生徒会戦と聖人 その3
色々な事が起こりすぎて頭が追いつかない。
上級生との戦いで目覚めたアーツが………実は昔から無意識に周囲の人に対して使っていて、特に夜々木や春臣に影響を与えていた?
意味がわからない
いやわかるんだけど………そう考えたくない。
俺達の友情が作り物だと考えたくない。
どうすればいいんだ?
とりあえず………とりあえず今は、今まで通りに接しよう。
今はそれでいいんだ。
ただの問題の先送りに過ぎない………でも今はそうするしかない。
自分に言い聞かせるようにして、俺は会長の後を追って生徒会室に戻った。
生徒会室に入ると夜々木と春臣は会長と話していた………けどそれよりも美鈴先生が副会長と話をしている光景が不思議と目に入った。
副会長は悲しげな顔をしながら頭を下げている………………そして美鈴先生も申し訳なさそう顔をしながら頭をあげるように促している。
何だかちょっと不思議な光景だな。
なんて考えながら俺が2人を見ていると、会長が生徒会室の扉に鍵をかけた。
「会長?」
「これから大事な話をする…………これは僕が君達を生徒会役員だと認めたからだ」
会長は………俺達に向き直るとそう言った。
大事な話………やはり生徒会戦だろうか?
生徒会といえば生徒会戦………この2人はイコールで結ばれている。
各校の生徒会役員達が自らの魔法を競い合う、それが生徒会戦だ。
言ってしまえば魔法使い同士のガチンコバトルだ。
生徒会戦の戦績によって国からの待遇が変わる。
学校にも県にも莫大な資金が送られる………そして生徒会の戦績にはもう1つ重要な意味がある。
生徒会の戦績はつまり、その魔法学校の質の高さを証明している………つまりは安全の質の高さを保証する事にもなる。
何に対する安全かって?
もちろん魔物に対する安全だ。
今の時代に大型の魔物なんてほとんど出ない………大体子犬くらいの大きさですぐに殺せる。
魔法使いなら…………だ
一般人からしたら魔物なんて危険以外の何者でもない。
だから少しでも安全な所に………その目安が生徒会戦の戦績になっていて、つまり言ってしまうと人口の多い県は生徒会戦の戦績が良いんだ。
神奈川県の人口は日本の中でも五本の指に入る。
つまり、生徒会戦の戦績も最上位という事になる。
いつかは生徒会戦に出ないといけないのか………かなりのプレッシャーだ。
生徒会戦は物によってはテレビ放映される事もある、一種の娯楽にもなっているし、役員を賭け馬にした賭博行為も横行しているらしい。
会長もその話をしようとしているんだろう。
生徒会はおろか学校の未来にも関わる話だから。
だけど会長の出したワードは俺が予想していたものとは全く違うものだった。
「君達は聖人を知っているかい?」
「え?」
聖人?
何で今その話を?
春臣が当たり前だ言わんばかりの顔で
「知ってますよ、そんな事………夜々木ちゃんでも知ってますよ」
「あれ?今わたしの事ディスった?」
気のせいだろうな
それにしても今の質問に何の意味があるんだ?
俺が会長の意図を読んでいると、夜々木が
「ていうか聖人って本当に存在したんですか?世界を救った魔法使い………だなんて言われてるのに顔も名前もわからないじゃないですか」
確かに、聖人に関する情報は一切ない。
本当に存在したのか?
そう聞かれたら………多分としか言いようがない。
「聖人は………いるよ」
自信ありげな声で会長は夜々木の質問に答えた。
そんな言い方されるとまるで………
「まるで聖人が今も生きているみたいな………そんな言い方に聞こえますけど?」
「生きてるさ」
即答だった。
そんな馬鹿なことがあるか?
100年以上前だぜ?
「冗談………ですよね?」
「会長、大丈夫ですか?」
「おい千駄ヶ谷、そんな目で見るな………今から紹介してやるから………僕の頭はおかしくないから!!そんな目で見るなよ君達!!!」
2人とも会長の事を毛ほども信用していない………でも俺には、よくわからないけど………会長が嘘をついていないのがわかる。
何でだろう?
「聖人なんてお伽話みたいなモノでしょー」
「それを紹介って言われると………ちょっと……」
2人は痛々しい視線を会長に浴びせている。
「私よ」
不意に聞こえた声
振り返ると美鈴先生が真っ赤な髪をいじりながら
「私が聖人の1人よ」
と言った
なんでだ?
嘘じゃない
何故わかるんだ?
いやそれも気になるが、今の言葉が嘘じゃないとすると………先生が聖人?
俺があっけにとられていると、夜々木と春臣が泣きそう目になって
「先生………心の病気は治療出来ないんですね」
「それか自分の怪我は治せないとか………クレイジーダイ○モンドみたいですね?」
「君達………良い加減にしろ!!」
夜々木と春臣の頭に、流れるように拳をぶつけていった。
何故か俺も殴られた。




