セイシルたちは流されまいと何とか踏ん張っているようだが、彼女も先程の内容を聞き、表情はかなり困惑している。

「早く行ってあげないとヤバいぞ。てか、もうこの雪崩状態なら接近して会合の提案をする余裕なくね?」

「そうだね。混乱に乗じて手っ取り早くロードンだけ確保した方が良い。ただ治安部隊が厄介だ。資産家が雇うような兵士とは段違いの強さだからね。あとサース王国所属の兵士でなくて、サース国王の直属軍だから、万一身元がバレたら致命的。セイシルも治安部隊と戦えば、それはサース王国を敵に回したも同然になってしまう」

「でも接触は避けられないだろ。ロードン確保もすんなり出来るとは思えねえ」


ファイは表情を曇らせつつ、口を開いた。

「自分が無名の一剣士を演じて治安部隊に切りかかる。セイシルはロードンを安全なところへ避難させる形で確保し、恩を売って後で経済不干渉の契約を取り付ける。エリーは周囲の人が戦いに巻き込まれないように避難させる。これで行こう、プランCだ」

「お前、二人相手にやれるのかよ。客を大方避難させたらオレもちょっとは手伝う。まあ、避けまくるだけかもしれんけど。それにお前がやられちゃったらフィル王国も困るだろうが」

「いや、ちょっとは大丈夫だと思うよ」

クスッと笑いながらファイは俯き、胸当ての防具を外した。

「さっきアーリェに活を入れたエリーを見て、ちょっとは成長してるな、と思ったんだ。エリーだって怖がってるのに相手の事を思いやって言葉にした。自分がいなくてもエリーはちょっとは大丈夫だよ。他の人からのフォローが必須だけどね」


「……何考えてるんだ」

「言えない」

「言えよ」

「言ったら、顔に出るだろ」

「出さねえよ。ちょっとは大丈夫になったんだろ」

「……今回の行動は自分が単独で起こした事にする。そうすればフィル王国もクライル国も守れる」

「……ふざけんなよ、テメエ!」

ファイの胸倉を掴んで顔を上げさせた。

「ほら、顔に出た」

困ったようにファイは笑っていた。





「そんな形で守られたくねえよ。頼んでもねえよ」

「守る守る詐欺だって言ってたじゃないか」

「その後は、どうすんだよ。お前はもういなくなるって事だろ。オレを守る支えるって言ってたクソ野郎は誰ですかねー?」

「事情が変わったし、エリーは守られなくてもやっていけるさ」

「知るかよ。ていうか、オレの願いは結局聞いてくれないのか」

覚えていないのか、怪訝そうな表情をしている。

「一番近くで、オレが抗ってフィル王国を存続させる未来を見ててくれって頼んだだろうが」

「……あったね、そんな事」

「あれはお前の協力があってこそ成し得るもんだろ。お前もオレの成長を見届けつつ、そんな未来も見たいだろ。ここで一人で勝手に終わってんじゃねえよ」

オレはファイの胸倉を離した。

「お前の言うことなんて聞くか。いいか、ここまで来たらオレもお前もどっちかが欠けてもフィル王国は終わりだ。どっちも生き残る。どっちもフィル王国に帰る。レイノルドが待ってんぞ」

「エリーの身に何かあれば、そのレイノルドに自分が殺されるんだけどね」

「だったら無茶するオレの事見捨てんなよ、相棒」

「……相棒にしては、エリーは心許ないけどな」

諦めたようにファイは身なりを整えた。





ミッション成功までに立ちはだかる最大の問題。

治安部隊である。

ファイですら二人相手をするのは厳しい存在。魔導士兼務もいるかもしれない。

相手も防御魔石は装備しているはず。

となれば、やはりこちらの切り札はサッちゃんだ。



「サッちゃん、起きてくれ。大事な話があるんだ」

オレは腰に携えた剣を抜き、サファイアに向かって何度も呼び掛けた。

「頼むよ。後でダンシング高い高いをしてあげるからさ」

「ホント!?」

にゅるっとサファイアからサッちゃんが顔を出した。

「あれ?お兄ちゃん、お姉ちゃんになっちゃった?」

「これには事情があってね……。それより心配したよ。どうして出てきてくれなかったんだ」

「ごめんね。ここ、蝕の精霊がいるから。ちょっと苦手なの」

クライル王家を守る精霊のことか。精霊も相性があるって言ってたもんな。

「辛いよな。ごめんね、そんな時に呼び出して。でもお兄ちゃんたちピンチなんだ。サッちゃんにお手伝いしてもらいたい」

「……うん、分かった。そっちの元お兄ちゃんも困ってそうだもんね」

「ファイ、お前のこと元お兄ちゃんって呼んでんぞ。ウチのかわいいサッちゃんが」

「そうか。後でそっちの元お兄ちゃんによるダンシング高い高いを見せてくれ」



サッちゃんに状況を説明し、蒼玉魔法で出来ることについて確認した。

「相手も魔石を持ってると思うんだけど、その発動を止めることは出来る?」

「それは出来ないの。サファイア王家が必ず発動するように魔力を込めてるの。えーと、発動するように契約してるっていう感じに近いのかな。約束破っちゃダメだから」

ファイにも伝えると、少し考えた様子で口を開いた。

「発動するタイミングと時間は操作出来るか?」

「出来るよ。でも必ず一度は攻撃を弾かないといけないけどね。あたしが直接いじるといえど、そういう約束だから」

再度ファイにその内容を伝える。

「なら勝算はある」

頼もしい、薄ら笑いのファイが戻ってきた。





そんなこんなで時間を少し費やしてしまい、競馬場入口付近の群衆雪崩はやや落ち着いていた。

ただ人混み自体は解消されておらず、雪崩が起こったことによる混乱も続いている様子。

「今ならまだ混乱に乗じて切り込む手は使えそうだ」

「頼むぜ、作戦通りな。失敗すんなよ」

「その言葉、そのままエリーの顔面に擦り付けるよ」

「美少女に対する台詞とは思えねえよ。じゃ、始めるか。プランDだ!」

ファイが走り出し、目で追いかけるのも精一杯な程の速さで客の隙間を縫うように、セイシルたちに近づいていった。

「オレたちもミッション開始だ。行くぞサッちゃん」

「うん!」

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