第三十六話 機械世界アーク・ゼロ
巨大ロボットが動いた。
地図の向こう側で。
雲を突き抜けるほど巨大な鋼鉄の巨人。
その目が赤く光る。
ギギギギギ……
地図越しなのに。
全員と目が合った気がした。
ゼルが後ずさる。
「気のせいだよな?」
ソレアが即答した。
『いや』
「いや?」
『気のせいじゃない』
全員。
「えぇ……」
◇
初代農民が地図を指差す。
「第二の鍵はここじゃ」
機械世界アーク・ゼロ。
鋼鉄の大地。
歯車の海。
蒸気の山脈。
機械生命体の王国。
そして。
「七つの世界で最も農業に向いておらん場所じゃ」
レイン。
「帰っていいか?」
「駄目じゃ」
知ってた。
◇
翌朝。
旅立ちの日。
初代農民はレインに袋を渡した。
中身は。
種だった。
「なんだこれ」
「世界樹の種じゃ」
全員固まる。
「そんな重要そうなものを袋に入れるな」
「便利じゃろ」
便利ではない。
◇
第二の鍵が光る。
空間が開く。
青白い門。
その向こうには。
見たこともない世界。
鋼鉄の空。
鋼鉄の地面。
空を飛ぶ列車。
巨大な歯車都市。
煙突。
機械。
機械。
機械。
そして。
機械。
農地ゼロ。
レインは泣きそうだった。
「畑がない……」
フィオ。
「そこ?」
◇
全員で門をくぐる。
次の瞬間。
重力が変わる。
身体が浮く。
「うわあああ!」
ドサドサドサ!
全員転ぶ。
収穫者(手のひらサイズ)だけ綺麗に着地した。
『未熟』
腹が立つ。
◇
目の前に巨大都市。
門には文字。
《中央機械都市ギアヘブン》
人が歩いている。
だが。
人ではない。
機械だった。
ロボット。
アンドロイド。
機械生命体。
全員が普通に生活している。
フィオが驚く。
「すごい……」
リゼも目を輝かせる。
「面白そう」
ゼルは何かを見つけた。
「見ろ!」
全員が振り向く。
そこには。
自動詠唱装置。
ボタン一つで魔法発動。
ゼル。
「革命だ!!」
ソレア。
『お前が一番不要になる装置だな』
ゼル撃沈。
◇
その時。
都市全体に警報が鳴った。
ビーッ!!
ビーッ!!
ビーッ!!
全員が驚く。
街の機械たちが一斉に空を見上げる。
レインたちも見る。
そして。
固まった。
空に。
巨大な映像。
女性型アンドロイド。
銀髪。
赤い瞳。
王冠のような機械装飾。
絶世の美女だった。
彼女が無表情に告げる。
『緊急通達』
『第二の鍵に反応を確認』
全員の顔色が変わる。
第二の鍵。
レインの持つ鍵だ。
アンドロイドは続ける。
『発見次第』
『即時確保』
一拍置いて。
『なお抵抗した場合』
『都市ごと消滅させる』
沈黙。
レイン。
「歓迎されてないな」
フィオ。
「全然歓迎されてないね」
その時。
映像のアンドロイドが。
なぜか。
こちらを向いた。
何百万人もいる都市の中で。
まっすぐ。
レインを見ていた。
そして小さく呟く。
『……見つけた』
次の瞬間。
都市中の機械兵器が起動した。




