王都を出る前に
他作品のデータが消えたり、用事が重なってしまいなかなか更新出来ませんでした。
申し訳ありません。
翌朝、俺たちは少し早めに起きて早速《マルーン雑貨店》へと向かっていた。
コラルドさんとはもう話を通してあり、今日の昼には王都を出ることになっている。なので、ルーンとは早めに話をしておきたいのだ。
───何か忘れているような気もするのだが、時間もないしな・・・。
「朝も早いし、さほど暑くないな。」
「だね。もう季節もインパチェンスにすっかり変わってるからお昼は暑いけど。」
インパチェンスの時期は夏と同じように暑くなる。ちょっと前まではそこまで暑くは無かったのだが、ここ数日で急に暑くなってきたようだ。
「今年の暑さは異常らしいよ。」
「そうなのか?」
「うん。部屋にあった新聞にそう書いてあったもん。」
新聞なんてあったのか。全く気づかなかったが、とにかく暑くなるのは変わらない。
熱中症には気を付けよう!
そんなことを考えていると、あっという間に目的の場所へとついた。
朝早いというのにそれなりに賑わっている商店街の中で、《マルーン雑貨店》だけは閑散としていた。
「「失礼しまーす」」
たぶん裏にいるのだろうと思い、一段声を張り上げるが返事がない。
カウンターに向かうと、予想通り裏にいるといったことが書かれた張り紙がしてあった。
「ルーンちゃーん!来たよぉ!」
ナナが手をメガホンにして叫ぶ、すると、
ガシャガシャ!ドゴン!
「「・・・。」」
デジャヴだな。
たぶんもう少し待てば裏から出てくるはずだ。
少し待っていると、勢いよく扉が開いだ。
「きゃぁ!」
「な、ナナ?」
ナナの悲鳴が聞こえ、横を見るといつのまにかナナの上にルーンが覆い被さっていた。
「ふわぁ~。モフモフ、可愛いよぉ。」
「ル、ルーン。とりあえず起き上がれって・・・。」
何とかしてルーンをナナから引き剥がす。というかさっき扉から出てきたところ見えなかったんだが・・・どうやったんだ?
引き剥がされたルーンはやっと正気に戻ったのか、傾いた眼鏡と寝癖を直していた。
寝癖は全く直っていなかったが、
「よし。では改めて、いらっしゃいませ。」
「さっきのことなかったことにしようとしてる!?」
「いやぁー、あれはその~、条件反射ってやつでして・・・。」
もふもふしたものを見ると飛び付いてしまうって条件反射なのか?
だとしたら病院に行くことをおすすめするが。
そもそも病院ってあるのだろうか?
「それより、今日はどうされたのですか?」
「実は、今日の昼には王都を出るんだ。それを伝えようと思って・・・っておい、どうした?」
話を続けようとすると、ルーンが目をうるうるさせてこちらを見ていた。
「も、もう帰っちゃうんですかぁ?」
「あ、あぁ、」
そう答えると、突然ルーンはナナに飛び付いて、泣き出してしまった。
「うわぁぁぁん!やだよぉ~、せっかく仲良くなったのにぃ・・・。」
「ル、ルーンちゃん」
「ひっく、な、なぁに」
「その事でちょっと提案があって」
ナナが頭を撫でてルーンを慰めながら、提案について話し始める。
「て、提案?」
「うん、ルーンちゃんがよければなんだけど・・・私たちの町に来てくれないかなぁって。」
「ひゃい?」
ルーンが変な声で返事をする。
今日ここに来た理由、それはルーンも一緒に来ないか?という提案をするためだった。もちろん、俺たちの住んでいる町へ、である。
ルーンはナナの初めて出来た同年代の友達だ。離れたからといって友達でなくなる訳ではないが、せっかくなら毎日でも会えるぐらいがいい。
「い、一緒にいく!」
「やったぁ!」
提案が予想外だったからか、少しの間フリーズしていたルーンが復活し、OKの返事を返してくれた。
そして、ナナと二人で手を握りながらピョンピョンと跳ねていたが、突然こっちを向いて話始めた。
「でも、住む場所とかお金はどうしたら・・・。」
「移動のお金に関しては大丈夫だ。あと、住む場所とか向こうでのお金に関してもアテはある。」
「そ、そうなのですか?」
アテについてはナナも一瞬分からなかったようで、少しして手を叩いて納得していた。
「とにかく、その辺で心配はない。」
「分かりました!じゃあ早速この店を売り払ってきます!」
「昼には王宮前に来てね!」
「分かったぁー!」
そう言うや否や、ルーンは突風のように何処かに行ってしまった。
売り払う、というのに少し疑問を持ったが後で聞いたところ、王都の商店街には出店希望が多いらしく、何処かに行くならすぐに売ってしまうのがルールとのことだ。
ルーンと別れ、昼まで特にすることも無かったので商店街を散策する。お金はほとんど持っていないので、所謂ウィンドウショッピングというわけだ。
・・・という予定だったのだが、
「あづい~・・・。」
「これはほんとに異常だな・・・。」
という俺たちが居るのは、冒険者ギルドの中。散策をしようとしたが、朝話した通りの異常な暑さに中断せざるをえなかった。
回りを見ると俺たちと同じように涼んでいる人も居るようなので、たぶん大丈夫だろう。
しばらく涼んでいると、突然依頼表のボードの回りから冒険者が離れていった。それに、なんだかさっきより空気も涼しくなった気がする。
「シュウ、これって。」
「あぁ、たぶんそうだろうな。」
俺もナナも同じことを考えていたらしく、席から立ち上がると冒険者の塊を押し退けて依頼表ボードの方へと向かった。
その先には、案の定あの人がいた。
「よぅ、マリア」
「あら、シュウくんじゃない。それより、遅くなってしまってごめんなさいね。」
「え?何が・・・」
そこまで言ったところでナナに袖を引っ張られる。
『なんだ?』
小声で聞き返す。
『今日会おうって話をしてたから、その事じゃないかな。』
あ・・・。完全に忘れておりました。
「どうかしたの?」
「い、いや?」
「まさか私が行くこと忘れてたなんてこと無いわよね。」
ギクッ
「そ、そんなわけ、な、ないじゃないかぁー。あは、あははは。」
「そ、そうですよ。」
「よ、よね?もしそうだったら、私・・・」
ひぃぃ。
回りで『あいつら誰だ?』的な目を向けていた冒険者たちまでが凍りついたんじゃないかと思うほど、冷気が立ち込める。
「というのはここまでして、本題に入りましょ?」
回りの冷気が解除され、ほっとしたところで目の前に一枚の紙が出される。
「これは?」
「パーティー申請書よ。私と国王のサインは入ってるから、あと貴方のだけなの。書いてくれるかしら?」
その瞬間、再び空気が凍った。
あれ?これはさっきのとは違う、と思い回りを見ると、『どういうことだよ!』『何なんだよあいつ!』といった視線がこっちに向けられていた。
「どういうことだよ!」
「何なんだよあいつ!」
あ、視線だけじゃなかった。
回りからの驚きや妬みっぽい視線 兼 声を無視しつつ、その申請書とやらにサインをする。
「これでいいか?」
「大丈夫よ。じゃあこっちに来て。」
そう言って、マリアは受付へと向かう。出来ていた行列が、サァー、とフナムシのように別れていった。
別にちゃんと並ぶのに、と不満をこぼすマリアについて受付についた。
「これ、お願いできるかしら?」
「は、はいぃ!ぼ、冒険者カードを見せていただけますか?」
「分かったわ」
そう言って、バッグから冒険者ガードを出す。そこには、縁が金色に光っているカードにSランクと書かれていた。
俺も、縁が銀色のカードを出す。Aランクに昇格したお陰で、見た目も変わっていた。
「は、はい、Sランクのマリアさん、Aランクのシュウさん、ですね!」
受付の女の子は二枚の冒険者カードと申請書を持って奥に行ってしまった。
しばらくして戻ってきた彼女は、二枚の冒険者カードを渡してきた。
「これで完了です。カードのここにパーティー名が書かれていますから、これでマリアさんとシュウさんがパーティーであることが分かります。」
「分かったわ、ありがとう。」
「ありがとな。」
「は、はいぃ!」
終始緊張していた受付さんから冒険者カードをもらい、確認する。
パーティー《マリーゴールド》
「これは、マリアが決めたのか?」
「ええ、いいでしょう?」
「そう、だな。」
明らかに聞いたことがある言葉だが、覚えやすくていいか。
「可愛い名前ですね。」
「でしょう?あと、ナナさんも普通にしゃべっていいわよ?その方が嬉しいわ。」
「そ、そう?」
「うんうん、そんな感じ。これからも話すこと多いだろうからそうしましょう、ナナちゃん?」
「う、うん!」
ほぉ、女子二人も仲良くなったようだ。ナナの仲良くできる人が増えることはいいことだしな。
「さて、そろそろ昼になるし、王宮のほうに戻ろうか。」
「分かった。」
「分かったわ。」
因みにマリアも《ラベンダー》へ一緒に来るとのことだ。依頼のほうも難易度の高いものは王都から直接連絡してもらえるらしいので心配ないとのことだ。
そろそろ王宮のほうにルーンも向かっているだろう、早めに向かわなくては。
そう思ってギルドから出ようとしたその時だった。
バタバタバタバタ
入り口から顔面蒼白の男が走り込んでくる、そして
「す、スタンピードだ!」
その瞬間、本日三度目、空気が凍りついた。
次話から、久々の戦闘です。
パァっとやっちゃいましょう!




