生徒会と生徒会戦 その5
熱い……痛い………
炎球に触れた瞬間爆発しやがった………
魔力壁がある程度の衝撃を吸収してくれたが………結構なダメージだ……
「ふん、そんな低レベルな魔力壁で俺の炸裂魔法を防ぎきれる訳がないだろう。」
「ぐぁ………クソッ………が……」
誤算だった………
確かに最初から炎球を受け止めるつもりはなかった。
魔力壁を斜に構えて受け流そうとしていた………夜々木の放射魔法を受け流した会長の様にだ。
だが、触れた瞬間に爆発するとは思わなかった。
あの火力を魔力壁で受け止めるのは俺じゃ無理だ………ならば、避けるしかない!
そう考えた瞬間、俺の足は動いていた………迷う事なく弾丸の様に一直線に!
先輩はすでに第2投を準備している!!
今の内に距離を一気に詰める………炎球の威力は絶大だが、球速自体は大した事はない。
紙一重で避け、近距離で魔法を使って倒す!!!
俺と先輩との距離が10メートルほどになった所で、先輩が炎球を投げるフォームに入った。
かなり至近距離からの投球だが、気合いで避けるしかねぇ!!!
「今だ!!」
俺はそう叫びながら先輩が炎球を投げるタイミングに合わせて、大きく横っ飛びした。
炎球は俺の30センチほど横に投げられた。
これで炎球に触れる事なく対応できた!後は先輩を叩くだけだぜ!!
だが………
俺がしてやったぜという顔をしていると、不意に嫌な予感がした。
というのも俺の顔を見た先輩が………また笑っているのだ……
さっきと同じ笑みだ……愚かな弱者に向ける様な視線
俺はほとんど反射的に、通り過ぎ様としている炎球に向かって魔力壁を展開した。
そして炎球が俺の真横にきた瞬間、先ほどと同じ様に炸裂した。
俺は魔力壁を粉々にされながら吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
まさか………別に触れなくても任意のタイミングで起爆出来るのかよ………
「ふん……ツマラン男だ。触らなければ良いとでも思ったのか?このマヌケッ!!!」
言われて少しカチンと来た。
だが、その可能性を考えていなかったのは流石に俺が悠長だった。
俺が無言で先輩を睨みつけていると、彼は煽る様にして言った。
「確かに、最初の2人は認めよう。特別な才能とアーツの持ち主だ……下手な3年生よりもよっぽど戦力になる。」
「だが!!」と、俺を指差しながら
「こいつはどうだ?見た所特別な才能もない、アーツもない………かといって戦略も普通で閃きもない!」
やめろ………
「こんな奴が俺達の上に立てると思っているのか?こんな奴に生徒会の役員が務まると思っているのか?」
うるさい………………
そんなの俺が一番分かってる………………
けど、会長はそんな俺でも変われると言ってくれた………
だから俺は諦めない………諦めたくない……
「何とか言ってみろ………歪花!!」
「あー………………そうだな、おい明日葉!」
不意に名前を呼ばれて視線を向けると、会長が微笑みながら俺に向かって
「君は別に負けてもいいぞ?……………最初から期待してないしな」
「は?」
期待してない………………って………
じゃあアンタは何で俺を生徒会に入れたんだよ………
俺に、生徒会に入れば変われるって言ったのは嘘だったのかよ?
全身の力が抜けていく………………
なのに俺の心の中ではドス黒い感情が蠢いている。
この気持ちは何だろう?
悲しみ、怒り、嫉妬、劣等感、絶望………一体何と言葉にすればいいんだろう?
その感情の矛先は会長だけじゃない、春臣や夜々木、今目の前にいる須郷先輩にも………俺自身にも。
自分の無力が嘆かわしい………………
自分の無力を嘆く事しか出来ない俺に、果てしない怒りを感じる。
「生徒会をやめろ………」
「え?………」
須郷先輩は「それがお前のためだ」と
「それに、お前がこのまま生徒会に居座っても他人の迷惑になるだけだ。」
そんな事はわかってる………でも………
「でも、俺は変わりたいんです。」
それを聞くと先輩は先程の厳しい表情とは打って変わって、優しい顔つきで
「無理して変わる必要はない………お前にはお前らしさがあるだろう……」
……そうなのか………?
俺が急ぎすぎていただけなのか?
そうだよな………
今、焦らなくてもいつかきっと変われるよな………?
「無理しなくても、お前はずっとそのままでいいじゃないか」
ずっとそのまま………
その言葉を聞いた瞬間
俺の心の中でナニカがキレた気がした。
また諦めるのか?
またチャンスを見送るのか?
ちがうだろ?
会長も言っていたはずだ………生徒会に入る事は俺にとってのチャンスでパワーだと!
こんなチャンスは俺の人生ではもう来ないだろう。
俺が本当の意味で変われるのはココが最後だ!
だから……
このチャンスを逃すわけには行かないんだ!!
俺にはもう後はないんだから!!!!
「模擬戦を………」
「ん…………何か言ったか?」
「模擬戦を続けましょう……須郷先輩」
俺の目を須郷先輩はジッと見つめてくる………俺の迷いのない目をみて「身の程知らずめ」と言いながら、また手のひらに炸裂弾を作り出している。
今までの炸裂弾よりもデカイ!!
アレを凌げるのか?
いやそうじゃない、凌ぐんだ!!
力を……
須郷先輩を圧倒する程の力が欲しい。
ただそれだけでいいんだ……
今はこの試合にだけ全て捧げろ……
そして他の全てを無くしてでもこのチャンスを掴め!
チャンスは一度だけなんだ……絶対にミスのないように!!!
俺は、夜々木や春臣が羨ましかった………
恵まれた容姿に、ほかの人とは比べ物にならない優れた才覚をを持っていた。
妬ましかった…………強い劣等感を感じていた。
でも今はその思いを捨てて………いや、力に変えてでもこの戦いに勝利する。
心の中で、ナニカが繋がった気がした。
そして俺の身体中に魔力がみなぎる感覚を感じた。
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僕が思い出していたのは彼と初めて会った時、彼が副会長と戦い………まるで昭和のヤンキーの様に拳で絆を深めていた時のことだ。
(まぁ、蓋を開けてのお楽しみって感じだったが………どうなる?)
「コレでトドメだ!」
須郷は炸裂弾を明日葉に向かって迷いなく投げた。
明日葉の魔力壁は到底防ぎきれないだろう。
恐らく明日葉はどうにかして避けようとするはずだ………
が、僕の考えとは反対に、明日葉は炸裂弾を魔力壁で正面から受け止めた。
さらに驚くべき事に炸裂弾が直撃し爆撃をまともに食らったにも関わらず、明日葉の魔力壁はキズ一つ付いていない。
須郷が驚愕の表情を見せているが、明日葉はその隙を狙って一気に距離を詰めた。
スピードだけなら小鉢以上にでている。
そして流れる様な動作で須郷に近づくと、体を左側に大きく屈めて、伸び上がるの同時に強烈なフックをブチかまして須郷の顎を刈り取った。
決まったな………須郷は膝から崩れ落ち、見るからに意識がない
僕は速攻で試合終了を告げる………すると久我山と千駄ヶ谷は彼に向かって走っていく。
そして小学生の様にはしゃぎながら、まるで自分のことの様に喜んでいる。
そして副会長は僕の横でボソリと
「アレ、俺のパンチを真似したのか?」
「どうでもいい」
どうでもいい………今はそんな事より
(やっぱり、明日葉もアーツが使えたか………)
どんな種類なのかは分からない………だけど間違いなくなしかしらのアーツを使ったはずだ
コレでアーツを使えるのは夜々木を除く4人………
着々と戦力が増えていっている………
思わず口が綻んだが、明日葉の様子がどうも変だな。
労いの言葉でもかけるか?
(しかし、何と声を掛けるべきか…………)
そうだな………「期待以上だ」とでも言えば喜ぶだろ
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無我夢中だった………
全力で魔力壁を展開し、全力で接近して、全力で俺の拳を叩き込んだ。
今まで感じた事のない程の魔力が全身を巡っていた。
魔力壁は信じられない強度だった。
十数メートルの距離を一息で詰められたし、副会長の真似をした一撃もこれ以上ない手応えだった。
実際に須郷先輩は糸が切れたマリオネットの様に崩れ落ちた。
そして会長が試合終了を告げ、俺の勝ちが決まった………
俺が勝ったんだ………
夜々木や春臣が俺に賞賛の言葉をかけてくれる。
でも………
なのに………………
なのに……何も感じない………




