生徒会と生徒会戦 その3
「1対1で武器の使用は禁止、相手を気絶させるか降参させた方が勝ち………これで問題ないだろう?」
訓練室に着くなり会長は全員に向かって確認を取る様に聞いてきた。
ルールは別にどうでもいいけど……
マジでやるのか?
しかも3年生を相手に…………
当然だが俺達は全くと言っていいほどヤル気がない。
けど先輩達は俺達とは反対に戦う気満々の様子だ。
春臣と夜々木も困った様子でで会長に聞いた
「会長……本当に僕達が戦うんですか?」
「メンドーだから私もパスしたいな……」
消極的な2人の態度を見た会長は厳しい口調で
「いいから戦え!…………この先、君達には生徒会戦にも出てもらうんだからこの程度の魔法使いは軽くひねれる様にならないといけないんだ。でもまぁ……今回のは練習だと思って気楽にやってくれ」
生徒会戦…………か
生徒会に入るわけだから避けては通れない道なわけだ…………会長の言う通り今回の模擬戦はいい練習になるのかもしれない。
「生徒会戦ですか…………先の話ですけど、確かにぶっつけ本番で行くの危険ですし、今回の模擬戦自体に不満があるわけではないんですけど……」
春臣はたぶん、模擬戦の事よりも会長があの3人から恨みを買っていることを気にしているのだろう。
「せーとかいせん?何の話?」
対して夜々木は普通に話についてこれていない……
たぶん、本気で生徒会戦を知らないのだろう。
これには会長と副会長も驚いていたが
「千駄ヶ谷には後で説明してやる…………ほら、向こうは準備ができたらしいな……じゃあまずは、久我山に行ってもらおう。」
先輩達の方をみると黒ギャルの人が前に出てきている……あの人が先鋒って事か。
春臣も覚悟を決めた様で、会長の指示に「わかりました」とだけ返事をすると、そのまま前に出て行った。
春臣は黒ギャルから10メートル程距離をあけ、向かい合う様な立ち位置で、
「1年、生徒会会計の久我山 春臣です。」
「マジ?…結構イケメンじゃん。ウチ3年の小鉢 さやか、美化委員会の副委員長やってんの。」
小鉢先輩は春臣の顔を見ると態度を豹変させ、春臣に向かってワザとらしく投げキッスなんてしている。
だが春臣はノーリアクションだ。
超クール。
確かに、ロリコン(ショタもイケるらしい)の春臣からしたら小鉢先輩は一番嫌いなタイプなのだろう
その証拠に彼女のアピールを完全に無視して「会長、早く始めましょう」と、塩対応で返している。
春臣に促された会長が開始の合図を取ると、小鉢先輩は途端に真面目な顔になり、春臣に宣言する
「マジで、イケメンだけどウチ手加減とかしないからね?」
その言葉を聞いた春臣はワザとらしく両手を広げて…………まるでかかって来いと言わんばかりのポーズで、
「いいですよ、さっさと終わらせましょう。」
と言った。
その瞬間、小鉢先輩はニヤッと笑うと一瞬にして春臣の目の前まで距離を詰めていた。
一瞬のうちに身体能力を魔力で底上げし、十数メートルの距離を一息にだ
そしてガラ空きになっている春臣のボディーに渾身のストレートを叩き込んだ。
「春臣!!!」
俺は思わず叫んでしまった。
小鉢先輩があの見た目で、アレだけの動きが出来るのは正直にいって予想外だった。
副会長と同じでバリバリの近接格闘して来るのは予想出来ねぇよ…………ネイルとかすごかったし。
だが実際、あの一撃をくらってしまったら春臣もひとたまりもない………………
などと言う考えは杞憂だった。
結論から言うと春臣はノーダメージだ。
春臣は戦いが始まる際にワザとらしく両手を広げて見せていた………
けど、あいつは小鉢先輩を挑発するために両手を広げたわけでない。
糸だ………
春臣は糸を張っていたのだ……
あいつの両手の間にはまるであやとりで作る橋の様な物が出来ている。
たぶん前もってギリギリまで細くした糸を出し、小鉢先輩の攻撃に合わせて魔力を込めたんだ………
春臣がノーアクションの間は糸は細くて、とても肉眼では見えない……
だがあいつが魔力を込めた瞬間に糸は本来の力を発揮する、ワイヤーよりも丈夫で、柔軟性の高い魔力の糸となってその姿をあらわす。
「やはり久我山のアレはアーツだったか………」
春臣の糸を見ながら会長は納得した様に呟く。
アーツ………?
聞いたことのない単語だ。
夜々木も俺と同じで意味がわからなさそうな顔をしている。
そんな俺達の様子に気がついたのか会長はある物を俺達に見せてきた。
右手の人差し指を突き出すと、そこに魔力を込めた。
すると会長の人差し指から、魔力で作られた糸が出てきた。
これは………春臣と同じ糸魔法なのか⁉︎
「会長も糸だせるんですか?」
「ああ出せるよ………でも僕のは本当に魔力を指先から細く押し出しているだけだ。」
会長の言葉の通り、彼女の指先から出た糸は30センチほどの長さまで伸びたが………何もしていないのに先の方から崩れていく。
それを見ながら会長は説明を続けた、
「久我山のあの糸は、ただの魔力ではない。たぶん指先から糸を押し出すのと同時に、金属を無意識にイメージしているんだろう…………」
金属?
確かに金属をイメージして指先から出すのは理解できるが………そもそも春臣が金属系の魔法が使えるなんて聞いたことはないが………?
「無意識に………だ。ここが肝心だよ。」
「無意識が?」
俺が戸惑っていると副会長が
「そもそもアーツっていうのは複数の魔法や技術、体質なんかを組み合わせた、そいつだけの芸術の事をいう。」
副会長は例えば………と
「俺もアーツを持っている……………俺は元から適性があった電気の魔法と、魔力抵抗の高い体質を組み合わせた帯電魔法だ」
帯電魔法………
じゃあまさか会長のあの霧の魔法も?
「ご察しの通りだよ、僕のアーツは炎と水を組み合わせた霧の魔法だ」
………なるほど
じゃあ春臣のは魔力を指先から細く押し出す技術と、魔力を金属に変換する素質を組み合わせたアーツ。
でも無意識に金属に変えてるって事は………
「春臣は金属系の魔法が使える訳ではなくて、糸を出す過程で自動的に金属変えている………………つまり金属魔法を単体で使う事は出来ない………という事ですか?」
俺の解答を聞くと会長達は
「でも大体のアーツはそういうもんだからな………」
「僕みたいに炎と水を混ぜたアーツを使ってて、どちらも単体で使用できるタイプは珍しいからね」
アーツ…………
その人の、魔法使いにとっての芸術であり個性………
俺にも使える日が来るのだろうか?
「おっと………話をしている間に試合が終わりそうだな。」
「え?」
俺が視線をそちらに向けると、小鉢先輩の首をご自慢の糸で縛り上げる春臣がいた。
小鉢先輩は首に巻きつく糸を切ろうしているが、かえって自分の手を傷つけている
あいつ本当、女にも容赦しないからな………
12歳以下には紳士的(変態)だけど。
「先輩?降参するなら右手を上げてくださいね」
そう言われた小鉢先輩が挙手するのに数秒もかからなかった。




