表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
109/111

異世界転移じゃね?

『君は銃が欲しいんだろ』

『君が考えることは分かっている』

『君が望むものを僕は持っている』

軍服姿の男が見透かすようにこちらを振り向く。










手元から何かを落とし、その落下音で目が覚めた。

見てみるとスマホだった。

オレは自室の勉強机でうたた寝をしていたようだ。



カスミスさんのことを再度調べているうちに、疲れて寝てしまったのか。

日頃のハードスケジュールに加えて、カスミスさんの存在だ。

16歳高校生にはきつい。





SNSで彼のアカウントを調べた。

流石のフォロワー数だったが、自分はシューティングゲームなどの公式アカウントを数件フォローしているだけだった。

画像の投稿もゲームのプレイ中のものだけで、自分の写真は疎か風景写真といったものも一切なかった。

さらに投稿内容の文章が独善的だ。



よほど自信家だったのだろう。

批判的なコメントに噛みつくのはもちろん、何気ないアドバイスや自分が望む感想でなければ相手を叩くようなレスを永遠と続けている。

人間性は知れているがゲームの実力はあるので、その腕だけを支持した者が一定数いたようだ。





他者による彼についてのSNSでの投稿内容もざっくり調べた。

ゲーム内で彼と協力プレイをした人が投稿していたが、やはり協調性はなく指示ばかり出したり、ミスした人を責め続けたりしたようだ。

最初は誰もが彼の腕は信じて協力プレイをしたが、その性格が度を越えていたため二度と協力申請はしなくなった。



彼も声をかけてくれる人がいなくなり、自分から協力申請をし始めたが断られ続けたようだ。

そして突然ゲーム内に姿を現さなくなり、SNSの更新も止まった。

死亡説や行方不明説も流れたが、最近になって突如ゲーム内に現れ始めた。だがソロプレイばかりで、SNS更新はしないままだった。






今のところ分かっている情報はこんなところだ。

SNSも更新してないなら、もう使ってないんだろう。

裏アカがあれば誰かが暴露しているだろうが、その情報も流れていない。

試しにメッセージを送ってみたが返事は来ない。



もしかしてゲームのアカウントを第3者に乗っ取られているとか。

いや、それなら異世界に行ってないやつが治安部隊のことを知っている訳がない。



一見すると不気味だ。

自己陶酔していて自己顕示欲の強いやつが、今は全く自分のことを発信しない。

活動休止していた時に何か心に傷を残すような出来事があったのだろうが、人間、そう簡単に性格は変わらない。



直接本人に接触するしかない。

その方法はゲーム内でのチャットしか術がない。



こういう時にファイがいてくれると方法を一緒に考えてくれて助かるんだが。

いないものは仕方がない。

今は日本でオレに手を貸してくれる人たちを頼っていこう。









オレの家にあるPCはゲーミング用ではないため自宅ではカスミスさんと接触出来ない。

そのため森田のPCを借りる必要がある。

今までの関係性からいえば、森田の都合が悪い時でもオレが強く言えば、オレのことを怖がって断らないだろう。

ただ、それは対等ではない。森田を利用していた過去のオレと一緒だ。

友達として、接していきたい。





翌日、学校で森田と話している際にゲームの話になった。

「森田ってあのゲーム結構やってるんだろ」

「うん、面白くてね。たまに協力プレイもやってるよ」

「オレにまたゲームさせてくれないか。オレん家ゲーミングPCがなくて。お前慣れてるから操作もちゃんと教えてもらいたいし。お前が良ければでいいんだけど……」

「いいよ。またウチにおいでよ」

「い、いいのか?その、嫌じゃねえか?」

「僕も都合があるから頻繁には無理だけど、あのゲームって楽しいから、その良さを知ってもらえるのはちょっと嬉しいんだよね」

森田は照れくさそうにしている。

「ありがとう。本当に助かる。都合がいい日があれば今度教えてくれ」










カスミスさんの対応については、とりあえず方向性は決まった。

入れ替わりの条件もカスミスさんに辿り着けば分かるだろう。



ほかの疑問2点について。

エリオットと気持ちが同調すると体が勝手に動くっていう件は、さっぱり分からない。

玲奈の話を聞いて、日本に戻ってから激甘ミルクコーヒーを嫌々飲んでみたが、何も起こらなかった。



森田に妹の話をしてみることも試みた。

過去に森田には、オレが母親と、入院している妹について電話で口論しているところを偶然見られて、カッとなって掴みかかろうとしたことがあった。

森田はそれがトラウマのようになっていて、オレが妹のことを口に出した途端に話を遮られた。

よっぽど心の傷になってしまったんだろうな。

オレもその話はしないようにした。

だが、その時のオレの気持ちとして、今も森田に掴みかかろうとするような気は起きていない。



異世界に行っている時に妹の話をしても何も変わらなかったし、気持ちの同調については見当がつかない。

これは保留だな。





あとは玲奈とグレイスが似ていること。

オレとエリオットが入れ替わる条件が分かってない以上、どのタイミングでまた入れ替わるか予測出来ない。

今のうちに解明出来ることはしておいた方がいいよな。











オレは玲奈にLINEを送った。

『グレイスについて何か思い出したことはあるか』

すぐに返信が来た。

『やっぱり心当たりはないよ』

『生き別れのきょうだいがいたとか』

『それはないと思う。グレイスも16歳で私に顔がそっくりなんでしょ?てことは親は一緒だと思うし、グレイスが生まれた時には私は9歳だから、さすがに親が子供を産むようなことがあれば覚えているし』



玲奈とグレイスは何か繋がりはあるだろう。

あのサース王国だ。関係ないはずがない。



『あんたが16歳の頃は何してたんだ』

『普通に高校生してたよ。異世界小説ばっかり読み耽ってて、周りよりも情報を早く取り入』



文章が中途半端に送られてきた直後に電話がかかってきた。

「なんだよ」

「もう電話で話した方が早くない?」

妙に嬉しそうな声で玲奈は続ける。

「あの時はどっぷりハマっててね。誰よりも情報を早く手に入れようとしてたよ。それで周りが少し遅れて異世界モノの話をしていると、今更その話って感じでうんざりしてた」

「面倒くさい古参オタク感があるな」

「でも途中から何だか異世界モノに興味がなくなって。社会人になってからだったかな。いや、もっと前かも……」

急に玲奈は黙り込んだ。



「何か思い出したのか」

「いつから興味なくなったんだっけ。モヤがかかったみたいにすぐに思い出せない」

「なら今度でいいから早めに思い出してくれ。何かグレイスに関係することがあるかもしれん」

「分かった。燕太君の方は日本に戻ってきてから最近どうなの?」

「エリオットがハードスケジュール組んでやがったから毎日死にそうだわ。流石に学校の課題は最低限しかしてねえし、予習もしてねえけど。バイトもちょっとシフト減らしてもらってる。調べることも多いしな」

これを普通にこなしていたエリオットも16歳なんだよな。やはり育ちの違いか。



話の流れで玲奈にもカスミスさんについて説明した。

「ゲームは殆どしたことないからカスミスさんは知らないなぁ。その人っていつからSNS浮上しなくなったの」

「8月23日が最後の投稿だった。それ以降は更新してないけどゲーム内には現れている」

「……今、8月23日って言った?」

「ああ。その日にどうでもいいような内容を投稿したっきりだ」

「その日だよ。私がエリオットと出会ったのは」







オレが異世界に行った日付は正直覚えていない。

それくらい、日付はどうでもいい生活を送っていた。

学校には行かないし、バイトもしてないし、家にも殆ど居なかったし。

あの日は、いつものようにゲーセンに遊びに行って外をフラフラして過ごしてた。

母さんが持っていたサファイアのペンダントをどうやって売ろうかと思っていた。

今思えばフリマアプリを使えばいいものを、何故か売る方法がないと言っていつまでもペンダントを持ち歩いていた。

あの日は、いつもと変わらない、そんな日だったと思う。




「そう、なのか。あの日がいつだったか覚えてなかった」

「前に会った時にも話したけど、あの日はエリオットがヤバそうな人たちに声かけてて、私が助けて流れで家に連れていったんだよね。あ、そうそう。あの時ニュースで16歳高校生が行方不明って流れてて冷や汗かいたんだった」

「……その高校生も同じ日に行方不明だったのか?」



偶然、なのかもしれない。

でも、もし繋がっているとしたら。



「その高校生、何か引っかかるかもな。オレちょっと調べてみるわ」

「調べる価値はありそうね。私も自分に出来ることをしておく」



オレと同じ日に行方不明になった同い年の高校生。

同じ日にSNSを更新しなくなったカスミスさん。



まずは相手のことを調べる。それが基本だもんな。












ネットで過去のニュースを遡る。

「これか」

記事を見つけ、詳細に目を通す。




『2018年8月23日、母親が部屋に朝食を持って行った際に、部屋から物音が全く聞こえないことに疑問を感じ、父親を呼んでドアをこじ開けた。部屋の中は誰もおらず、窓は締め切っており、PCの電源が点いたままだった。外出した様子はなく玄関の靴も残ったままであった。家族は行方不明者届を提出している』



もう少し情報が欲しいな。

様々なSNSを使って改めてカスミスさんに関する検索をかける。



『突如行方をくらませたカスミスさんの末路。

ゲーム内で他プレイヤーへの暴言が多いことで知られるカスミスさん。それが仇となり住所を特定されて

身の危険に晒され、トラブルに巻き込まれた可能性があります。

しかし暴行事件などのニュースは取り上げられておらず、真偽は不明。ただ、最近復活を遂げるも目立った行動はせず、ソロプレイに徹しているようです』



『カスミスさん誘拐説。

一日中ゲームをしていることでも有名な彼だが、かなり稚拙な言動からして未成年と思われる。学校に通っている様子も感じられず、引きこもりではないかとも噂されている。家族はそんな彼を案じて外部の人間に相談し、彼を外に連れ出そうと考えたが、それが悪手となり誘拐犯を招き入れてしまったのではないだろうか。追記、この考察は過去のものです。現在彼は活動再開しています』





最近のものから古いものまで様々な情報が出てくるが、どれも憶測にすぎない。

ただ引きこもりという考察はニュースと照らし合わせて腑に落ちた。




しかしこれ以上の情報は見つけられなかった。

カスミスさんの本名や住所も、もちろん見つけられなかった。

彼は自身のリアルについては発信していない。特定されなかったのかもしれない。

トラブルに巻き込まれたという線は薄いかもな。



と、なると。

カスミスさんは現実では他者と関わることはなく引きこもっていた可能性があり、行方不明になった時はいわゆる密室状態だった。

やっぱり16歳男子高校生が異世界転移してるんじゃねえか?



治安部隊に所属しているんだろうか。

何故今のタイミングで日本に戻ってきて、人が変わったような振る舞いでゲームの活動をしているのか。



人が変わったような……。

本当に、あのアバターの中身はカスミスさんだったのか?

でも、本人でなければどうやってゲームをしているんだ。



ここから先は直接訊いて確認するしかない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ