めんどくせえ奴じゃね?
森田と都合を合わせ、オレは再びシューティングゲームをすることになった。
タイミングよくカスミスさんに会えるかどうかは分からない。
だが、もし会えたら問い詰めるまでだ。
今回は武器のカスタマイズをちゃんと考えることにした。
フィル王国で保管している銃でも使えるように、ライフルに追加して、着弾すると爆破出来る攻撃が3回出来る改造を施した。
サファイアの攻撃魔石は光に触れると消し飛ぶからな。これが近いかもしれない。
「今日の堤君は気合入ってるね」
「この前ボロボロだったからな。オレも勉強してきた訳よ」
エリオットの見た目のアバターも作り、いざステージに挑もうとしていた時、チャットの通知音が聞こえた。
「あ、またカスミスさんから連絡来てるよ。一緒にやりましょうって」
タイミングがやたらと良い。
オレのことを監視してるのかってくらいに。
しかし好都合だ。
チャットにすぐに返信した。
「望むところだ、と」
ゲーム内のステージに転送される。
今回は牢獄のような場所だ。
奴と話すには、ある程度の敵を倒しておいた方が良い。
早速アバターを動かして敵を排除する。
ライフルを構え、狙いを定める。
「この敵は足が速いから、先に足を狙って動けないようにしたら倒しやすいよ」
横から森田が助言を飛ばす。
「なるほどな」
まずは普通の弾で足を狙い撃つ。
照準が合わせにくく微調整が要るな。実際に銃を撃つ時も、こうなるんだろうか。
何とか足を打ち、敵が倒れこむ。
この隙に体に何発か打ち込むと敵のライフが尽き、消滅した。
「堤君、コツを掴むのが上手いね。初心者は慣れるのにちょっと苦労するんだよ」
よほどこのゲームが好きなのだろう。森田の目は輝いている。
「次は改造の攻撃を試してみるか」
新たに現れた敵に対し、オレは照準を合わせる。
トリガーを引くと、勢いの強い弾が飛んでいき、敵に着弾する。
敵は爆撃を受けて跡形もなく消えていた。
そしてオレのアバターは打った時の反動で後ろに飛ばされていた。
はあー……。なるほどな。
強い弾を打つとこちらにも反動がくるのか。
攻撃魔石を弾として打ったら、同じような状態になるかもしれない。
これは覚えておこう。
オレがようやく2体倒したところで、カスミスさんはほとんどの敵を倒しきっていた。
敵を全滅させるとステージ終了になる。
前回のように、そのまま奴が応答しなくなるかもしれない。
今のうちに接触しなければ。
カスミスさんのアバターに近づき、チャット欄に入力した。
『あんた、8/23に行方不明になった16歳高校生だろ』
「え?堤君また内輪ネタの会話してるの」
森田には分からない内容なのは当然だ。
『後で話をしよう』
その文章の後にURLが記載されていた。
このURLの方で話すってことか。
『今は純粋にゲームを楽しもうではないか』
カスミスさんは自分の武器を構えた。
前回同様、異世界に持ち込まれていた銃と同じだ。
残っている大型の敵に近づき、カスミスさんは銃を構える。
銃に刻まれている独特の模様をなぞるように青い光が漏れ出す。
トリガーを引くと敵の額を簡単に打ち抜き、敵はその姿が透き通るように額から消えていった。
銃を撃った反動はなく、カスミスさんは平然と立っている。
「は、初めて見た攻撃だ……。さすがカスミスさん」
そのスキルに森田は嘆息した。
青い光。
敵が消える。
まるで攻撃魔石の別の使い方のようだ。
この攻撃の仕方も攻撃魔石を使えば出来るのか。
その後もカスミスさんはオレに見せつけるように、その戦い方をして敵を倒していった。
敵を全滅させ、ゲームクリアになりカスミスさんはログアウトしたようだった。
「すごかったよ。カスミスさんのプレイを直接見られるなんて。ありがとう堤君」
森田は興奮しているようだ。
「実力の差を思い知らされたみたいだったけどな。まあ、オレ初心者だしいいんだけど。それよかさっきのURLだ」
チャット欄を確認し、スマホにURLを入力するとLINEの友達追加が表示された。
「カスミスさんと元から知り合いって訳じゃないんだよね?」
「ああ。ちょっと関わることがあったくらいで全然知らねえ奴だ」
「リスペクトしてる僕がいうのもなんだけど、あまり深く関わらない方が良いと思う。カスミスさんってゲームは上手いけど人としてはどうかって言われてるみたいだし。トラブルに巻き込まれるかもしれない」
「そうみたいだな。オレも調べて分かったよ。でもどうしても奴に訊きたいことがあるから、最低限しか関わらないようにするわ」
「何かあったら僕で良ければ相談してね」
心配そうに森田はオレを見つめる。
オレはこの目を知っている。
フィル王国にいた時に、オレの周りにいた人たちの目だ。
日本でもオレのことを思ってくれる人はいる。
「ありがとな。頼りにしてるぜ」
自宅に戻り、LINEを起動する。
カスミスさんのアイコンはデフォルトだ。
名前はそのまま『カスミスさん』となっている。
まず何と打つべきか。
いや、ここまで突き止めたんだ。回りくどくしなくていいだろう。
『さっきはどうも。あんたは何なんだ』
メッセージを送ったが、なかなか返信が来ない。
こちとら早く状況を知りたいっていうのに焦らしやがる。
相手の手のひらで踊っているようでムカつくぜ。
深夜0時が近づいてきている。
ずっとスマホの前で待っているが反応はない。
遊ばれているのか。
相手の素性もろくに分からないんだ。その可能性はあるかもしれない。
折角ここまで来たってのに。
「……クソがよ」
もう寝よう。明日も早いんだ。
これからのことは、また考え直しだ。
アラーム音で目が覚める。
スマホを見るとカスミスさんからメッセージが届いていた。
「マジであいつオレのことからかってんのか」
腸が煮えくり返りそうだ。
だが、そんな気持ちも忘れてしまうほど不可解なメッセージが目に入った。
『僕は君に願いたい。
僕を、彼を、彼女を終わらせてほしい』
は?
意味わからん。
内容を理解するのに時間がかかる。
というか理解出来ない。
『訳が分からん。銃と拡声器を異世界に持ち込んだのは、あんただろ?異世界に行く方法を教えろ』
『僕が何者か知りたくないのかね』
『カスミスさんだろ?事前に調べた人柄とは全然違うみてえだから、別人かもしれねえけど。それよか異世界にはどうやって戻るんだよ。今から学校なんだから早く教えろよ』
『君は本当に正直な人のようだ。直接会って話してみたいものだよ』
ダメだこいつ、全然核心に迫らねえ。
わざと焦らしているのか、素で自分の感想を先に述べているのか。
家を出る時間が刻一刻と近づいている。
『オレが学校行ってる間に教えねえと、あんたの願いも聞いてやんねえからな』
メッセージを送り、ポケットにスマホを突っ込む。
急いで朝食を済ませてオレは学校へ向かった。
「カスミスさんと連絡は取れた?」
教室に入るなり、森田が声をかけてきた。
「取れたっちゃ取れたけど、何か会話にならねえんだよ。あいつ天然なのかな」
「天然とかいう次元の人じゃなさそうだけど……。やり取りは気を付けておいてね」
「ヤバそうな奴だもんな」
「あ、それとは話が変わるけど、堤君におすすめの武器改造があって……」
森田は相変わらず目を輝かせながらゲームの話をしてくる。
クラスに同じ趣味の奴がいなかったんだろうな。
オレもあのゲーム自体は純粋に楽しめる要素もあったので聞くのは苦ではないが。
ここは森田のために聞いてやるか。
授業の合間にスマホを確認した。
カスミスさんから返信は来ていない。
その後も頻繁に確認したが連絡はなかった。
オレが送ったメッセージがヤバかったか?
もう連絡取れなくなったら、積みだぞ。
学校が終わり、そのままバイトに行ったが連絡はなかった。
さすがに焦りを覚えてくる。
バイトが終わり、家に帰ろうと表に出ると通知音が鳴った。
カスミスさんからだ。
またもや狙ったかのようなタイミング。
『すまない。用事をしていて連絡が遅くなってしまった。僕の願いをまだ聞いてくれるつもりはあるかい』
『だから、お前は先にオレの質問に答えろよ。何なんだよ、お前は』
いっそ、電話をかけてみるか?
いや、それは危険だ。
玲奈の時とは違う。得体が知れなさすぎる。
『あの世界に行くには条件がある。黄昏の贄と蒼玉と節気が一つにある時だ』
は?
意味わからん。
内容を理解するのに時間がかかる。
というか理解出来ない。
って朝と全く同じだ。
『つまりどういうことだよ』
『蒼玉と節気は分かるだろう。黄昏の贄は、すぐ近くにいる。贄になったことも分かっていないようだがね』
『それを教えろよ』
『君は教わったはずだ。自分で調べることを。僕としても、もう少し君を試したい』
「はあああ~~~!?何様だ、こいつはよぉ??マッジでムカつくぜ。何が『僕は願いたい』だよ、この他力本願野郎がよぉ!!」
思わず、外で大声が出た。
通行人がジロジロと見ている。
仕方ねえだろ、こんな文章送られてみろ。ぶん殴りたくなるってもんだ。
でも、そのままこいつに気持ちをぶつけても進まないか。
一度、冷静になれ、オレ。
『分かった。何か聞きたいことがあればまた連絡するわ』
『君は僕が誰なのか知りたくないのかい』
「めんっっどくせえ彼女かよ、てめえはよぉ~~!!」
またもや大声が出てしまった。申し訳ない。でもオレの気持ちが分かるだろ。
オレは異世界に戻る方法が一番に早く知りたいんだよ。
お前の正体も気になるけど、返信がクソ遅くて行動が読めないお前相手に、それは二の次三の次なんだよ。
ていうか、そんなに正体を明かしたいなら自分で言えよ。
いや、めんどくせえ彼女なら、ここで訊いてやらねえと拗ねるか。
『じゃあ、あんたは誰なんだ』
『カスミスさんではないけど、彼が8月23日に転移した高校生というのは正解だ。僕は彼を異世界に連れて行った張本人さ』
……ということは。
『オレとエリオットを入れ替えたのもお前か?』
『それは違う。多少関わりは持っていたけれどもね』
要するに一枚噛んではいるってことか。
『ゲームのアバターからして、治安部隊の人間か』
『いずれ分かるさ、いずれね』
「結局言わねえんじゃねーか!!」
こいつの自己満足に付き合わされてるだけじゃねえかよ。イライラが限界だぜ。
『そうかよ。じゃ、オレ明日も早いんで』
『ゆっくり、おやすみなさい』
妙な気持ち悪さが後から残ってくる。
こいつはどういう立場から連絡を取ってきているんだ。
敵なのか、味方なのか。
でもカスミスさんを異世界転移させたり、オレに意味不明な頼み事をしようとしたりするあたり、良い奴ではないだろうな。
正体も明かさないし、こいつのことを、どう判断するかには、まだ早い。
異世界に行くための条件か。
蒼玉はサファイアのことだろうな。
節気ってなんだ?調べてみるしかねえな。
黄昏の贄も分からん。
玲奈はこれに何か気づくだろうか。
また連絡を取ってみるか。




