掃除屋編 7話
「指輪職人のアラン、ですか」
拠点に戻って来た私達は、向かいのソファに座るキーランに手に入れた情報を報告していた。
「うん。ランランが探してた被害者達の共通の知り合い」
「しかも、身長百九十センチ前後の大柄な男性とのことなので、殺害、切断、遺棄、全て容易に可能です」
「なるほど。状況証拠とはいえ怪しいですね…」
小さく呟いたキーランは、横に置いていた分厚いファイルを手に取った。
三枚の書類を抜き取り、テーブルに並べていく。
「家やマンションを購入した時の契約書です。カーラ・デライラの死体発見現場より西側の川沿いで一人暮らししているアランという男性は、この三人だ」
「三人…」
(この中に犯人が……)
一枚の書類を、私は手に取った。
「あれ?身長と職業は?」
「そんな細かい情報まで載っているわけないでしょう。この三人に話を聞きに行ってください」
「えー、俺、もう疲れたんだけどっ…」
「いや、その必要はねぇ」
凛とした声が響いた。
振り返ると、扉が開いた先には──
「ケイレブ様…」
こちらへ近づいてきた彼は、テーブルに広げられた書類と私の手元の書類を見比べる。
そして、私から書類を奪い取り、
「犯人はこのアラン・バーナードだ。他の二人は死体遺棄現場から遠すぎる」
自信満々な顔でテーブルに叩きつけた。
「よっ、流石ワンちゃん!」
「その呼び方やめろっ!」
「お手柄です……が、いつも言ってますよね?扉は開けたら締めてください」
「ちっ、細けぇな。小姑かよ」
文句を言いながらも、ケイレブは扉に向かって歩き出す。
「では、ケイレブさん。いつも通り、後はお任せしますね」
「おう」
「…オフィーリアさんを連れて」
「え?」「は?」
ソファに座っている私と、ドアノブに掴んだケイレブの声が重なり合った。
一拍置いて、彼は声を荒らげる。
「はぁ!?何でその女を連れて行かなきゃいけねぇんだよ!?」
「何故って、彼女は僕達の監視役です」
「俺は認めねぇって言っただろ!」
「なら、今すぐここを出て行ってください」
「……………は?」
「彼女を認めないということは、殿下の命令に逆らうということです。そんな人は掃除屋に必要ありません。もちろん、ここを出るということは独房に戻るということですが──」
紺青色の瞳が、ケイレブを射抜く。
「あなた、戻れるんですか?」
(戻れる?)
身体を震わせたケイレブは、「クソッ」と力強く扉を殴りつけた。
深紅の瞳に睨まれ、またしても心臓が縮まる。
「おい」
「は、はいっ」
「ついてこれるもんならついてこい。俺はお前に合わせねぇ、お前が俺に合わせろ、綿毛」
「え?あ、ちょっと待ってください!…ていうか、その綿毛って呼び方止めてもらっていいですか!?」
扉を閉めずに出て行ったケイレブを、慌てて追い掛けた。
だから、私は知らなかった。
「あはは、本当に扱い方が上手いねー」
「だから、彼が扱いやすいだけだとっ…」
「いや、上手いよ。………まるで──」
「陛下を操るアジュール公爵みたいだ」
キーランが睨みつけていたことも。
「おー、怖い怖い。睨むと、公爵にそっくりだね」
「………」
「……ねぇ、俺達のこと、どこまで知ってるの?何に使うつもりなの?君の目的は──」
テディが探るように見つめていたことも。
「何?」
全て。




