オレの生き様はこうだ!~困惑~
早く、早くアリリの元へ。
ひたすらにアーリェは走り抜けていた。
さっき、混乱して何も理解できなくて、頭がどうにかなりそうだった。
ファイがいてくれて良かった、と彼女は心底感じていた。
走りながらも、再度状況を整理した。
計画が始まる前、ロードンと交わす契約書の話をリカーラと改めて行った。
クライル国に関わる事は金輪際干渉せず、他の者を介して関わる事も禁ずる。
そういった内容の契約書とする事でお互い納得した。
その後、リカーラとは宮殿で別れた。お互い持ち場に移動するために。
この時、実際は競馬場には向かわず、闘技場に向かったということか。
リカーラは何か懸念点があれば遠慮なく申し出るタイプだ。
今回もリカーラの意見を聞きながら進めてきた。
アーリェには彼女が反旗を翻す理由が見つからなかった。
どうか、何かの間違いであってほしい。
今のアーリェには祈ることしか出来なかった。
息を切らしながらアーリェは宮殿に戻り着いた。
「アリリ!」
玉座の間に入るが、もぬけの殻だった。
彼女が言いつけを破って玉座の間を離れることはあり得ない。
決闘の申し込みは事実だ。
「アーリェ様?先程闘技場に向かわれたのでは?」
宮殿の警備兵が驚いた様子で声をかけた。
アリリはチョーカーをつけているので、警備兵含め他の者にはアリリがアーリェに見えている。その反応は当たり前だった。
「不足していたものがあったから一旦戻ったんだ。悪いんだけど、あたし久しぶりに決闘挑まれたから、ちょっとびっくりしてボーッとしちゃって。あんまり状況覚えてないんだ。説明してくれない?」
「そうでしたか。無理もありませんね。申し込んだのはリカーラ様でしたから」
その名前を聞き、申し出の相手も事実だったとアーリェは心を痛めた。
通常、決闘の申し出をする際は闘技場の門番に伝え、門番が近衛兵隊長に報告、隊長から大公、大公から国王へ、という流れで報告。闘技場と国王の準備が整い次第、すぐにでも決闘開始となる。
たとえ外交で国王が国外にいたとしても、申し出があれば国に戻らなければならない。他国はそれに口を挟まない。クライル国の呪いのような歴史を考えれば、火の粉は降りかかりたくないものである。
今回、リカーラが直接闘技場に現れ「アーリェ様に決闘を申し込む。決闘の準備に取り掛かれ」と門番に伝えた。門番は近衛兵隊長に報告しようとしたが、ロードンの応対中。報告不可能と判断し、玉座の間にいるアーリェ、実際は影武者のアリリに報告したとのこと。
アリリはかなり困惑した様子だったが「隊長にも、申し出があった事だけは報告して」と命令した。その後、アリリも闘技場へ移動した。
門番は闘技場の準備があったため、別の警備兵に伝令を依頼。警備兵が競馬場前で待機していた現場の近衛兵に伝え、その近衛兵が隊長への報告を断念したところでアーリェの耳に入ったのだった。
アリリはショックを受けたに違いない。
今まで傍で助けてくれた者から命を狙われるなんて。
まだ、あんなに小さいのに。
「そうか、そうだったか。説明ありがとう」
玉座の間を後にし、アリリと代わって決闘を受けるため、リカーラに会って事情を聴くため、アーリェはすぐに決闘時の戦闘服に着替えた。
今、どうなっているのか。
よく分からないまま、雰囲気に流されている。
「アーリェ様、こちらでお待ちくださいませ。準備ができ次第、お声かけいたします」
近衛兵に闘技場の一室に通され、アリリは困惑していた。
ロードン確保の計画が終わるまでの留守を頼まれた。
いつもはリカーラがいるが、そのリカーラも計画の実行に携わるため今回はいない。
少し不安だが、留守番には大分慣れた。
ちゃんと留守番が出来れば、アーリェもリカーラも、他のみんなも褒めてくれるに違いない。
そう、思っていたのに。
何で、今、自分はここにいて、リカーラと闘わなくてはいけないのか。
でも、留守番はしなくては。
『万一、何かあたし宛の大切な報告が入ってきたら伝令使ってセイシル宛ってことで報告して』
アーリェが宮殿を離れる前に言っていた事を思い出し、アリリは決闘についての伝令を出した。
まだ留守番は終わっていない。
アーリェが帰ってくるまで役割を全うしなければ。
こんな自分でも役に立つ、ここに居てて良いって思われるようにしなければ。
今のアリリにとっては、それが一番に優先されることだった。
「これで、本当に良かったの……?」
闘技場内の一室で壁にもたれながらリカーラはブツブツと独り言を続けていた。
ドアをノックする音が聞こえ、男が訪ねてきた。
「どげんしたと?」
軍服姿の男が首を傾げた。
「……やはり、背くようなことは」
「こうするしかなかったっちゃけん、僕らに助けを求めたんやろ?そろそろ時間ばい」
「……分かりました」
男は部屋を後にした。
リカーラはそのままの服装で向かった。
相手はアリリだと分かっていたから。
そうだ、これが最善だ。
そう言い聞かせて歩みを止めなかった。




