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オレの生き様はこうだ!~美少女爆誕~

ファイのことを考えてもしょうがねえ。

今、あいつはアーリェとフィル王国のために動いてんだ。

その事実があれば、他はオレには関係ない情報だ。




3日後に向けて、オレとファイは訓練場で武術の動きを磨いた。

マスオたちには「基礎体力を上げるため」と説明しておいた。

ファイも専門という訳でないので、旅芸時の復習のようなものを繰り返した。



「当日は向こうの案内でこっそり入国する訳だろ?レイノルドはどうするんだよ。もういい加減話せよ」

訓練の休憩中、ファイに投げかけた。

「自分が当日レイノルドに説明する。多分、今回自分とエリーが別の目的がある事は感づかれてる」

「はあ?じゃあ、阻止されるだろうが」

「だから逆に守ってもらうのさ。感づかれてないフリをして、断れないような頼み事をするんだ」

「感づかれてないフリ、ね」

つまり嘘を見抜かれていると分かっているのに隠し通すのか。

「……その顔はフリが出来ない顔だね。やっぱ当日で」

「うるせえ。正直者なんでな」

「正直さをうまく使いこなしてくれるとありがたいんだけど」

「はいはい、分かりましたー。善処しまーす。よし、そろそろ続きしようぜ。お前サンドバッグな!」

「知らない言葉を使って貶してることは分かったよ」

苦笑しながら、ファイはゆっくりと腰を上げた。






ミッション当日。

なかなか寝付けなかったが、寝てしまえば夢も見ず、起きることもなくスヤスヤ寝ていた。

緊張ではなく、訓練のし過ぎで疲れて寝つきが悪かったのかもしれない。

よし、メンタルは概ね回復しているようだ。


さて、改めてざっくりと流れを確認。

資産家はロードンというおっさん。護衛は高い報酬で雇ったエリート兵を普段は2名連れている。サース王国の兵士のため魔導士と兼務している可能性あり。

まずは宮殿内に裏口から入り、アーリェと合流。ミッションの事を知っている大公と近衛兵隊長の2名にだけ、オレとファイの身元は隠したうえでアーリェが信頼する友人として今回女装して参加すると説明。

午後1時頃にロードンがクライルを来訪。それまでの間に地図を使いながらアーリェとミッション内容を確認する。

ぶっつけ本番な感じだが、アーリェやファイの様子からして、その場でミッションを確認して実行するのはよくある事なんだろうな。




そして今回のミッションで個人的に戦闘の次に嫌なこと。

女装である。

リルトゥが、ここ数日化粧品や洋服を探しに他国まで買い出しに行っていたとは聞いていたが、気合が入りすぎている。

というか、目が血走っている。



まずは万全の体調で出掛けられるようにオレとファイとレイノルドに聖魔法を施す。

肌がモチモチになった。

レイノルドはモチモチというか、肌の質が良くなった。いわば肌年齢がマイナス5才は若返った。

「で、では、エリオット様から、おめかししましょうね……?」

リルトゥの息が荒くなり、手つきが妙にいやらしくみえる。

や、やだ、オレ……女の子になっちゃうッ!




「出来ました……!」

鏡に映った姿に、我ながら見惚れてしまった。

金色の髪には左側に一束の小さい三つ編みを作り、残りの髪と一緒に耳に掛けている。そこにバレッタも挟んでアクセントになっている。

化粧はブラウンのアイシャドウをほんのり入れており、元々目がぱっちりしているエリオットの良さをうまく引き出している。睫毛も元よりバッサバサなので、マスカラは軽め。

口紅は愛らしいピンクでツヤ感もある。

服装は丸襟の水色のブラウスにキャメルのショートパンツと黒いレギンスの組み合わせ。

どうみても美少女である。マジでかわいい。

なんならオレがオレに惚れそうだ。

後でスカートも履いてみたい。

エリオット、お前が元から美形で助かったわ。

マスオなんて「眼福……感謝……我、享受……喜、即死……」と呪文めいたこと言って泣いて感動している。




ファイはというと、長い水色の髪は首の後ろでお団子を作り、後れ毛をゆるく巻いている。

アイシャドウは淡いパープル系を使っており、髪の色に馴染んでいる。

ベージュの口紅を塗ることで顔全体が自然な印象だ。

服装は白いシャツにグレーのショート丈のジャケット、黒のワイドパンツを履いている。首には水色のストールを巻いている。

よく知らんが、バリキャリってこんな感じの見た目の人と思う。

こいつは競馬狂いだけど。


ちなみにレイノルドは全力で拒否した。当然だ。

レイノルドまでこんなことしたら、素直にコメントに困るぜ。



準備も整ったところで、オレたち3人は馬車でクライル国へ向かった。

距離が近づくにつれて、徐々に少し緊張してくる。

3時間ほどで馬車に揺られて到着したが、長いような、短いような、そんな感覚だった。








クライル国の初見第一印象。

むさ苦しい。

特に今日は競馬の景品が豪華なだけあって、観客もいつもより実際に多いようだ。

国の正門前から既に人混みが永遠と続いている。ざっと見た感じ、男の観客が多い。

近衛兵は女が多いと聞いていたが、門番も女であり、男たちがナンパしまくっている。

もちろん、門番は毅然として相手にしていないが。

男が多いのは、こういった目的もあるのかもしれない。



そんな客入りのため、正門前は馬や馬車も溢れかえっている。

「これだけの人だ。国内に馬車を止めるところがないんだろうね」

周囲をよく見てみると「盗られないように見張っておくから」といって商売を始めている輩もいる。


「ここで信用ならない輩に馬車を預けるのは危険だ。ましてや王家が使用している上等な馬車だから民が使っているものとは違う。商売している奴らが高額で売り飛ばさないか心配だね。帰る手段もなくなる」

少し考え込むような仕草をして、ファイが顔を上げた。

「レイノルド、申し訳ないが馬車の管理を頼めるか?」

「ですが、護衛が……」

「自分がついているし、エリーも自分自身の事はそれなりに守れるよ」

オレも頷いて答える。

「……危険な事だけは絶対にさせないでください、ファイローネ様」

鋭い目つきでレイノルドは釘を刺した。



アーリェのところまでは案内してくれる奴がいるとの説明だった。

しかし、これだけの人混みの中で赤いチョーカーした奴を探すったって……。

「青と金の二人組……ファイローネか?」

最近聞いたような声がした。

声がした方を見ると、民に変装したアーリェが立っていた。

首には赤いチョーカーをしている。

「なんだ、あんたが来るのかよ」

「こっちだ」

妙に素っ気ない態度だ。だが、ここでそれを確認すると騒ぎになるかもな。

今は黙ってついて行こう。





迷子にならないように人混みを潜り抜け、宮殿に辿り着いた。

宮殿というには、あまりにも老朽化しているように見える。

外壁があちこち黒ずんでいる。

しかも、いくら落としても落としきれないような、独特な臭さが微かにある。

もしかしなくても、この黒ずみは今まで流れてきた血、なんだろうな。



裏口から案内され、玉座の間でアーリェが待っていた。

自分も潜入ミッションをこなすからか、ノースリーブにハーフ丈のパンツを合わせた姿をしている。

「無事に来てくれたね。改めて今回はよろしく頼む」

チョーカーをつけた方のアーリェが玉座に近づき、頭を垂れる。

「アリリ、ありがとね」

チョーカーを外すと、服装はそのままに、アーリェとは全く違う女の子が現れた。

「えぇっ!?どういうことだ」

「公にしてないんだけど、クライルの精霊との契約で使える魔法なの。このチョーカーはあたしの血を染み込ませた糸で作ってて、詠唱してチョーカーをつける。するとこの血液が魔法になって空気中に散布して、それを吸い込んだ相手はチョーカーをつけた人があたしに見える」

幻覚を見せるような魔法か。でも血を使うって辺り、クライルの歴史を想起させる。

「で、この子はアリリ。孤児だったから、あたしが保護者になって名前つけて育ててる。時にはこうやって影武者を頼んでるけど、まだ半人前かな」

肩まで伸ばした栗色の髪を揺らし、アリリは俺たちに深く一礼した。

クレアよりも年下に見えるな。本当にまだまだ子供だ。



作戦会議のため、大公と近衛兵隊長も玉座の間に呼ばれた。

「紹介しよう。こっちが大公のリカーラ。あたしが即位する前からクライルに仕えてる」

リカーラは40代くらいの女で、礼服をきちんと身に纏い清潔感がある。体格も年相応で戦闘は出来ないようだ。

「大公をしております、リカーラと申します。この度はご協力ありがとうございます」

オレたちに丁寧に一礼した。

「その隣が隊長のセイシル。あたしが即位してから入隊して、今は隊長やってる」

対照的にセイシルは20代くらいの覇気ある女で、手足と胸に防具をつけただけのシンプルな装備故に、背丈の高さと筋骨隆々な体が印象に残る。装飾のついたレザーグローブをつけており、あれで殴られたら、ひとたまりもなさそうだ。

「近衛兵隊長のセイシルです。部外者の貴方たちを巻き込む形になり、申し訳ない。戦闘で頼る事はないと思うが、確保のために協力をお願いしたい」

実力を自負している事をハキハキと語るため、オレとしては頼もしい。だが、どこか言葉に棘を感じる気がする。




「この二人はファイとエリーだ。あたしの昔からの友人で、ロードン捕まえるのに協力してもらうことにした。男だけど女装して紛れてもらう」

「ファイだ。よろしく頼む」

「エリーだ。よろしくな」

身分を隠すためとはいえ、自分でエリーなんて呼ぶのは気持ち悪いな。

「それじゃあ、今回の計画を説明するね」

アーリェが近くのテーブルに地図を広げ、それを囲むようにオレたちは移動した。

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