第四十一話 芽が残った世界
白い世界がほどけていく。
バキ……バキバキ……
壊れていくのに。
どこか優しかった。
そして気がつくと。
レインたちは立っていた。
畑の上に。
だが違う。
さっきまでの畑じゃない。
地面のあちこちに。
“金属の根”が混ざっている。
土と機械と生命が。
全部一緒に呼吸していた。
◇
フィオがしゃがむ。
「これ……さっきより変じゃない?」
リゼが頷く。
「むしろ落ち着いてるのが怖い」
ゼルは地面を触る。
「魔力の流れが……変わってる」
ソレアは空を睨む。
『まだ終わってない』
レインは鍬を肩に乗せる。
「終わってないっていうか」
「始まってないっていうか」
どっちでもなかった。
◇
その時。
畑の中心。
“世界の種”だったものが。
木になっていた。
だが普通の木じゃない。
枝の代わりに。
歯車が伸びている。
葉の代わりに。
光が揺れている。
フィオが息を呑む。
「これ……世界?」
レインは少し黙る。
「たぶん」
◇
その瞬間だった。
空にひびが走る。
バキン!!
裂け目から“目”が覗く。
『再構築状態:異常』
無機質な声。
『未定義領域発生』
ソレアが震える。
『まずい』
『“観測できない世界”になりかけてる』
レイン。
「それ良いこと?」
『良くない』
即答だった。
◇
裂け目の奥。
管理者の影。
修正係の手。
そしてそのさらに奥。
“誰か”がいる気配。
それは今までと違う。
冷たいのに。
どこか懐かしい。
◇
その時。
エリシアの声がした。
「……レイン」
空から。
切れかけの通信のように。
フィオが叫ぶ。
「エリシア!?」
ひび割れの奥。
銀の光。
ぼろぼろの機械翼。
それでも。
彼女はそこにいた。
『まだ……生きています』
弱い声。
『でも時間が……』
そこで途切れる。
ノイズ。
◇
レインは一歩前に出る。
「無理すんな」
短い言葉だった。
だがエリシアは笑った。
『あなたらしいですね』
そして。
『聞いてください』
空気が変わる。
『管理者は“上書き”ではなく』
『“統合”を始めています』
沈黙。
ゼル。
「統合って?」
ソレアが青ざめる。
『全部混ぜるってことだ』
『勇者も魔王も農民も機械も世界も』
『一つにする』
フィオが震える。
「それって……いいの?」
ソレアは即答した。
『普通は地獄だ』
◇
その時。
世界の木が鳴った。
ギィィィ……
歯車が回る。
枝が伸びる。
空へ。
裂け目へ。
そして。
“目”に触れた。
空が止まる。
『干渉確認』
管理者の声が揺れる。
『未知概念:接続』
レインはそれを見て呟く。
「これ……止めてるんじゃないな」
「混ざってる」
◇
世界の木がゆっくり光る。
緑と金属と光。
全部が同時に呼吸する。
その中心で。
レインの鍬が震えた。
初代農民の声。
『いいぞ』
『ここからが本番じゃ』
レインは笑う。
「ずっと本番じゃなかったのかよ」
初代農民。
『まだ準備運動じゃ』
空が裂ける。
世界が揺れる。
管理者が動き出す。
その瞬間。
レインは鍬を構えた。
「じゃあそろそろ」
「本気で耕すか」




