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オレの生き様はこうだ!~大層な自信~

まずは今日の観客の入り具合を確認するためロードンは競馬場に現れる。

セイシルがクライル国正門で出迎えて競馬場入口を通り、関係者入口までロードンと護衛2名を案内。競馬場に裏口はなく、観客と同じ入口を通る必要がある。

大多数の観客がいるため、ロードンを通す道を開けろと言っても声はかき消されるだろう。黙々と人混みを潜り抜けないといけない。

競馬場入口まで近づいてきたら、観客に扮したアーリェが接近。ロードンに護衛なしでの会合を提案し、護衛を引き剝がす。


会合に同意した場合、護衛はセイシルと近衛兵たちが監視し、アーリェはロードンを連れて競馬場内の関係者別室で先に待機していたリカーラと合流。そこで経済不干渉について『サース王国のロードン』名義で契約を交わし、サース王国にも経済不干渉の釘を刺す。エリーとファイは契約が終わるまで部屋の外で待機し見張りをする。

会合を拒否して戦闘が発生した場合、先にアーリェとセイシルはロードンを確保。近くで待機していた近衛兵たちとエリーとファイで護衛を取り押さえる。取り押さえたらエリーとファイで適当にチャンバラして、全員でその場を引き上げる。観客には競馬前の余興のようなものに見せる。そしてロードンを連れて競馬場内に入り契約を交わさせる。

隊長以外の近衛兵は『隊長の指示で動け』としか聞かされておらず、今回の計画について詳細は把握していない。





「……という感じで実行していく」

あっそうだった、とアーリェが続ける。

「ウチの兵士にはクライルの紋章が描かれた防具しか支給してなくて、服装は自由なんだ。ファイとエリーの防具は後で貸しとくよ」

剣を持っているとはいえ、オレにとっちゃこの格好は丸腰みたいなもんだからな。借りておこう。


「何か質問は?」

ファイが手を挙げる。

「アーリェが動いている間、女王不在になるがアリリに頼むのか」

「そうね。影武者やってる時は、いつもはリカーラが傍で助けてくれるけど、今回は傍にはいられないから一人で頑張ってもらう。酷だけど計画はさっさと終わらせるつもりだよ。あ、リカーラとセイシルはチョーカーの事知ってるから大丈夫。エリーは質問ない?」

「近衛兵たちは武術で戦うって聞いているが、魔法は使えないのか」

相手が魔導士である可能性もある。防御の蒼玉魔法があるとはいえ、魔導士の攻撃魔法もあった方がいいかもしれない。


それは私が、とセイシルが口を開いた。

「使える者もいるが、今回は緊急時だけとしている。観客を騒ぎに巻き込む訳にはいかないからな」

「あんたらが装備しているサファイアの魔石自体、魔法以外でも抵抗してきた護衛から攻撃されれば防御魔法が発動するぞ。騒ぎになるし、相手も躊躇いなく魔法を使ってくるかもしれない」

「抵抗された時こそが緊急時だ。貴方たちは周囲の観客にこの場から距離を取って離れるように指示し、戦闘できる広さを確保する。相手も魔石を装備しているだろうが、防御魔法は攻撃されたうちの一方面にしか張られない。兵士たちで相手を囲むようにして一斉に魔法で攻撃する。無論、私も魔法が使える。それで取り押さえた後は先程の計画通りだ。客も見世物のために場を空けたのか、と理解するさ」

それ、訊かないと教えてくれなかったのか?

知らないままだったらミスしそうな内容だ。

信用されてねえってことか。



「じゃあ、それがプランBだな」

そうオレは名付けた。

「後は大丈夫かな?時間も近づいてくるし、セイシルは二人を武器庫に案内して防具を貸してあげて。あたしはリカーラと契約書について再確認しておくから、また後で」

おいおい、大丈夫かよ。この隊長に任せて。

オレたちに危害加えたりしないのかよ。





オレとファイは武器庫に通された。

さすがクライル国。今は武術中心で使われてないだろうが、様々な武器が揃っている。

大剣から短剣、ファイのようなレイピア、槍や弓矢などなど。

銃は見当たらなかった。やはりこの世界にはないのかもしれない。

「防具はここだ。好きに使うといい」

胸当てや腕当てなど、種類豊富に揃っている。動きやすいように重くないものも多い。

でも、どれが良いのかよく分からん。

「エリーは胸と腕と足に着けた方がいい。出来ればヘルムもあると安心だが、ちょっとそれは……」

今の姿に防具を着けてみた姿を想像したんだろう。腹を抑えて笑いを堪えている。このクズ野郎。

「でも、ヘルム以外は着けてね。身を守るために必ずだ」

「へいへい。お前はどうするの?逆にヘルムだけ着けるの?」

「自分は胸だけでいい。女装を誤魔化すためにね」

大層な自信だ。でもそれだけ戦闘経験があるから言えるのかもな。

オレは素人だから分からんし、ファイが死ななければ、それ以外の防具の有無は自己責任だ。


「大層な自信だな」

オレの心でも読んだかのように、セイシルが鼻で笑った。

「ご存じの通り、自分はあのアーリェの友だからね。嫌でも腕に自信はあるのさ」

ヤバいって。お前、こいつ煽るなって。

レザーグローブ見ただろ。あれで頭をぐりぐりされたら何か出てきちゃうって。

「貴方はやはり王の友人だね。さっき初めて会った時から全く心が乱れていない。私の物言いにも動じず対応するなんて尊敬するよ」

「それは光栄だ。セイシルもアーリェに憧れてクライルに入隊したんじゃないのか」

「ああ。あの方が王となられた時、雷でも落ちたような衝撃だった。私と同じような衝撃を受けた者は多くて、入隊志願時は定員超過で争奪戦だったさ」

セイシルは穏やかに話を続けている。

なんだ、あの不穏な空気はファイを試していたのか。

「自分は戦闘には慣れているけど、エリーはまだ戦闘は浅くてね。その辺りは理解してもらえると助かるんだが」

「そうなのか。ではエリーにはその都度で後方支援をお願いするよ」

え?ホント?

やったー!戦闘は避けられるかもしれんぞ。







防具を装着し、オレとファイ、アーリェと数名の近衛兵は競馬場入口から離れたところで待機していた。

セイシルはロードンを出迎えに一足先に移動しており、オレたちはセイシルが現れるのを待っていた。


あと気になる点は、今日はまだサッちゃんを見ていない。

一人でいる時に剣のサファイアに声をかけても反応がない。

お昼寝してるのかな。かわいいからお昼寝くらいするよな。


「そういや、アリリは大丈夫そうか?」

アーリェに確認した。

感情をあまり出す子じゃないようだが、まだ子供だ。今回は不安に感じているだろう。

「大丈夫。あたしの代わりをするのは初めてじゃないし、すぐに戻るからって伝えてる」

「怖がったり不安がったりしてなかったのか?」

「いつも通りだったよ。『分かりました』って言ってた」

「二人とも、セイシルが来た」

ファイが遮り、競馬場入口の辺りを見るとセイシルの姿が見えた。

その後ろに、遠目から見ても分かるような、上等な生地で作られた赤いコートを羽織った、小太りの男がいた。

絶対あれがロードンだ。

その両脇に護衛と思われる者が付き添っている。

血のように真っ赤な腕章をつけ、軍服のようなものを纏い、腰には剣を携えている。

……どこかで見たような格好だ。



「ちょっと……。あれっていつもの護衛と違うんだけど」

戸惑うアーリェ。

「まずいな。相手が悪すぎる」

初めて見る、焦りを隠しきれないファイの顔。

「サース王国の治安部隊だ」





治安部隊ってサース王国の国内を守るだけじゃねえのか?

あんな資産家一人にわざわざ護衛として派遣されてるなんて、あり得るのか?

疑問が次から次へと湧いてくる。



「火急の伝令!セイシル隊長は……まだ動けないのか」

顔を真っ青にした近衛兵が駆けてくる。

「どうしたの」

変装したアーリェに気づかないまま、近衛兵は動揺しながら続けた。

「王位奪取の決闘が申し込まれた。申し込んだのはリカーラ様だ」



「……何だって。もう一度言って」

「リカーラ様が闘技場に来られ、アーリェ様に王位をかけて挑むと申し込まれたとのことだ」

「……嘘でしょ嘘でしょ、そんなバカな。あり得ない」

引きつった笑みを浮かべてアーリェは繰り返し口にする。

そんな中、突如拡声器を使ったような音声が聞こえてきた。



『本日はクライル競馬場にお越しいただき、ありがとうございます。只今、王位奪取の申し込みがありました。あのアーリェ女王に挑む自信がある者です。さぞ見応えがありましょう。競馬開始まで、まだまだお時間がございます。遠くからお越しの皆様にも是非見届けていただき、その後競馬をお楽しみいただければ、と存じます。今日は皆様にとっても素晴らしい一日となるでしょう。これより決闘準備に取り掛かりますので、今しばらくお待ちください』

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