フジダマの種
また明日俺の部屋に来てもらうことにしてマリアと一旦別れ、ブレーキさんもこのことをオスペオさんに伝えに行くとのことで、今もオスペオさんと何やら熱心に話をしている。
マリアとの話が長引いたからか、貴族は多くが帰っているようだった。パーティーなので、案外その辺は緩いみたいだ。
話をするのも面倒なので、いない方がある意味嬉しくはあるのだが・・・。
と言っても隊長の方はまだ居るようで、何人かはこっちに気づいているようだった。
「んん~!このフルーツ美味しいね。他のも食べてみたけど、やっぱりこれが好き。」
そんな視線をものともせず、なにやら藤色をしたリンゴのような果物をかじっている。
あれ?それ切って置いてあったやつじゃなかったっけ?その横に一つだけ切らずに置いてあるやつもあったような気もするけど・・・。
「ナナ、それ食べていいやつなのか?たぶん切ってあると何か分からないから横に置いてあったやつだと思うのだが。」
「んん?・・・ゴクッ。切ってあったやつももう食べたよ。それに、こっちも食べてあげないと可哀想だもん。ほら、食べてみて」
そ、そうか。まぁ無くなったのだったら、大丈夫だよな?
内心少しヒヤヒヤしつつも、俺もそのリンゴのようなものをかじる。
お、うまいなこれ。噛んでいてもスポンジのようにすかすかになったりせず、噛むほどに甘味を持った果汁が溢れてくる。自分で育てたりはできないだろうか。
「あんたがシュウ、だな?」
そんなことを考えていると、背後から声が聞こえてきた。声は常時聞こえてくるのだが、これは明らかに俺に対して話しかけているとわかった。
振り向くと、細身で背が高い、やや長めの金髪男が立っていた。身に付けているものもきらびやかなものが多く、目がチカチカする。
貴族だろうかと思い、面倒ではあるがこちらからも話すことにした。
「あぁ、そうだが。何のようだ?」
「第一重攻撃隊隊長の俺に向かってため口とは、Aランク冒険者がいいご身分なこった。そこの獣人もフジダマなんてかじって、そんなに好きならこれでもしゃぶってろ。」
荒々しい口調と共に飛んできたのは、
「種、か?」
薄い赤色をした手のひらサイズの種らしきものだった。
「その果物の種だ。発芽、成長には魔力を流す必要がある。聞いたところお前は魔法は使えないようだな。そこの獣人なんぞ論外だろう。」
「まぁ俺は魔法を使えないな。」
「種はあるのに育てられない、せいぜいしゃぶるぐらいにしか使えねーだろーよ。はっはっは!」
何が面白いのか、大笑いしながらどっかに行ってしまった。たぶん獣人が嫌いで、且つ王から報酬を貰った俺たちを妬んでの行動立ったのだろうが、あれは嫌がらせと言えるのだろうか・・・?
さっきのことを見ていたのか、オスペオさんがこっちに歩いてきた。
「王様、どうしたんだ?」
一応人前なので王様と呼ぶことにしている。といっても敬語は使わないので、あまり変わらないのかも知れないが。
「シュウくん、ナナさん」
俺たちの名前を呼んだ後、オスペオさんは俺たちの方を向いて・・・
頭を下げた。
「うちのものが、すまなかった。」
「お、おいおい。一国の王がそう簡単に頭を下げるな。回りが見てるぞ。」
さすがにまずいだろう。すぐに頭を上げさせる。
「彼、第一重攻撃隊隊長、デルフィニは少し変なやつでね。もともと貴族の出であることも相まってか、傲慢なところがある。ただ、おかしいところがあって・・・。わかるかい?」
「あぁ、」
「私も、分かります・・・。」
まぁ嫌みを言うために種を渡すとは、おかしいとしか言いようがない。それに、ナナは魔法が微量ながら使えるしな。
因みになかなか高い種とのことだ。
「とにかく、あの性格のせいで嫌われているようなそこまででもないような、というところにとどまっている、というのが彼でね。実力はちゃんとしているから解雇もできないし。」
「大丈夫ですよ。私あの人嫌いじゃないです。」
「そうなのか?」
俺は、嫌いとまではいかなくてもさすがに余り関わりたくはないと思うのだが、
「だって、この種くれたもん!これでおうちでもさっきのフルーツ食べれるよね!」
「あ、そうゆうことか。」
性格ではなくて、ということだな。俺もこのフジダマ、という果物は気に入ったし嬉しいが。
「あぁ、フジダマの種だね。それは魔力を流すことさえちゃんとすれば土が痩せていても一週間ほどで実をつける。魔力をながし続ければそれに合わせて実をつけ続けるし、希に種が落ちることがある、というすべてに関して魔力を使う果物だよ。因みに、食べると魔力をある程度回復させる効果があるよ。」
ということらしい。美味しくて、魔力も回復するというのは素晴らしいな・・・俺には無意味な効果だが。
家の回りにフジダマがたくさん実っている光景を想像していると、オスペオさんが再び話し始めた。
「さて、そろそろ夜も更けてきたし、お開きにしようか。」
そう言うと、椅子に戻っていった。
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「楽しかったねぇ。」
「そうだな。花火も上手くいったし、マリアとも色々話せたな。」
まだマリアとは仲が深まっている訳ではないが、今後の課題として頑張っていこうか。
今後の算段を立てつつも、荷仕度をする。パーティーも終わり、明日には《ラベンダー》の町に帰ることになるだろう。そのためにも荷物をまとめておくべきだ。
といっても、袋一つで済むのだが。
因みに明日はマリアと合流した後、行くところがある。それは、
「帰る前にルーンちゃんとも話しないとね。」
「そうだったな・・・約束もあるしな。」
「だね。」
そう、ルーンの経営する《マルーン雑貨店》だ。約束についてと、あと一つ提案したいこともあって行くことになっている。
明日の予定も確認し終わったところで、そろそろ寝ることにした。
「ふはぁ~、疲れたぁ。シュウ、撫でて~。」
「はいはい。」
ベットに飛び込んで倒れるナナの横に座り、ミミを触りながらもナナを撫でる。最近は人前で撫でてアピールをすることは無くなったのだが、夜は頭を撫でて、ミミを触ってやらないと寝てくれなくなってしまった。
一度、疲れてそのまま寝ようとすると、体の上に乗って体を密着させたまま、頭をスリスリと擦り付けてきたので寝ようにも寝られなかったことがある。
とにかく、撫でて、撫でて、撫でまくれば・・・
「ふにゃぁ~・・・。」
すー、すー、
「よし、寝たな。」
案外すぐに寝てくれる。といっても俺に抱きついた形で寝るので、こっちは身動きも取れない。
「ふわぁ~。俺も寝るとするか。」
もう一度ナナの頭を撫でた後、重たくなった目蓋を閉じた。
疲れていたからか、そこから意識を手放すのに時間はかからなかった。
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最弱冒険者、犬を飼うのでジョブ変更します。
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